表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みどりの園でこんにちわ  作者: 有原子
2/2

絶望のはじまりにこんにちわ


 ショーとポウルは、小心な田舎者だった。


 そんな彼らの人生の破滅は、目の前の麦酒に、小便を注がれる様なものではないだろうか。異常に気付かない他人からすれば、大した変化ではないが、飲む側としては大問題だった。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 少なくとも危ないことからは、身を引くべきだった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


 だがその禁忌を、彼らは犯してしまった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 後に残るのは、破滅である。


________________________



 城下の端にある安宿の一室。大部屋といえば上品だが、馬廓との仕切りもない。ケダモノの巣窟だった。


「いいか、お前らは見込みがある…」


 娼婦の股ぐらからチェの声がする。こそばゆい娼婦が笑い声をあげると、黙らせるようにチェは腰を打ちつけた。


「わかるか、人生は自身の選択だ。天におわす主は、俺たち虫ケラなんてどうでもいいんだ」


 娼婦の股ぐらに顔を近づけたポウルが、鼻を摘んだ。


「そっすね…うわクッセ」

「ポウルやめとけ、挿れずに腰ふってろ…」


 チェは同じうわ言を繰り返していた。馴染みの娼婦達は、笑い声をあげながら適当にあしらっている。


「人生で選択できる機会は限られてんだ、それすら掴めない連中は、一生使い潰されて終わるんだよ!」


 チェは体を震わせながら叫ぶと、また別の娼婦の股ぐらに顔を埋めた。

 かれこれ4、5回はこれを繰り返していた。


 半泣きのポウルが小声でいった。

「なぁショーやべえよ、俺もう田舎に帰りてえよ」

「お前がついてくって言ったんだぞ… あっやばい離れろポウル」


 チェがポウルを押しのけると、相手をしていた娼婦に覆い被さった。


「お前らは他の馬鹿共とは違う、要領がいい馬鹿だ。なら俺はお前らに、選択する機会を与えてやる」


 デカい金を掴ませてやると叫んで、チェは目を剥いて嘔吐した。下にいた娼婦がチェを押し退けると、悪態を吐きながら水場へ走っていった。


「おいポウル、服着ろ。すぐ出るぞ」

「チェはどうすんだよ?」

「明日になれば忘れてんだろ、さっさとしろ!」


 チェは白目のまま、気絶している。

 娼婦達はチェの財布を漁ると、もう用無しとばかりに安宿から出て行く。

 一番若そうな娼婦だけが、逃げようとする2人に声をかけた。


「ねぇあんたら、悪いこと言わないからさ、チェの旦那とあんまり関わんないほうがいいよ…」

「そんなこたぁ分かってんだよ、見りゃ分かんだろ」


 若い娼婦は更に声を潜めて、警告した。


「旦那は上客だけど、なんか変なんだよ。金遣いもそうだけど、魔女とも付き合いがあるって噂なんだよ…」

「そりゃなんかキメてんだろ、正気じゃねえもん」


 まだ何か言いたげな娼婦を無視して、ポウルを引っ張って逃げた。


________________________



 吐瀉物を流し終えた娼婦が部屋に戻ると、痙攣するチェしかいなかった。


 娼婦はチェにツバを吐きかけてから、次に金目のモノを物色した。どうせ明日になれば忘れているだろうと、タカを括っていた。


 物色に夢中になっている後ろで、幽鬼の如く立ち上がったチェに、娼婦は最期まで気がつかなかった。


 次の日の朝、溺死した娼婦が全裸で発見された。現場は道端で近くに川はなく、死顔は何故か恍惚とした表情だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