81 色々、動き出します。楽しいですね。
カカオを原料とするお菓子をはじめ、木工工房で作られているトレントの家具、付与魔石を使った小物類やお守り付きの生活用品や衣類。ビーズ手芸のアクセサリーや、ステンドグラスを代表とするガラス細工。
ヴェルム印?の商品が増えて来ました。リーバスさんの頑張った証拠です。ほぼ私が関わった事ですが、領主夫妻の工房が主流という事で領地が繁栄するのは良い事です。
これ以外にも妊婦服や幼児向けの音が鳴る編みぐるみや良い香りのポプリも少しずつ領内に拡がって、更に他領にも売り出されています。私の遊び心から産まれた物で、商品化するとは思わなかった物については、私が売り出さないと知った職人さんに勿体無いと言われ、リーバスさんにバレてしまって、ギルドに作り方を登録させられました。
キュラスだけが独り勝ち状態で居たのを私達が反省して、作製する工房や商会の見直しをして各地にも広めたのと、初等学校の設立をキッカケに住民達がヴェルムとしてしっかり纏まった結果なのだと思います。
冒険者についてはサイトバル兄様がヴェルム全体をまとめてくれていたので安心ですし、アラン父様が始めて、サイトバル兄様が引き継いでいる初心者教育は、今ではリストランテとルガリアにも広まり、ギルマスが変わった王都でも認められました。
今、各領地の冒険者ギルドでは初心者グループに貸し出すマジックバッグの順番待ちで賑わっているらしいです。とは言っても領都の大きなギルドでもマジックバッグの確保は難しいそうで、冒険者の数に対して少ない為、かなり先まで予約が埋まっているらしいです。
私が作りまくった所為で余裕のあるヴェルムでは、リーバスさんの商業ギルドでマジックバッグの売買を管理する事になり、私が関与しているマジックバッグの工房の管理も商業ギルドに委託されました。それに伴って、領内で今まで個人で制作販売していた職人さん達も加わり、今ではヴェルム領としての代表的な工房になりました。
商業ギルド管轄の為、私がこっそりと販売していた時の様な安値ではなく、工房としての市場価格での取り引きになってますので、適正価格で売買される事で職人さん達も一安心だそうです。………私が安易に安値を付けていた為、商売として個人販売していた職人さん達は、販売交渉が大変で生活も苦しかったと聞いて申し訳なく思いましたよ。
ヴェルムの商業ギルドでの販売について大々的に噂が流れましたが、他領の商人による無用な買い付け騒ぎにはなりませんでした。其処はリーバスさんの腕の見せ所と言うか、噂が流れた最初の時に、キチンと売買に関するルールを告知した成果だそうです。所謂、上限ですね。個人では無く、商会毎に一月の上限を決められたそうです。
目玉商品になっても可笑しくないマジックバッグ廉価版については、基本的に初心者講習をしている冒険者ギルド向けなので、他領の商人には売る予定が無く、ヴェルムとサルカンドのみの裏商品の扱いらしいです。
例外として、リーバスさんが管理している分だけは、リストランテとルガリアの冒険者ギルドのギルマスにも取引されるそうですが、転売などの問題は起こせない契約になっているとの事です。
更に、私が個人的に趣味で作っているお安いマジックバッグは、サイトバル兄様が管理していますので完璧に表には出ません。あれはヴェルムとサルカンドの優秀な初心者にのみ販売される内緒の賞品なのです。
数も不均等ですし、何時販売するかも不明なので買えたら超ラッキーという事には変わりが無いです。(笑) どちらかと言うと、頑張ったご褒美?の扱いで、正しい冒険者活動の指針になっているらしいです。何せギルマスが管理しているので欲しがったから買えるという物では無いので、活動が認められないと手に入らないのです。
………ホントにね市場価格ってお高いのですよ。一般売りのは私が売っていた物の3〜5倍位します。それでも予約はかなり先まで詰まっているそうです。因みに私が受け取る分の利益は領費に組み込まれる様にしたので、自分が受け取っていた額より高い価格で売られていても、個人的に受け取らない私は気が楽です。
フォニウム様から相談されていた転売チョコの件ですが、ヴェルムの初等学校の職業学校の話から発展して、ついにはリストランテ領でチョコを作る職人の専門学校を開く事になりました。と言うのも、私の工房に教えを請う職人が後を絶たず、工房の運営に負担が出ているからです。
なぜヴェルムに作らないかと言うと、いろいろ抱え込み過ぎて手が足りない状況だからです!私は関与しません!
