88 日常のあれこれ 〜
今年もカヴィヨン主催のクリスティとジャレットの5歳の誕生祝いが開催され、何時もの様に家族でお祝いしました。今回、サリシン義父様と一緒に来たのは何時ものユーリウス、ヴィクトリア、レイチャイルドと、カーチスが初めて来ました。マジェンダ義兄様とクリミアナ義姉様はお忙しいのだそうです。
カーチスはユーリウスに促されてぎごちなくハリシエダ様に挨拶をしていましたね。ハリシエダ様はこんなに大きく成ってと笑ってましたけど、私がナイジェル義兄様の家族に睨まれなかったのは初めてでした。
クリスティとジャレットは皆んなと楽しい時間を過ごしました。しかも今回はカーチスと言う初めて会う従兄弟がいたので、カヴィヨン達はお兄さんが増えたと楽しそうでした。
カーチスはヴィクトリアやレイチャイルドから、本当のカヴィヨン達の話を聞かされていたものの、アネトールお祖母様の話をずっと信じていたので、誇張や冗談ではないかと少し身構えた処が見られました。
でも、カヴィヨンが作ったクッキーを食べて、一緒に魔法の見せ合いをしたりする内に、此方で聞いていた話は嘘じゃなかった。と驚いたそうです。………5歳になったばかりのクリスティですらライトやクリーンの魔法が使えると知った事が一番ショックだったらしいですけど。
そして年下のカヴィヨン達に出来る事で自分には出来ない事が沢山有る事を知り、それに対する努力の量を知って、今まで教えられていた事が間違っていた事で、自分磨きが足りなかった事にも気付き、今まで無駄にした時間を悔やんでいるそうです。
まぁ、子供達は私達のする事を見て、楽しそうだと真似していただけで、苦労して頑張っていた訳では無いのですよね。きっかけは楽しそうな私の姿かもしれませんが、それをフォローしてくれていたフェンリル母様が素晴らしいのですが、これは内緒なので。(笑)
サリシン義父様がこっそりと教えてくれたのですが、カーチスは平民として領都の学校に通い、フォニウム様のお店のお手伝いをしながら生活をした事で、アネトール義母様の言い分が間違いだと理解はしていたそうですが、納得していた訳では無かったようです。
『私はアネトールお祖母様から、ミスティーヌは平民の癖にハリシエダ叔父を騙して結婚して、更にサリシンお祖父様を誑し込んでリストランテ家からアネトールお祖母様を追い出したのだと聞かされて育ってきました。
ですが、自分の身分が平民に落ち、更に家を離れて勉強しながら生活して、更にフォニウムお祖父様のお店で働かせてもらって、環境が変わって得る情報も変わった事で、もう、何を信じて良いのか判らなくなりました。
ユーリウス兄様が自分の目で見て、感じて、考えてご覧。誰の目を通したかで正しいは変わるって判っただけでも成長しているんだよ。って教えてくれて、ずっと考えてました。
それで、お祖父様達の話も従兄弟達の話も同じだけど、アネトールお祖母様と両親だけが違うって判って悩みました。でも、先日お父様と久し振りに話して、これ迄のお父様の考えが間違っていたと教わり、ミスティーヌ様も敬うべき叔母様だと理解出来て、大好きなアネトールお祖母様達が間違っていると判りました。』
涙ぐんで私に謝るカーチスを軽くハグして、カーチスに謝る必要が無い事を伝えました。そしてこれからは私の事も叔母様と呼んでくれる事になり、ハリシエダ様も揃って笑い合って終わりました。
サリシン義父様の話では、まだ内緒なんですが、ナイジェル義兄様の態度が変わり、キチンと仕事が出来るようになった事で、数年後にはタルピナス領主として子爵に戻す予定だそうです。
その頃にはカカオ農園も定着させる予定で、プルメニア国と密接に関わる事でナイジェル義兄様も遣り甲斐のある仕事環境が整い、跡を継ぐカーチスの為にも良い環境になっている予定だそうです。
只、アネトール義母様にベッタリのロヴェニア義姉様の考えは変わりそうに無いので、ナイジェル義兄様が仮に子爵に戻っても表に出すつもりは無いそうです。
クランセもこのままタルピナスに置いておくと矯正出来ないので、フォニウム様が一旦領都に引き取り、カーチスと同じ教育を受けさせる予定だそうです。ヘルツェリもカーチスと一緒に勉強していますが、まだアネトール義母様の影響から抜け出せないので、今回はマジェンダ義兄様達とお留守番なのだそうです。
