表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドライフ〜インベントリって素晴らしい  作者: 清香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/92

73 皆んな其々成長しています。

 リーバスさんに依頼した調査結果が届きました。商人の子達は殆どが学校に通っていますが、農家や職人の子達には学校に行かずに働いている子達もいました。自分の家の稼業を手伝っているなら仕方ないかもしれないのですが、グランダイ領に出されている子供達の存在から、そうでは無い子も居るようです。


 学校に行かせる為の経費が0では有りませんし、子供達が労働力を支えている家庭も有ります。ただ、生涯賃金を考えると、知識は有った方が良いのですよね。悪どい人に騙される確率が下がりますからね。とは言え、領主だからと言っても各家庭に強制は出来ないので、領政としては受け入れ体制を整えるだけです。


 『ミスティーヌ、ベルトラン様から話があると手紙が届いたのですが、ミスティーヌにも同席して欲しいそうです。明後日の午後の予定は空いてますか?』


 丁度、リーバスさんからの調査書も届いていますし、ハリシエダ様だけで無く、ベルトラン様にも情報を共有して頂きましょう。


 『ビーズ工房も好調ですし、ベルトラン様を優先出来ますよ。私も、お二人と共有したい情報が有ります。

 アラン父様とサイトバル兄様の運営している冒険者学校の件とか、今回の件で知った事で色々と考えさせられました。今までの私は、自分が成長するだけに頑張れば良いのだと思い違いをして来たのだなぁ。と反省しています。それと、現実を余り知らないのかな。と領主夫人の立ち位置の勉強不足に思い至ったと言うか。』


 と話し出すと、ハリシエダ様が慌てて、


 『それを反省しなきゃいけないのは私の方だよ。私は公爵子息として学んで来て、王宮でも仕事をして来て、更に、兄様や父様にも領政を教わって来ているんだ。それなのに、未だにミスティーヌに甘えている。

 ミスティーヌは生い立ちを鑑みても、充分勉強しているし、キチンと領主夫人の仕事を熟しているからね。目標が高いのは良い事だし、応援はするけど、不必要に頑張り過ぎないでね。』


 と優しい言葉をくれました。そうですね。無知を知っただけでも成長していると思いましょう。これから頑張って領内を発展させていけば良いですね。取り敢えず、明日は魔石を集めにリストランテに狩りに行きましょう。ストレス発散して、マジックバッグの材料も集まり、来年始まる学校に寄付するお肉も手に入る。一石三鳥です。



 結局、ほんの少しだけハリシエダ様に口出ししてしまいました。調査書から、初等学校だけでは救済出来ない子が気になってしまったのです。冒険者学校の様な職業学校の仕組みを追加してもらいました。


 『ミスティーヌ様、この職業学校と言う部門ですが、独立させる意味が分からないのです。普通に、初級学校の枠組みに入れないのは何故ですか?』


 ベルトラン様が資料を手に質問されました。


 『休日に開催しないと来られない子供が対象だからですね。仕事が休みか、休める日でないと 来る事が出来ない子供達の為に開設したいのです。勿論、初等学校に通うごく一般の子供達でも参加出来ますよ。』


 と話しながらリーバスさんからもらった調査書を渡しました。キュラスでもいない訳では有りませんが、フェーブルとシャファーに問題のある子供達の数が多いのです。


 『グランダイの領政の歪みが原因かと思われますが、キュラスとの差が開き過ぎるのが気になります。サリシン義父様に注意される迄は気にしていなかったので、気付くのが遅れました。』


 と反省を述べると、ハリシエダ様も、


 『あの二つの街は派遣された文官に任せて数字しか見ていなかったから、私も気にしていなかったよ。キュラスしか見ていなかったし、数字だけ見て満足していたしね。』


 と調査書に驚いていました。ベルトラン様も賛成して下さったので、同じ学校を使う、別枠の講座として正式に決まりました。最初の何年かは領費から補助金を出して運営しますが、数年後には実技で作る商品を売った利益で講師費を捻出する方針も決めました。


 無料で子供達を育てるのは現実的では無いと思うのですよ。講師役の職人さんに払う賃金とか、商品を作る材料費とか、シビアな数字を見せる事も、未来に続く教育だと思います。


