72 日常から。ヴェルムの発展の為にいろいろしてみよう。
カトリーヌとセドリックが成長して、一緒に外出が出来るようになりました。でも、まだ女神様に挨拶は出来ていません。何度か教会に出掛けているのですが、女神様がいらっしゃらないのです。フェンリル母様に尋ねると、女神様の力が貯まって来たので、何やら作っていらっしゃるそうで、お忙しいから顕現されないそうなのです。
会った回数の多さで比較して考えてはいけないのでしょうが、カヴィヨンの才能はダントツで高く、同じ双子でも数回の差で、クリスティの方がジャレットよりシッカリしているように感じられるのですよ。
なので、やっと出掛けられるようになったカトリーヌとセドリックにも女神様にご挨拶させて頂きたいのです。女神様のお気持ち次第と分かってはいるものの、カヴィヨンをみていると、弟妹達との差を感じさせられるのです。とは言え、こちらから加護を強請る訳にはいけませんよね。
……もしかしたら、私が欲張りになったから会ってもらえないのでしょうか?そうですね。私がもらっている恵まれ過ぎた才能を分けられると丁度良いのかもしれませんね。反省して謙虚さを取り戻さなければいけないのでしょう。急に会えなくなったので後ろ向きな事ばかり考えてしまいます。
カトリーヌとセドリックが成長して、私も子供達から少し手を離しても大丈夫になった為、短い時間ですがこっそりとダンジョンアタックを開始して、ストレス発散を始めました。非生産的な思考から逃れる為の行動とも言います。リーバスさんには申し訳ないのですけど、人を動かすのは未だに精神的に負担が大きく、ストレスなのです。
取り敢えず、ダンジョンでは他の冒険者の邪魔をしないように、深夜の最深部で狩りをしていますから、採れる魔石は大きい物が殆どです。偏った大きさの魔石しか採れないのが難点です。小さめの魔石も欲しいなぁと思案していると、フェンリル母様から、聖域が有るカサワドの山頂付近を提案されました。だけど、あそこも望んでいる程小さな魔石は採れないのですけどね。
私が今必要としている、サイトバル兄様に渡す初心者用のマジックバッグを作る為には、小さな魔石の方が都合が良いのです。
『ダンジョンで幾らリポップするとは言え、トレントやエンシェントトレントの狩り過ぎも良くない。魔石だけじゃ無く常識の範囲内で確保するように。』
とサイトバル兄様に諭されながら欲しい魔石の話をしていると、ハリシエダ様に、
『小さな魔石で良いなら、魔獣退治はリストランテ領内ではどうですか?ミスティーヌはキュラスは冒険者が充実しているからダンジョンに行く事にしたのだろうけど、リストランテでも良いのでは?』
と提案されました。実はキュラス内でもタルピナスとの境付近はあまり近付きたく無くて、行ってません。キュラスの冒険者達の活動の妨げにならない為もあるのですが。ヴェルムは対象外だったかも。それは兎も角リストランテ領内にも行ってないなぁ。と気づきました。意外と狩りはダンジョンで。と思っていたみたいです。
サルカンドを中心にしていたので仕方ないのですが、グランダインですら依頼を受けて行った事があるのに、リストランテは盲点でした。早速、サリシン義父様にお伺いを出すと、マジェンダ義兄様経由で、
『リストランテの冒険者だけでは見切れていないから、ミスティーヌが魔獣を間引いてくれると助かるよ。盗賊とかは領兵に見回りさせたりして警戒しているんだけど、魔獣迄は手が回らなくて、時々、被害報告が上がるんだよね。』
と了承が取れました。相談の結果、オークや私の大っ嫌いなGを中心に魔石集めをする事にしました。この件はサイトバル兄様の考えも有って、リストランテの冒険者ギルドの依頼扱いになりました。オークは庶民の味方のお肉ですから、それぞれの地域のお肉屋さんに納品する為だそうです。キュラスでは間に合っていますからね。
マジックバックを作るのに魔石的に一番都合の良い一角兎は対象外として欲しいと頼まれましたよ。お肉は美味しい上に初心者でも頑張れば狩れるから残して欲しいのだそうです。残念。でも、乱獲しなければ?うーん、悩む所です。
