世界樹の勇者
「俺の名はマールス・カエサル。弓の名手であり知略と勇気を兼ね備えた戦士、俗世では借金王と呼ばれている。テムジン・ガルーダ、俺とパーティーを組んでくれ。」
弓を背負い、凛とした瞳で言葉を放ったのは、イタチの獣人マールス・カエサルだった。 彼は和弓の名手であり、知略と勇気を守った勇者の一人。
その声が聞こえたのは、勇者たちが修練を積む訓練場。 ここは世界樹の大枝に作られた砦であり、五人のマスターのもとで選ばれし者たちが技を磨く場所だった。
目の前に立つのは、砂漠蜥蜴のドラゴニュート、テムジン・ガルダ。
焼け付く砂丘の戦士であり、湾曲した片手剣を舞うように操る剣士だ。
「ほう……?」
その爬虫類特有の瞳は、冷静な判断力を秘めつつも、戦士としての本能に火を灯していた。
鎧を着ていると言うのに音はせず、気配は自然に紛れている。
マールスの言葉に応じず、テムジン・ガルダはじっと彼を見下ろしていた。
「……俺に目を付けた事は誇るが良い、だが砂漠の戦士が誰かの下に付く事は無い。」
冷ややかな拒絶。
彼の鱗の表面には細かな砂埃が付着していた。訓練の最中だったのだろう。
遠くでは他の勇者たちが仲間と組み、共に技を磨いている。だが、テムジンはいつも一人だった。
それは彼が他を寄せ付けない存在だったからか――それとも、誰も彼を選ばなかったからか。
マールスは微かに笑い、背負った弓の位置を直しながら答えた。
「簡単なことさ。お前の剣の腕が欲しいんだ。」
「……剣の腕?」
「俺は弓使いだ。遠くから敵を仕留めるのは得意だが、間合いを詰められればそれまで。だからこそ、信頼できる近接戦の戦士が必要だ。」
テムジンは目を細める。
「信頼できる……か。」
まるで皮肉のように、その言葉を繰り返した。
信頼。信頼か、俺の忠義はここには無いと言うのにお気楽な物だ。
「お前は俺のことを何も知らないだろう。」
「知ってるさ。お前は剣の腕が立つ。そして……俺にお前が必要だ。」
テムジンはしばらく黙った後、剣を抜いた。
「……仕方ねぇ、面倒だが砂漠の戦士として実力を見てやる。」
テムジンはしばらく黙った後、剣を抜いた。
「……仕方ねぇ、面倒だが砂漠の戦士として実力を見てやる。」
「よく手入れされた剣だ、よし準備は出来てるようだしついて来い大河の国の水問題の以来だ。」
「話を聞くに値するか確かめるっつー意味だよ、弓使い、距離はどの程度必要だ。」
「よし準備は出来てるようだしついて来い大河の国依頼だ。」
「話を聞くに値するか確かめるっつー意味だよ、弓使い、距離はどの程度必要だ。」
「そうだなぁ……三歩はほしい。」
「近ぇよ!!って近づいて来たし。」
テムジンが即座に叫ぶ。
「いやいや、近接戦を考えたらわりと現実的な距離――」
「現実的に考えろ!お前、弓兵だろ!」
「まぁまぁ、試してみようぜ?因みにこんだけハンデ抱えての戦闘なんだから俺が買ったら大河の国の依頼に来いよ。」
ポンポンと肩を叩くマールスの姿に思わず叫ぶ。
「いやハンデって認めてんじゃん、この距離不利ですって言ってんじゃん!!」
「戦いとは、相手を読み、動きを封じ、勝機を掴むもの……、だがこれは実力を確かめるもの、遺恨の残る戦いは望まない正々堂々とだ、それに君もそろそろ功績点も厳しいだろ、でかい依頼をこなしとくっていうのは悪い話じゃないだろ?」
「まぁ乗ってやっても良い、俺に勝てる実力があるつーならだがな。」
「よっしゃー言質取った!!やっぱいいやつだなお前、」
そのまま喜んで近づくマールスは突然テムジンの足を払いその横を走り抜け全力でダッシュした、地味に肩を叩ける位置にいたのにそこから三歩離れて勢い付けてだ、完全に油断していた。
「……ハ?」
テムジンの姿勢が僅かに崩れる。
「いざ尋常に勝負!!」
「おいおいおい、何処が尋常にだ、正々堂々の話しどこ行った!?信頼うんぬんどこ行った!?」
テムジンが叫ぶ
「チーチチ、信頼より契約ってはっきりわかるんだねこれが。」
そう言いつつ上着を羽織りつつマチェットでツタを斬り通路を落す。この時ツタやロープで転ばないように注意、頭から飛び込みの姿勢でダイブ、狙い放題。
「クソイタチ族がやりやがったなー!!」
吊り橋が波打ち崩れ、二人は宙へと投げ出される。
(クソ、上下の間隔がねぇ、翼を……)
飛来する風切り音、咄嗟に広げようとした翼を閉じ曲刀を構える。
ギィン! ガキィン!
(危ねぇ、落下しながらでこの精度、だが翼を広げればこいつが使える。)
テムジンは腰のスプリングを意識する。
だが次の風切り音がそれを許さなかった。
翼を開くのは不可能と判断、音の反響で落下までの時間を把握、落下の瞬間は奴も着地の姿勢を取る必要がある。ならば着地の瞬間に翼を開いて滑空するように距離を詰める。
(しまった剣が!?)
思考に気をそられてガードが緩んだ、だが
「翼がある竜人に空中戦挑むとかイカレてんのかって叫びてぇとこだがこうして剣を片方飛ばされた以上認めるしかねえ、お前は強い、だが勝利までは譲る気はねぇぞイタチ!?」
同じように落ちていたはずだ、なのに居ねぇどうなってる?そこまで考えた所ではっと気が付く、
「上か!!」
「正解!!」
上を向くと同時に訓練用の矢が額に命中する。
「……クソイタチ。」
奴はロープを用意していた、落下の反動で跳ねたからこそ俺の視界から消えていた、事前準備をしていたのだ認めてやるしかない奴の実力を、
「よっしゃ勝った、チーチチ勝ったぞまじか!!」
バチンッ!!
「あ!?」
突然、ロープから聞こえてはいけない音が響き、次の瞬間マールスは重力に従い落下を開始する。
「チチチ!? ちょ、待って――」
「おいバカこっちくん――」
ドガシャァン!!!
テムジンは額をさすりながら立ち上がり、目を細めてマールスを見下ろす。
「……おい。」
床に大きな字で倒れるマールスが、ちぎれたロープの端を持ったまま倒れていた。
「……練習は完璧だったんだけどなぁ……」
「完璧なら落ちねぇだろバカ!!」
「ギャ――!!」
バキッと拳骨を食らい、マールの悲鳴が響く。