サリシン義父様と相談した結果、タルピナスに作る事に決めました。何故かと言うと、タルピナスでは隣接するプルメリア国と共同で、国境付近に大規模カカオ農園を作る話が既に水面下で進んでいたのです。
『元々タルピナスはプルメリアに隣接していて材料が手に入り易い処です。ならば此処にこそ学校を作るべき。』
とサリシン義父様が主張するのであっさりと決まりました。マジェンダ義兄様もハリシエダ様も特に反論は無いそうです。私も自分が関わらないで済むのは大賛成です。ただ、何処からか話を聞き付けた陛下達は、
『国産のチョコが作れるのは国策にすらなる。美味しいチョコを作ってくれ。必要なら私の名前も使って良いぞ。』
と息巻いてましたが、美味しいは正義です。……取り敢えず、王都に学校を作れと言わない処が流石です。
私はタルピナスと聞いてアネトール義母様が浮かび、少しだけ不安に感じましたが、サリシン義父様からは、既に離縁しているので、私とは無縁になっているから大丈夫と説明されました。
ただ、実家を継いでいるカワサド辺境伯である兄から拒絶された為に、行き場所を失ったアネトール義母様をタルピナスでナイジェル義兄様が養っているのだと聞かされて、仮にも元公爵夫人なのに自立して生活出来ないの?と疑問に思っているのがバレた様で、
『元々アネトールは兄妹仲が良いとは言えなかったのだよ。性格もそうだが、私と結婚して公爵夫人となった事が悪かったのか、辺境伯である兄に対して上から目線で威張っていたからな。自然と私とカサワド辺境伯の仲も良くなる訳が無く今まで過ごして来た訳だし。
私に離縁されてそれ見た事かと思ったのだろう。離縁となったという知らせに対して、嫁いだ事で縁が切れているとあっさり返事が来ただけだった。貴族籍に名前だけは残してくれた様だが、面倒はみないときっぱり断られたよ。
フォニウムが領主を抜けた事で、領主を継げなかったナイジェルは平民の身分に落ちたままだ。収入が減った所に母親だからと面倒を見させるのは流石に大変だから、アレの生活費は渡している。が、貴族として過ごせる額では無いから、ナイジェルに我儘を言ってなければ良いがな。』
と遠い目をしています。話を聞いても大変だなぁ〜とか心配する気持ちは起きませんが、
『離縁した時の財産分与とかアネトール義母様の個人資産は無いのですか?財産分与など、サリシン義父様なら手厚くされていそうですが。』
と思わず聞くと、
『だから毎月の生活費として分割してナイジェルに渡しているよ。アネトールはミスティーヌと違って自分で稼ぐ能力も無ければ、計画してお金を使う事が出来ないのも判っている。これでも長い間夫婦として暮らして来たからな。まぁ、そう言う訳で個人資産なんて無いのだよ。毎年の予算以上に考えなしに使いたい放題をされたからな。
カサワドに返せたなら辺境伯に何某か持たせたとは思う。仲が悪かろう兄には頼れないだろうからな。
兎も角、ナイジェルにアネトールを抑え切れる訳がない。ロヴェニアに到ってはアネトールの悪い処だけを学んでいるから、下手に大金を渡したら一緒になって使い込んでしまうだろう。
だが、婿に出したとは言えナイジェルも私の息子には変わらない。苦労をかけたい訳では無いのだ。
三兄弟の中で唯一アネトールに甘やかされて来たから、ナイジェルに預ける事にしたのだ。
しかしナイジェルの今の身分は平民に落ちている。アネトールを預ける事で金銭的に助けられるから、それも目的の一つになってしまったかな。私も自覚は無かったが、甘い親の様だな。
でも平民落ちしたせいで目が覚めたのか、やっと真面目に仕事に取り組み始めたのだよ。今のナイジェルになら任せてみたいと思ったからのカカオ事業なのだよ。』
サリシン義父様が訥々と力強く思いを述べ始めました。自分の息子ですものね。更生出来るならさせたいでしょう。マジェンダ義兄様は手塩にかけて優秀に育ったものの、残る二人は……ね、私から見ても考えが甘いもの。今のハリシエダ様はフェンリル父様とサリシン義父様の指導の結果、少しは、うーん、掴まり歩きをしている感じかな?このまま頑張ってもらいたいわ。
フォニウム様から伝え聞く分には、ナイジェル義兄様はかなり更生されて、以前の行為を反省されているそうです。アネトール義母様の影響力が下がり、第三者の意見を受け入れる事で現実が見えて来ているそうです。………フォニウム様とサリシン義父様の長年の苦労が報われたと思って良いのですよね。
