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75 4月に向けて〜

 年が明けてキュラスは忙しく成り始めました。建物が出来て教員も揃ったので、開校に目掛けて動き出したのです。校長であるベルトラン様が中心で動いていますが、ハリシエダ様も何かに付けて顔を出しています。ヴェルム領が出来て初めての学校ですから当然ですが、意気込みが凄いです。


 『ミスティーヌ、調理室のマジックボックスに、時間停止が付いているって聞いてなかったって、皆んな驚いていたよ。ベルトラン様なんて一体幾らするんだって絶句していたよ。』


 と笑っています。イタズラ成功みたいな顔をしていますけど、私、キチンと説明しておきましたよね?


 『登録した時に、食料は腐ったら大変なので時間停止を掛けておきますと言いましたよね。調理人達にお伝えしていなかったのですか?それに、私が寄付する食材の為の付与だから、私の我儘で付けさせて頂きます。ですからマジックボックスも寄付しますね。とも言いましたよね?』


 『まぁ、領主夫人の善意の寄付と言う話や、現実に金額が発生しないと言う話とか、その辺も今日再確認しておいたから大丈夫。わざとでは無いし、これは良いサプライズになったから怒らないでね。』


 笑って誤魔化しに来てますね。因みに、学校に寄付したマジックボックスやマジックバッグには、指定した人のみが使えるように、予め登録制にしてあります。今の処、ハリシエダ様とベルトラン様と私が登録してありますけど、その時に私が話したと思っていたのですが、ベルトラン様は忘れていたのかしら?調理室だけでは無く、何個かまとめて登録してもらいましたから、個々については聞き落としていたのかもしれませんね。


 『私では無く、驚かせてしまったベルトラン様に謝って下さいね。そんな楽しそうな顔で謝られても許して貰えないと思いますけど、叱られても私は関知しませんから。』


 巫山戯て良い事とは思わなかったので一応釘は刺しておきましょう。調理人が決まったら、まとめ役の人を追加登録するので、その時にでもキチンと謝罪したか確認すれば良いかな。


 まだ学校は始まっていませんが、4月に開校する準備で関係者は働いています。その人達の食事の為と、開校した後の給食の手順確認を兼ねて調理人が入っているので、調理室のマジックボックスには既に食材を入れて有ります。


 今はまだベルトラン様しか登録して無いので、食材の出し入れはベルトラン様の仕事の一つになっています。私が予め入れて有りますよ。と伝えておいたので、それを使おうと確認して驚いたみたいですね。長期保管出来る食材を想定して確認したら大量の生肉が入っていた。うん。私も一緒に謝罪すべきかも。


 3ヶ月後にはヴェルム初等学校が始まります。来年にはカヴィヨンが入学します。ハリシエダ様の熱も入って来て当然のようですが、今までと違う取り組みも色々しているので、最初から完璧を目指さなくても…と囁いています。下手に頑張られてしまうと、私も必要以上に引きずられそうで危ういのです。


 2月にはカトリーヌとセドリックの誕生日も有りますし、ビーズ工房だけで無く、領主夫人の仕事も色々と増えて来ているので私も忙しく過ごしています。合間合間に時間を作って冒険者の活動を入れてストレス発散していますけど、もう一人自分が欲しいくらいです。


 と言うのも、カヴィヨンは兎も角、残りの4人の子供達が悩みの種に成りつつあるのです。カヴィヨンの時はフェンリル母様が全面的にカヴァーしてくれたのですが、下の4人にはフォローしないとハッキリ言われていて、4人にはサリシン義父様が其々に乳母を付けてくれているのです。如何に厳選して下さっても、フェンリル母様には敵いませんし、私もカヴィヨン一人に掛けていた同等の手間を4人それぞれに掛ける事は無理が有ります。しかも、女神様にも会えなくなって……


 と悩んでいるとフェンリル母様がやって来て、


 『ミスティーヌ、カヴィヨンが出来過ぎなのは分かっているわよね?残りの4人に同じ事を求める必要は無いのよ。あの子達は其々の良い処を延ばせば良いの。それに、子育てをしていて、子供同士の優劣を比べるなんて一番してはいけない事ですよ。』


 と諭してくれました。目から鱗?肩の力が抜けました。女神様の加護も強く、フェンリル母様の教育を受けて育っているカヴィヨン一人が恵まれ過ぎていて、他の子達が可哀想と思ってしまったのですが、それは間違いで、同じに育たなくても良いと言われて心が軽く成りました。