スライムは毒を持っている特殊個体を除いてスルーする事になりました。やはり、超初心者向けの魔獣は必要だそうです。但し、スライムには稀に聖属性を持つ個体が居るのです。それだけはこっそりとあの洞窟に連れて行く事にしました。貴重ですからね。
一回のアタックでGを中心に数十個の魔石が集まるので、それを使ってマジックバッグを作ってはサイトバル兄様に納品する事にしました。が、今回、リストランテの冒険者ギルドに縁が生まれたので、マジェンダ義兄様のお願いも有って、そちらにも初心者向けマジックバッグをこっそり納品する事になってしまいました。
ところが、マジックバッグの話を聞いて何時ものようにリーバスさんとキエランさんがやって来ました。冒険者のミスティーヌが冒険者ギルドと売買する事に問題は無い筈ですが、領主夫人の肩書きが付いてしまったので、他領の冒険者ギルドとの直接売買に待ったが掛かりました。
と言うのも、これ迄は伯爵夫人に平民が依頼なんて。と諦めていた他領のギルドから、前例が出来たのなら!と無理強いが来るかもしれない。と危ぶんだのだそうです。という訳で、間に商業ギルドを通して私の存在を隠す事になりました。
会議の結果、リストランテに売る物は、リストランテ領内の工房がバッグを作り、私がそれをマジックバッグに加工する事で決まりました。私の場合、一人で完結してしまう事が殆どで、地域の経済的にマイナスになるからと言う理由です。
『昔、教会に作ってあげていた事を思い出しました。』
と話すと、キエランさんが苦い顔で私を見ながら、
『アレはミスティーヌ様を侮った行いでしたよね。教会とミスティーヌ様の甘さに付け込んだ堕策でした。ですが経済的に見て、マジックバックを作る工程は良かったのでそれを模しました。』
『今でもたまに他領のギルドからオネダリが聞こえる事が有ります。サルカンドやキュラスの冒険者ギルドの話は聞こえてますからね。でも、寝言は寝てから言うべきで、私は寝言に答える事は有りません。』
と、リーバスさんが良い笑顔でキエランさんに答えます。ハリシエダ様は、
『ミスティーヌが全部作ってしまうと、経済が停滞するし、高級品過ぎて売るのが大変なんだよね。他との兼ね合いも有るから、安くなんて出来ないし。
以前の大量なマジックバッグの時は父が頑張って、王族に捌いてくれたらしいけど、追加の話は来ていないし。ミスティーヌの趣味を制限したくはないけど、作って死蔵するのは勿体無いでしょ。趣味で作るなら程々で良いからね。』
と釘を刺します。以前の育休の時に作り溜めた見掛け高級品、中味も超高級なマジックバッグの所為で、サリシン義父様に負担を掛けたそうで、暫くは遠慮。と遠い眼をされていたのです。ハリシエダ様が私の視線を感じて、
『まぁ、父は交友関係が広いからなんとかなったけど、私は幾らミスティーヌが好きだと頑張ってもね、まだ若輩者だからね。高級品を売り付けられる知り合いは居ないに等しいと思ってもらっても良い位だからね。』
と、固辞しています。私自身は大した作業はしていないのですが、女神様の加護が厚すぎる弊害かなぁ?気を抜くと壊れ性能と呆れられる物に仕上がっていたりするのですよね。贅沢過ぎるけれど、普通が良いなぁ。と言われました。
学校の備品などを入れる収納を考えていたハリシエダ様に、マジックバッグを幾つか渡しておいたのですが、それを知った他領から来た職人の一人が盗みを働いたのです。他領に逃げ込まれる前に捕まえて取り戻しましたが、マジックバッグは簡単に持ち出せてしまうと言う問題点が見つかりました。
念の為に使用者限定などの魔法を掛かけていたので、監視が甘くなったのですが、仮に持ち出せても使えず、自動で元の場所に戻ってしまう事を、キュラスの冒険者以外には知られていなかったようです。
『手の届く場所に高価なマジックバッグが不用意に置いて有るから出来心を起こしてしまった。アレで盗まないのは馬鹿だろう。私は罠に引っ掛けられたのだ。』
