ヒロインの親友
仮に、「男の娘」というものが
この世の中に存在するなら。
やっぱり
「だから、かっ可愛いなんて言うな!!」
…とか言ったりするんだろうか。
「いやいや〜でも仕方ないだろ?お前めちゃくちゃ顔可愛いし。実は女だったりしない?」
「しない。」
「もしそうなら俺絶対お前のこと幸せにしたいわ。」
「黙れ、お前は不幸になれ。」
俺は朝からなにを見せられているんだ。
こいつらも毎日というか、よく飽きないよなそのやり取り。
「おい、悠!!お前も見てないでなんとか言ってくれよ。こいつ本当に気持ち悪いんだって…」
「そうだな。まあお前が可愛いのは事実だよ、ただお前が実際まじで男なのも事実。」
悠…っ!!と嬉しそうに目を潤ませるこいつは
小泉里津。
俺の親友的ポジションの男だ。
そう、男。
「やっぱり悠しか俺の事をわかってくれる奴はいないんだよ…助かる。」
嬉しそうに笑う整った綺麗な顔立ち、
金色の髪はサラサラとしていてこいつの美人さをより際立たせているように思う。
「いや事実お前男だし、顔の綺麗さとか関係ないだろ。」
俺のこういうなんというか見た目で判断しないところが気に入られてすっかり仲良くなったんだが、仲良くなって傍で見ていると改めて同情はする。
「いいよなあ、凪詰は。こんな可愛い奴と友達でさあ。彼女要らなくね?むしろ。」
周りの男共は大体こんな感じだ。
それに対して里津はかなり頭を悩ませている。
「俺は!!男だっ!!!」
「わかってるって、大丈夫大丈夫。りっちゃんは俺ら男子のなんつうかそう!隠れアイドル的な。」
「りっちゃんって言うなああああああ」
教室中に響き渡る里津の悲痛な叫びに俺はとりあえず耳を塞いだのだった。
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「酷い目にあった…。」
「いつもの事ながらお疲れ。」
ようやく落ち着いた里津に苦笑いする。
少しムッとしている様子だけど、こいつはやっぱりどんな表情も綺麗だ。
「悠、お前までさっき可愛いって言ってたろ。」
ああ、確かに言ったかもしれない。
いや事実だからなんだが、でもこいつの気持ちを多少は理解している俺からしたら少し申し訳ないわけで。
「ごめんな。」
しっかり謝罪をした。
「い、いや。別に!そんなに真剣に謝らなくていいって…お前は唯一の理解者なんだし助かってるんだ、いつもさ。」
「ん、けどお前が俺にとっての男友達なのは変わらないよ。理解者とかそんな堅苦しいのじゃなくて。」
「悠……っ」
男友達という言葉がかなり嬉しかったらしい。
ありがとうな、と里津はヒロインみたいに綺麗な笑顔を見せた。
やれやれ、そんなふうに笑うから男がざわつくんだと思うんだが…
「あんまり他の奴らにそんな顔しないほうがいいぞ。」
「え、あっ悪い。」
おい、おい!
なんで頬染めてんだよ。お前!!
「悠って、まじでたまに男前だよな…。ちょっとドキドキした。」
「たまには余計な?」
…俺はこいつの親友だ。
決してこいつとはラブコメらないからな。
はたから見たら多分甘〜いやり取りだったであろう空気の中、俺はため息をつくのだった。