 カヴィヨンが出来過ぎなのはそれだけカヴィヨンが頑張った証拠なのだから、素直に褒めちぎれば良い。弟妹達が羨むようになったとしたら、弟妹達にも頑張らせれば良いと簡単に考えて良いのですね。


 みんな違ってみんな良い。前世で、こんな言葉が流行った事が有りましたが、本当ですね。フェンリル母様も私の顔つきが変わって安心したのか、爆弾を落としてくれました。


 『カヴィヨンが初等学校に入学したら、私も山に帰ります。』


 以前から言われてはいましたけれど、期日を切られるとドキドキしてしまいます。フェンリル母様からは転移で飛んで来てくれたら相談には乗るわ。と軽く言われました。因みにハリシエダ様を鍛えていたフェンリル父様は、サリシン義父様が教育に戻って来たのをきっかけに、一足先に戻っています。私はあまり関わって来なかったので、最近あまり見かけないなぁと思っていました。フェンリル父様はフェードアウトがうま過ぎです。


 『最初は、子育てに成功している母親で、頼れる存在がミスティーヌには居ないから、心配で離れられなかったのだけど、いつしかカヴィヨンが可愛くなり過ぎて私が構い過ぎたのよ。でも、少しやり過ぎたかなと反省してね。』


 と笑うフェンリル母様。私よりも先に兄弟の差に気付いていたみたいです。色々と話し合った結果、カヴィヨンは周囲の期待に潰されない様に注意する事にして、カヴィヨンのしたい事を伸ばす方向で育てる事にします。後の4人も其々をキチンと見て、個性や考えを尊重して育てる事にしました。


 器用不器用、得手不得手。出来ない事よりも得意な事を伸ばす子育てを心掛けるように序言されました。それにね、子供達が全員カヴィヨンだったら、ハリシエダ様が可哀想かも?(笑)


 今年もカヴィヨン主催?でカトリーヌとセドリックのお誕生会が催され、初めてのカヴィヨン特製子供用チョコケーキに、サリシン義父様やアラン父様やマリアナ母様が絶句している中、大成功で解散。後日、お土産のチョコケーキのお礼にと、クリミアナ義姉様から5人分の素敵な子供服が贈られて来ました。


 ビーズ工房で手応えを得たクリミアナ義姉様は、ファッションに注目してリストランテの専属工房にアドバイスする様になったそうです。『王都の工房よりセンスの良い服を!』を合言葉に仕事する様になったわ。とお手紙に有りました。今回の贈り物が発端で、子供服にも進出するのだとか。


 リストランテの領主夫人の仕事はすっかり慣れていらっしゃるし、子育ても卒業されて?新たな遣り甲斐を見つけて生き生きされているそうです。ハリシエダ様に送られたマジェンダ義兄様からのお手紙にも書いてあったそうです。


 張り切っているクリミアナ義姉様に、遠いキュラスからささやかに、頑張って下さい。とエールを送るべきか、やり過ぎて、ロレーヌ妃様やプリシラ王太子妃様を煽らない様にお気を付けて下さい。と助言すべきか悩む処ですが、取り敢えず、こちらに飛び火しない事を祈っておきましょう。



 カヴィヨンの真似をしたがるクリスティは、最近文字を覚えた様で、一人で絵本を読んでいる事が増えたそうです。書庫の一角にカヴィヨンが読んで来た本や、フェンリル母様の教育を書き留めたコーナーが有るのですが、そこが今、クリスティのお気に入りの場所に成りつつあるのだとか。


 そう言えば夕方、夕飯を知らせに侍女が書庫に入ると、一角がボンヤリと明るかったそうで、夕陽が残っていたのかな?と思いつつクリスティを食堂に連れて行く事が数回あったみたいで、フェンリル母様が観察していたそうです。


 『クリスティは生活魔法のライトを使っていますね。ミスティーヌが教えたのかしら?それとも、ハリシエダ様が?でも、ハリシエダ様はあまり魔法が得意では無かったように記憶していたのだけれど。まさか、カヴィヨン様?』


 フェンリル母様が部屋に来て私に告げます。まだ3歳だからか、魔力量の関係か、そんなに明るく無いので気付かれていなかった様ですが、確かにライトを使って本を読んでいたそうです。早速、二人で書庫に向かいました。


 今日は3人で読書していますね。カヴィヨンが読んであげています。書棚の影から覗いていると、手元が薄暗くなったせいか、カヴィヨンがライトを使って部屋を明るくしました。その様子を見ていたクリスティも『ライト』と声に出しています。