と管理の不行き届きを訴えて、罰の軽減を叫んでいるそうです。犯罪者の理屈は理解出来ません。
彼はフェーブルの職人の紹介で、グランダイン領から来ていた職人でしたが、マジックバッグのお洒落な外見と言い、容量の大きさと言い、コレ一つ売り払えば一生遊んで暮らせる。と考え盗んだそうです。確かに価値的には間違っていないかも。尋問の際、
『おまえが持ち込んだのなら、どう見ても盗品と分かりそうだが、それでも買う商人が居るのか?』
と問い質すと、
『グランダイン侯爵家に持って行けば絶対に高値で買ってもらえる。』
と断言したそうです。それを聞いて、
『そう言えば、あそこはマジックバッグに汚い領でしたね。ルールを守らない上に、初心者支援の為の低容量の物ですら自分達の懐に入れて、ぼったくって販売していましたね。』
と、思わず呟いてしまいました。一年の約束が有耶無耶の内に伸びてしまった原因の一つが、あの領の支援体制の遅れだったような記憶も有りましたね。
そう言うわけで、簡単に持ち運び出来ないように、鍵付きの戸棚を作ってもらったりしたのですが、位置を固定して良いのなら、戸棚に直接、付与魔石を加工出来ないか?と試行錯誤して、沢山狩って来たトレントを使ってアイテムボックスを作ってしまいました。マジックバッグの箱版?なんて軽いノリだったのですが。
魔獣の皮を貼ったり、何通りか試したのですが、トレントを使うと一番すんなりと拡張出来ました。隙間無く作る事がポイントだったようですが、扉に魔石を埋め込んで無事に完成した時は、私が試行錯誤している話を伝え聞いて見に来ていた、ハリシエダ様の恩師のグスタフソン先生と、ベルトラン様に驚かれました。
トレントの戸棚は作り付けにして固定してしまえば、丈夫な上に重く、完璧な金庫になりました。逆に持ち運びが出来ないので、中身を持ち運ぶ為のマジックバッグも必要なままのようですけど。鍵付きの金庫だけで良かったのかも?
ハリシエダ様やサリシン義父様など、何時もの面子が集まって相談した結果、商品として販売できる物ではない。と言う結論で終わりになりました。王家に知られたら欲しがるかもね。
学校の隣には寮が建っていて、朝昼晩と3食食べられる食堂は一階に有ります。寮の部屋には二段ベッドが4つ入っているので8人部屋です。週末は帰宅するので、ここは寝るだけの部屋です。勉強するのは自習室を共同で使います。分からない事をお互いに教え合う場として、共同生活に一番の醍醐味にさせたいのです。
浴室は男女で分かれる為2つ有り、洗濯もそこでするようになっています。食事以外は基本無料ですが、食事もお金だけでは無く、寮で働いてもらったり、物納も有りで考えています。農家さんなら家で余っている野菜とかね。
基本はリストランテとサルカンドを見習っていますが、特色も必要かな?と提案させてもらいました。……ほら、お肉なら私が無料提供出来る物も多いでしょ。領民の負担は出来るだけ軽減してあげたいのです。
無事に建物が完成したので、後は、開始に向けての人集めです。教師はハリシエダ様の伝手で決まってますが、補助職員として、料理人や寮の管理人などを探すそうです。此方も職をリタイアした年配の方を中心に選んでいるみたいです。
特色と言えば、薬草園を作る事も追加されました。錬金術の敷居を低くして、魔力の多少に因って出来る方向を見極め、職人を増やしたいのだそうです。冒険者はギルドが専門の学校を作りましたが、魔力持ちは平民に多くない為、そこまで出来ないのです。
イルミナのような子の救済とまでは言いませんが、平民でも多少の魔力は持っているので、才能を伸ばす機会があればいいなぁ。とグスタフソン先生に呟いた結果、浅く広く門戸を開いてみるか。となりました。
たぶん、小さい頃から魔力に触れた方が魔力量も増える気がするのですよね。実体験から言うと。取り敢えず、試験的に試して見て、効果が見られたら王都の学校でも採用するらしいです。
平民でも数世代遡れば何処かに魔力持ちはいるでしょう。魔力の有無に関わらず、基本的な知識を得られるのはとても良いと思いました。




