プロローグ
古い言い伝えがある。
この世界がまだ目を覚ましたばかりの頃、砕けぬ岩と朽ちぬ大樹、滅びぬ子龍ばかりがおった。
分厚い雲におおわれた変化の無い灰色の世界であったと言う。
だがいつしか岩は砕け、その下から現れた炎によりすべての物に差異が生まれた。
暖かさと冷たさが生まれ、次に明るき場所と暗き場所、そして最後に生きる者と動かぬ物に別れたと言う。
しかし差異は世界に定着することは無かった、曖昧な世界では僅かな差異などあって無いものであった。
だがそれでも変化はあった、子龍は龍となり空を飛び、雨と風を地上にもたらした。
雨は地上に川を産み出し地上に境界を作り、風は雲を動かし空に境界を産み出した。
すべての物に境界が生まれることで世界に差異が定着し、差異は彩りとなり地上には大きな人が繁栄した。
大きな人の繁栄は、古龍となってしまった龍たちは眩しかった、地上に星空を造り空を飛ぶ大きな人の目まぐるしい変化に耐えられなかった古龍らは、境界の隙間に潜り込み長い眠りについた。
そんな古龍らの思い出の思いが集まり形になったのが今の夢見の大地であるという。
夢見の大地にはかつていたとされる大きな人々はおらず、20センチほどの様々な種族の人間が、小さな人々として広大な自然の中たくましく生きていた。
そんな小さな人々の中でも選ばれた者が世界樹に集まり、五人のマスターに師事していた。
これはそんな勇者の一人であるイタチ族の獣人、マールス・カエサルの物語。