 キュラスの独自性を盛り込んだ方針が決まり、胸を張って学校新設の告知を出しました。


 まぁ、強制的に領内の子供達全員が通う訳ではないので、来たらこんなに良い事が有るよ!って宣伝する事しか出来ないのです。余裕がある家庭ばかりでは無いと分かっています。ただ其処は歯痒いです。


 先生役に職人を入れたので、生家の手伝い以外で学校に通わない子の受け皿になると思います。職業体験と言うか、将来の選択肢を増やしてあげたいと言う考えから提案したので、初級学校の勉強とは別枠で作ってもらいました。いろんな事の基礎を少しずつ自由に学ぶか、希望する講座を1年間集中して学ぶか、選ばせたいなぁと悩んでいます。


 『でも、集中するなら、その職人に弟子入りすれば良いのでは?』


 とベルトラン様に指摘されて、初等学校がお休みの日に職人さんに講義してもらう事に決まりました。月替わりで職人さんが変わり、毎月、前半の休日に座学を教えて、後半は各工房などにお願いして実技を教えてもらう事で、1年分のスケジュールが埋まりました。


 建物は建ちましたし、薬草園などの施設も整って来て、来年の開校が見えて来ました。キュラスは勿論、フェーブルとシャファーにも告知して有りますから、年明けから入学者名簿のチェックをして行きます。家庭環境によっては通えない、通わない子達も出てしまいますが、折角作ったのですから多くの子供達に通って欲しいです。


 『グスタフソン先生とベルトラン様のお陰で教員も揃って来ました。それ以外の職員と、年間講師以外のボランティア?の職人も登録が増えて来ています。』


 と担当文官から報告が来たそうで、ハリシエダ様がホッとしています。各月毎の講師役の職人さん以外でも、工房の職人を育てたいと考える職人さんがいるのです。特に、ビーズ工房、服飾工房、木工工房は今急成長しているので、切実らしいです。



 ストレス解消でこっそりと狩りをしています。短時間の為に索敵は欠かせません。集中度を上げてインベントリに投げ入れてます(笑) あ、嫌な物を見つけてしまいました。仕方ない、狩りを中止してサイトバル兄様の処に跳びます。


 『ゴブリンの集落を発見したんだけど、教育に使う?多分4〜50位の数だと思うけど。丁度良いパーティーが居ないなら潰して来ちゃうけど。』


 100に満たないし、キングも居ないみたいだから相談に来ました。と言うと、フェーブルから来たパーティーを育てているチームから手が上がりました。


 『4人組のパーティーを3チーム程預かっているから、彼らに討伐させても良いかな?集団での戦いを経験するのに丁度良いから、うちに任せて欲しい。』


 と言うので、サイトバル兄様がギルドからの依頼として受けてくれました。場所はラルテ領に近いリストランテの森の中です。そんなに離れた場所では無いので、装備を整えて早速出発して行きました。


 集団を見送っていると、ミスティーヌも成長したね。とサイトバル兄様に頭を撫でられてしまいました(笑)


 邸に戻って部屋で休んでいると、クリスティとジャレットを連れてカヴィヨンがやって来ました。絵本を読んで欲しいそうです。毛足の長い絨毯に丸く座って、ゆっくりと読み始めました。


 『女神様は廻りを見渡して思いました。何か寂しいわ。何が足りないのかしら?

 お花が咲き乱れ、鳥は美しい声で囀っています。空は気持ち良く晴れて、穏やかな風が吹いています。満ち足りた空間の筈なのに、何か足りないのです。

 水鏡で下界の世界を眺めて見ました。人々の生活や、魔獣達の活動などが映っています。楽しそうな風景も多く見られますが、全てが美しくは有りません。戦い合う者の姿や略奪を繰り返す残忍な者の姿も有ります。

 そんな中で或る風景に目が止まりました。

 幼い子達が懸命に植物を育てて、傷付いた大人の介護をしているのです。その国は戦争の最中で、足りなくなった兵士の代わりに、平和に暮らしていた人々を戦わせたのでした。

 傷付いた大人はその平和に暮らしていた人々で、幼い子達の親だったのです。

 女神様はその光景に心を痛めましたが、それ以上に、その子達が作っていた食事に目を奪われました。高くて買う事の出来ない薬の代わりに、自分達で摘んで来た薬草を混ぜたパンに、自分達で育てた野菜だけの食事。