フォニウム様曰く、今後、ナイジェル義兄様は仕事で領都と往復する事はあっても、タルピナスがメインの仕事なので、生活の拠点はタルピナスで変わりません。それにアネトール義母様も居るので、ロヴェニア義姉様は領都には出て来れないそうです。多分ゴネるとは思うけど、何もして来なかったロヴェニアに領都での仕事は無い。と突っぱねるから大丈夫と笑ってました。
そう言えば、王都でフォニウムお祖父様のカカオのお店の見習いに入るにあたり、その件も私の功績に頼っていると理解したそうで、なんでアネトールお祖母様は僕達に嘘を教えたんだろう。と呟いていたそうです。直接交流していたら有り得ない間違いかも知れませんが、責任が誰に有るのかははっきりしていますね。
どちらかと言うと迷惑をかけられた側の私ですけど、カーチスに対して何も言う事は有りません。が、嘘を訂正されても認識を変えない人には、自分が妄想するのは勝手だけど、他人を巻き込むな。とだけ言いたいです。
サリシン義父様からお伺いした現在のナイジェル義兄様の話が本当なら、領主教育をサボらなければ能力はキチンと備わっていたし、常識も身に付いていた筈と言う事です。それはカーチスにも言える事で、勉強をキチンとしていたら、学力の問題で引っ掛からずに王都の学校にも通えた筈なんです。
初めて会ったカーチスの反省を聞いて、私がまだ会っていないヘルツェリやクランセの教育が修復可能なら良いのにね。と遠い目をしてしまいました。まぁ、此方に来ているヘルツェリは遅々とした歩みなものの、徐々に再教育の結果が見えているそうですが、タルピナスで祖母と母の影響にどっぷり浸かっているクランセが一番可哀想かも。
サリシン義父様から、再教育中のカーチスとヘルツェリを見て、フォニウム様とナイジェル義兄様と相談し、クランセも早々に領都に呼んで教育する予定だと聞きましたが、一荒れ来そうですね。
今日はクリスティとジャレットの洗礼を受けに、家族全員で教会にやって来ました。
厳かな式場でそっと水晶に触ると属性の光に包まれるのです。カヴィヨンの時は女神様の加護も有り、全属性の虹色に包まれて大変でした。教会の関係者に箝口令を強いて、王家にはこっそりと報告しましたっけ。女神様によると、カヴィヨンが特別なだけだそうですから今回はたぶん安心でしょう。
クリスティは黄色と白、ジャレットは黄色と水色の二色でした。二人とも物作りが好きだから土属性が出たのでしょうか?クリスティの白はライトの魔法を使っていたせいで光属性が出たのかも。ジャレットの水属性はポプリを作る花に、生活魔法のウォーターで水をあげていたからかも知れませんね。きっとそうです。
二人とも私かフェンリル母様が付いている時しか魔法を使わない事を約束しているので、属性魔法の偏りにはそれぐらいしか理由が思い付きません。魔力量は普通より多い位だそうです。でも貴族だからで終わる話で済んでホッとしました。稀少な属性なんて気にしなければ良いのです。女神様の加護が見つからなくてホッとしました。
ウォルトン陛下には、クリスティに光属性っぽい色が出ました。と伝えはしますが、それだけです。キラキラした聖属性が認められると教会が煩いのですが、光属性の魔法はライト位しか一般的ではないので、稀少性は有っても重要視されないのですよ。本当に良かった。
無事に洗礼が終わり、女神様に呼ばれて白い空間に入りました。早速、お茶会の支度をします。カヴィヨンのクッキーはマストアイテムです。今日の主役のクリスティとジャレットの挨拶でお茶会が始まりました。
今回の二人からの贈り物は、クリスティが作った台座に、ジャレットのビーズで作った薔薇のモチーフの付いたブローチです。二人ともとても器用で、素晴らしい作品だとハリシエダ様が自慢しました。(笑)
『一芸に秀でると言う事も立派な才能です。本当に素敵なブローチですね。台座も滑らかに磨かれていて、とても素晴らしい仕上がりですし、ビーズの薔薇は本物のお花よりも輝いていて綺麗です。』
と女神様もベタ褒めです。
『ありがとうございます。台座は工房の職人さんが切り出してくれた物を、ヤスリで磨いて作っています。洗礼が終わったので、次回は彫刻刀を使った彫りを教わる約束になってます。』
とクリスティがしっかり挨拶すると、ジャレットも、
『ワイヤーは捻り過ぎたり、何回もやり直そうとすると切れちゃうの。母様の手元をよく見ながら作りました。とても大変でしたけど、綺麗に出来て嬉しかったし、クリスティの作ってくれた台座も綺麗でしょ。負けられないと思って頑張りました。』
フンスっと鼻息が聞こえそうな位、力いっぱいのコメントに微笑ましく思いながら、