 どうやら教わったのでは無く、見て覚えたのですね。クリスティも優秀ですから当然かも。と親バカしながらホッとして見守っている私の横で、フェンリル母様がスッと動きました。


 『クリスティ様、体調は如何ですか?怠かったりはしませんか?今、クリスティ様はライトの魔法を使ったと気付いていますか?』


 優しく、でもキッパリと質問していくフェンリル母様。珍しくカヴィヨンがオロオロしています。


 『えっと、今はだいじょうぶ。はじめは、クラっとしたかも?えほん、見たいからニイサマのマネしたの。』


 うん。カヴィヨンは真似されたのに気付いてましたね。魔法の発動は小さい子には危険が伴うからと昔フェンリル母様からキツく注意されてましたが。あ〜あ、フェンリル母様の気配が……


 『あのね、生活魔法ならそんなに魔力も要らないし、見ただけでは使えないと思って、クリスティの前で何度も使っていたの。ほら、クリーンとか。でも、今まで真似されたりとか無かったし。』


 クリスティを庇うように前に出て言い訳をするカヴィヨンですが、フェンリル母様の前ではね。私も庇いましょう。


 『そうね。カヴィヨンはクリーンを何時も使ってくれて、皆んなを助けてくれていたのよね。何時もありがとう。

 クリスティ、大好きな兄様の真似をしたかったのもわかるのだけど、知らないで使うと魔法は危険な事も有るの。特に使い始めはね。魔力が足りなくなると倒れてしまう事も有るのよ。

 ねぇ、フェンリル母様。クリスティにも手解きをお願い出来ないかしら?それとも、私が教えた方が良いかしら?』


 クリスティを心配しての苦言を呈していたフェンリル母様ですから、直ぐに気配が変わりました。


 『そうですね。私はカヴィヨン様だけの先生として来ましたので、クリスティ様の魔法はミスティーヌにお願いしましょう。ミスティーヌがキチンと見極められるかをチェックさせて頂きますね。』


 アレ?私に矛先が向きました?基本的に感覚で使って来たから、人に教えるのはそんなに上手では無いのよね。丁度良いからハリシエダ様にお願いして教本を揃えてもらいましょう。専門的な事は兎も角、初等学校でも魔法は学ぶのでそれに沿って教えた方が良いと思うのです。


 カヴィヨンは魔法に関しては既に上級学校レベル位出来そうです。魔力量もハリシエダ様より多いかも?たぶん、この一年でフェンリル母様がみっちり教え込むと思います。私と言う前例があるので、上位魔法が使えても私は受け入れますが、カヴィヨンの年では一般的では無いので。例え使えても成人までは封印するつもりなのだそうです。


 なんとカヴィヨンとフェンリル母様との間で、何歳になったら使える魔法。と言う一覧表があって、魔法はマスターしてもその年までは使わない約束で教しえている。と種明かしをされました。だから、普段は生活魔法しか使っていないけど、既に攻撃魔法とかも実は使えると聞いて驚きました。


 私は必要に駆られて使っていたし、前世の記憶が有ったから使えた筈なので、普通の6歳児は無理だと思うのです。女神様のご加護と、フェンリル母様の英才教育が凄すぎるのだと思っておきましょう。


 因みにジャレットのマイブームはビーズ手芸です。ワイヤーが少しずつ納品される様になって、私がブローチや、ブレスレットやネックレスのチャームを作っていると、横に来て一緒にビーズを通し始めます。独特な色の組み合わせをするので、個性的な作品に仕上がります。


 せっかくなので、花のモチーフを作ってもらっています。私の作った基本を真似して色違いを沢山作ってもらっているのですが、職人気質と言うか、拘りを持って作っている様で、時間を掛けて綺麗に仕上げている様を見ていると、子供の遊びでは無いクオリティーに驚きます。


 『ジャレット、モチーフが沢山溜まったら何に飾り付けましょうか?キラキラして楽しみね。』


 と声を掛けると、


 『カーサマのオヨーフクに付けるのよ。それから、レットのバッグにも。あとね、ニイサマのバッグにも付けるの。あとね、トーサマも付けてほしいって。クリュとレットはおそろにするの。』


 目は真剣に手元から離さず、ビーズを掬っています。キラキラがドンドン繋がって花の形を作っていきます。


 『じゃあ、お星様も作りましょうか。花びらの先をとんがらせるとお星様になるのよ。』


 私は少しだけビーズの通し方を変えて、星の形にして見本を作ります。ジャレットが作り易い様に単純な物ですが、ササっと星を作るとジャレットの前に置きました。

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