 見た目には美味しそうに見えないのに、それを食べる皆の笑顔に心を奪われたのです。

 私に足りないのはこの笑い合う空間だわ。教会で美味しい物を供えられても、楽しい心は付随しない。敬われているとは思うけど、感謝されてはいない……

 女神様は戦争を続けている国々の一番大きな神殿に神託を卸しました。今すぐ争いを止めなさい。生命を無駄にする事を許しません。互いに優しさで対話し、互いの罪を分け合いなさい。戦い合う事は愚かな事だと理解しなさい。

 其々の国の一番大きな神殿に、同じ内容の神託が下された事など、今迄有りませんでした。しかも、戦争を続けて来た王達も、同じ夢を見て、直に女神様から叱られたのです。

 次の日。争いは止みました。傷付いた人々は其々の家にと抱き合いました。心に傷を負った者達も多く居ました。でも女神様のお言葉を受けて、其々に優しさを分け合い、労り合う生活を始めました。

 暫くして、久し振りに下界を覗いた女神様は微笑みました。皆が笑顔で食事をしています。暖かな気配は神殿からの供物にも漂っています。

 女神様はもう寂しさを感じませんでした。』


 読み終えて驚きました。こんな内容の絵本が有ったなんて知りませんでした。本当に子供向けなのでしょうか?


 『母様、女神様はもう寂しく無いのですよね。母様が沢山お菓子を作って差し上げているし、僕達とお話しする時はいつも笑顔でしたよね。でも、ずっとお会いしていませんから、今は寂しくされて無いでしょうか?』


 カヴィヨンは女神様が心配になってしまったみたいです。


 『女神様は最近はお忙しくされていて、寂しさを感じている暇も無いみたいだから、大丈夫だと思うわ。お会い出来なくて、私達の方が寂しい位ね。

 処でカヴィヨン。この絵本はどうしたの?』


 『サリシンお祖父様から頂きました。本当はもっと難しい本だそうです。でも、大切な事が書いてあるから、僕でも分かるように絵本にしてくれました。』


 サリシン義父様の英才教育でしたか!上に立つ者がつまらない争いをしない為の教育的絵本なのですね。そう言えばサフラメント国を始め、周囲の国々でも戦争の話は聞こえてきませんね。もしかしたら、王家と上位貴族には必須の知識なのでしょうか。


 『女神様の為にも、穏やかで朗らかな毎日を過ごしましょうね。』


 と微笑むと、カヴィヨンもにっこり笑って頷きました。何時貰った絵本なのかは知りませんが、カヴィヨンは内容を理解している様です。フェンリル母様と言い、サリシン義父様と言い、英才教育が過ぎませんかね?恐るべき6歳児な気もして来ました。ハリシエダ様を追い越す日は近いかも(笑)


 読み聞かせの途中から寝てしまった双子の為に、小声でお喋りをしていたのですが、流石に夕飯の時間なので起こすことにしました。カトリーヌとセドリックも起きているみたいで侍女達が呼びに来ました。目を擦って眠そうにしていたクリスティとジャレットも、弟妹達が呼んでると聞くと、サッサと走って行ってしまいました。


 下の4人の子供達と比べてはいけないのですが、カヴィヨンって、出来過ぎじゃないかしら?既に上級学校に通ってますと言ってもおかしくない位、しっかりしているし、うーん、天才って書いてカヴィヨンって読む。とか言いたくなりますね。


 と内心で思いながら、大切そうに絵本を抱えているカヴィヨンと一緒に子供部屋に向かいました。まだ喃語で言葉にならない二人の楽しそうな声と、それと会話している二人の声が楽しげに聞こえて来ます。カトリーヌは時々それっぽい単語が出るのですが、セドリックは笑い声が多いけど、あまり話そうとしないのです。上の双子の時はクリスティの方がお喋りが多かったので、性差では無く個性ですね。


 カヴィヨンと一緒に部屋に入ると、一斉に


 『『『『クッキー!』』』』


 と叫ばれてしまいました。下の双子は喃語でしたが、上の双子の声が大きくて、まるで4人ともクッキーと叫んだ様に聞こえてしまいました。侍女も笑いながら、


 『お子様方はカヴィヨン坊っちゃまがクッキーに見える様ですね。』


 と、普段の様子を教えてくれます。まぁ、この1年でカヴィヨンの腕はかなり上がりましたからね。当然かも?


 『では、夕飯のデザートはカヴィヨンのクッキーで決まりかしら?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