『カカオ農園については温度管理が重要なので、気候的にもタルピナスが一番ですし、プルメリア国と一番繋がりを持っているのはフォニウム様とサリシン義父様なのですから、私は決まった事を教えて頂くだけでも過分です。
お手伝い出来るとしても、職人専門学校が出来た後で、チョコレートのレシピを教えに行くだけですからね。』
然りげ無く釘を刺しておきます。農園は直ぐに収穫出来る事では無いので、先にチョコレート職人の専門学校を作るそうです。フォニウム様を通して、プルメリアでは既に学校を作ったと言う話を聞いて、サリシン義父様が張り切っているそうです。
動き出した学校設立の話を耳にした陛下が、どうせなら王都に作って欲しかったと言ったそうです。やっぱり言ったのかと笑ってしまいました。でも、材料の問題でタルピナスに場所を決めたと返事したら、それなら仕方ない。と素直に納得されたそうです。たぶん、言ってみただけと言うか、第三者に向けた意思表示だったのかも。
と言うのも、何処からか話を聞きつけた、プルメリアに隣接しているマティス男爵から、
『田舎のタルピナスで作れるなら、マティスでもカカオ農園や職人学校が出来るのではないでしょうか?何故、リストランテばかりに許可を出すのですか?トラベルソ領のマティスにも許可を頂きたいです。』
と陛下に苦情が上がり、マジェンダ義兄様にも質問状?が来たそうです。マジェンダ義兄様は、
『リストランテで独自に動いているだけで、国から支援されている訳ではありません。トラベルソ領でも独自に企画されれば宜しいのではないでしょうか?
お互いに切磋琢磨して国産品が増産されれば、陛下を始め、喜ぶ者も多いと思います。』
と言う様な内容の返事を貴族っぽく粉飾して返したそうです。当然ですよね。マティスもタルピナスと同じ立地条件なのですから、地の利を活かして独自に企画すれば良いと思います。
確かにカカオからチョコレートが作れると言い出して加工し、商品化したのは私ですけど、元々、薬の原料としてカカオは輸入されていたのです。私がカカオを作り出した訳では無いので、誰でも創意工夫すればチョコレートは作れた筈です。多分ね?
誰かが努力して成功したのを、無関係の自分達がそのおこぼれに預かれないのは可笑しい。って言い掛かりを付ける方が可笑しいと思います。………例の転売していた商会の一つがこのマティス領に本店を構えているのですよね。
話は逸れましたが、私の関係した工房やお店以外で販売された商品については、商品の品質について責任を負いません。と言う内容の張り紙を商業ギルドにも貼りました。キュラス、サルカンド、リストランテの3店舗以外で購入したチョコの品質は其々の購入先で責任を取れ。と言う事です。当然です。
王都のは私の管轄外のお店なので知りませんけど。
夏季休暇が明けて、最初の職業学校は陶器工房の食器作りだったそうです。乾燥させて窯入れし、無事に焼き上がった食器は学校が購入して、寮で使うそうです。設備が完成して無事に稼働したと報告を受けたハリシエダ様がホッとされてました。
ベルトラン校長も職業学校を気にして下さっているので、直ぐに情報が来ます。と、同時に初等学校の運営も忙しい様で、副校長を作りたいと相談が来ているそうです。私としてはリーバスさん率いる商業ギルドに任せているつもりだったので、アレッ?って感覚でした。
『ハリシエダ様、職業学校の運営って、商業ギルドの管轄では無かったのですか?』
と聞くと、ハリシエダ様も少し考えてから、
『講師役の職人を集めてくれたのはリーバスだから、ミスティーヌの言い分も間違ってはいないと思うけど、場所が初等学校だから対外的にはベルトラン校長が責任者の立場になると思う。
私達の考えが合っていない可能性も有るから、二人を呼んで相談した方が良さそうだな。』
と、急遽会合を開く事になりました。と言っても私達はオブザーバーですから、会合場所と、問題点の提起の提供しかしないつもりです。領地内の事ですが、メインはベルトラン校長とリーバスさんで決めてもらいます。ハリシエダ様は兎も角、私は関係者から外してもらいますよ。