『やっと細くてしなやかなワイヤーが仕上がったので、アクセサリーの種類も増えます。ヴェルムからいろんな商品、商業を発信して行こうと思っています。』
と私が言うと、ハリシエダ様も、
『初等学校が出来たので、人材の教育が始まりました。今まで他領に流れてしまった優秀な人材も、これからは自領で育てて、活躍して行ってもらえるように頑張っています。
私の力不足の所為で伸び代が沢山有るのをメリットと考えて、沢山の人達の力を借りて頑張っています。』
と女神様に伝えます。とても領主っぽい発言に女神様も笑顔で頷いて下さいました。
『ヴェルム自体がまだ出来たばかりの若い領なのだから、これからどんどん成長してくれたら良いの。そうしてサフラメントが繁栄してくれたら私の力になるの。私も頑張るから皆んなも頑張りましょうね。』
と言う女神様の言葉でお茶会はお開きになりました。
支援用マジックバッグの為に。と言う大義名分を掲げてしている、お昼寝時間に合わせた約二時間の魔石狩りですが、リストランテの北部から始めて、今はタルピナスに来ています。オークやGを中心に狩っているのですが、プルメニア国に近くなった所為か、時々赤い鳥型魔獣が出て来ます。
最初はフェニックス様の眷属?と討伐を悩んだのですが、モリーノがフェニックス様に尋ねてくれた処、無関係のレッドバードと言う魔獣と分かりました。少し獰猛過ぎる処は有りますが、単体ならCランクだそうです。大きな体躯に纏う赤いキラキラした羽と、美味しいお肉、適度な大きさの魔石。と三拍子揃った魔獣です。
少し大きめの為か、今までは余り捕獲されて来なかったようですが、獲り過ぎて絶滅させない程度に狩りたいですね。タルピナスの冒険者ギルドにはお肉を多少出しますが、羽は領都で良いと言われました。タルピナスにお洒落な服飾の工房がそんなに無いのと、買い取り金の問題だそうです。
此処の商業ギルドものんびりしていると言うか、積極的に働こうとしないのですよね。自領がダメなら隣りのプルメニア国に輸出すれば良いのに。いくら向こうが本場とは言え、加工してアクセサリー等にして出荷すれば売れる素材だと思うのです。少なくとも、王都の工房が知ったら欲しがるのでは?
試しにリーバスさんに持ち込んで、キュラスの服飾工房を紹介してもらおうとしたら、一工房で独占は狡いと言われそうだから、素材として商業ギルドに卸して下さい。と頼まれましたよ。
私も綺麗な尾羽とかは自分の手芸用に押さえてあります。後でクリミアナ義姉様にもお裾分けして、お揃いで何かを作ろうと思っています。オーソドックスなのは帽子の飾りかなぁ?髪飾りを作っても素敵ですよね。私は余り帽子を被らないし、使用頻度の高い髪飾りを作りましょう。
料理長にレッドバードのお肉を渡して、好きに調理して下さい。と伝えたのですが、試しに端を焼いて塩胡椒しただけでも美味しいと大絶賛でした。お夕飯に何が出て来るか楽しみです。照り焼きとか焼き鳥とか鶏肉を使ったおつまみもそれとなく伝えておきました。
私は自分のミニキッチンに結界を張って匂いと音と光を遮断してから唐揚げを揚げ始めました。最近、モリーノが私の元に戻ったらしく、私がミニキッチンに籠るのに気付くと、美味しい物作っているの?と直ぐにオネダリに来るので、ちょっと煩いのですよ。
急に戻って来たので、サリシン義父様と何かあったのか心配なのですが、フェンリル母様によると、本来の立場を思い出しただけなのだそうです。
『本来の立場って言うか、名付けの契約は私の守護聖獣でしたっけ?でも影に入って私の魔力で成長しているみたいですし、どちらかと言うと私が守護しているような気がしているのですが?モリーノの涙と転移の継承位しか利が無かったかな?まぁ、この二つだけでも充分ですね。』
と聞くと、笑いながら、
『それはそれで合っているのですが、モリーノはヘルベルトに聖獣としての教育を受けていた筈なのですよ。ランティスは既に終了しているので問題無いですけど、モリーノはサボって逃げていたので途中なのですよ。
私の言う本来の立場とは、成獣になる為の聖獣教育を受ける。という事です。』
激オコとまでは行かないものの、フェンリル母様はややお怒りモードですね。やっぱり、モリーノはまだまだ子供だったようですね。私の影に潜って、私の魔力で育っているって昔言っていましたが、いまだに同じようです。
フェンリル母様がタルナに帰ってしまったら、モリーノもタルナに行くのでしょうか?………でも転移で行き来するなら何処でも大丈夫ですね。(笑)




