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隔離室に入れられた女の絶望的思考

作者: エドゴン

【1.序章】


ある一家がありました。両親とその娘の3人家族です。その娘さんは若菜という名前でした。若菜は精神的に不安定で家族で言い争いをすることが多かったのですが、この日はいつもとは少し様子が違っていました。


若菜「殺す!」


若菜はそう言い放つと台所から包丁を持って来ました。


母親「キャー」


父親「馬鹿なマネはやめなさい。」


若菜は慣れない手つきで父親に飛び掛かりました。父親はなんとかかわし若菜の手を掴みました。


若菜は暴れ出し、父親は若菜を身動きできない状態に取り押さえました。


父親「母さん、救急車を呼んでくれ。」


母親「はい。」


母親は救急車を呼び10分後に救急車が到着しました。


救急隊員「どうされましたか?」


父親「娘が暴れてしまって困っています。」


救急隊員「わかりました。とりあえず病院へ。」


救急隊員は暴れる若菜を押さえつけながら救急車に乗せ病院に連れていきました。


医師「鎮静剤を打ちます。」


父親「わかりました。お願いします。」


【2.医療保護入院】


医師「包丁を持ち出すとは大変でしたね。保護者の方の同意で入院をさせることもできますがどうされますか?」


両親「このまま自宅に帰っても怖いので入院をして娘を治してください。」


医師「わかりました。医療保護入院ということで手続きをします。包丁を持ち出すほどですから隔離室でしばらく様子をみます。」


両親「わかりました。」


鎮静剤を打たれた若菜は眠っている間に隔離室へと運ばれました。


若菜「キャー」


若菜は目を覚ましました。なぜ自分がこんなところにいるのか理解ができずにいました。ベッドとトイレしかない空間です。


そして周りから丸見えな空間であることがわかりました。


【3.医師の診察】


医師「それでは診察を始めます。」


若菜「どうしてこんなところにいるんですか?」


医師「家族が心配していたよ。あなたは刃物を振りかざしました。今はお薬が効いて落ち着いているようですが。」


若菜「ここから出してもらえないですか?」


医師「危険な状態なのでしばらくはここだね。ゆっくり治療をしましょう。」


若菜「こんなところにいたら気が狂いそうです。」


医師「大丈夫。治ったら出られるから。」


医師の診察は簡単に終わりました。


【4.若菜の絶望的思考】


若菜「ベッドとトイレしかない。やばい。私が一体何をしたっていうの?しかもこのお部屋、周りから丸見え。恥ずかしくてトイレもできない。」


若菜は考え込みました。


若菜「こんなところにも入ってしまったし、生きていても仕方ないかな・・・このままここで一生を過ごすことになるかもしれない。」


しばらくして若菜はトイレをしたくなりました。


若菜「見るな!誰も見るな!覗かれてる。ひどい。トイレもできない。」


そんなことを考えていたら、若菜はトイレを我慢できなくなりました。


若菜「もう限界。でも覗かれる。こんなところに閉じ込めるなんてひどい。」


若菜は勇気を振り絞ってズボンを下ろし、トイレに座りました。するとどこからともなく声が聞こえてきました。


男「ふっふっふ。お前のおしっこが見えたぞ。」


若菜「キャー」


若菜は誰かに覗かれていると錯覚しました。若菜は統合失調症の症状である幻聴を聞いてしまったのです。


若菜「ひどい。こんなところに閉じ込めてさらにトイレを覗くなんて。」


男「はっはっは。丸見えだ。ここからは出られない。」


若菜「私をどうするつもり?まさかレイプをするの?許されない。キャー。」


若菜は大声を出しました。しばらくすると看護師がやってきました。


看護師「どうされましたか?」


若菜「男の人にトイレを覗かれました。いずれレイプされます。」


看護師「主治医を呼んできますね。」


【5.被害妄想】


主治医が来て診察が始まりました。


主治医「どうされました?」


若菜「さっきトイレをしたのですが男性の人に覗かれました。ひどい。」


主治医「それは仕方のないことですね。隔離室なので。」


若菜「そのうちさっきの男性看護師にレイプされるわ。」


主治医「大丈夫です。みんな見ているのでレイプなんてされません。心配のしすぎです。」


若菜「いつ襲われるかわかりません。こんなところにいれません。」


主治医「少し落ち着きましょう。落ち着くお薬を処方しますので飲んで眠ってください。」


若菜は落ち着くお薬を飲み眠りました。


数時間後、若菜は目を覚ましました。


若菜「また心配性な性格が出てしまった。いけない、いけない。少し落ち着こう。」


若菜は再びトイレに立ちました。


若菜「お薬のお陰で落ち着けている。今度は大丈夫だった。」


今回のトイレでは若菜は覗かれるという被害妄想を感じなかったようです。


看護師「若菜さん、ご家族の面会ですよ。」


若菜に母親が面会に来ました。


若菜「お母さん。ごめんなさい。」


母親「落ち着いた?良かった。」


若菜「うん。」


若菜は隔離室という何もない空間で入院治療をしたお陰で、「殺す」という恐ろしい感情が消えていました。被害妄想は少しあるようですが、治療の成果があったようですね。


しばらく入院をして、その後、若菜は無事に自宅に退院をして行きました。それからは「殺す」という感情に支配されることもなかったそうです。

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