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63 次なる生命を育んでいます。

 30分とは言え気ままな時間は楽しいですね〜妊娠中ですから安全第一なので、凶悪な魔獣の討伐はしませんが、初等魔術で対処可能なEランク程度の物なら危険は有りませんし、手頃な魔石も欲しいので出て来たら避けませんけどね。フェンリル母様に送り出されたモリーノが周囲を索敵していますが、結界を張ってあるので危ないのは近づけませんよ?


 『ミスティーヌ、この川の周囲にはスライムと小魚しか居ないみたいだね。僕が護衛してあげなくても問題無さそうだから、他の手伝いをしてあげるよ。周囲に生えている薬草は何が有るの?』


 今回は妊婦の護衛をするんだと張り切っているモリーノと、水晶を探しに川に来たのです。採集したガラスを使ったビーズを作りたいなあと思っています。服飾の方と話をしていて、


 『貴族の方や富裕層の方は宝石や魔石などを使ったキラキラした装飾が使えますが、庶民では金銭的に難しいのですよ。アレはお金持ちの特権だから仕方ないのですけどね。』


 と言われたのです。でも、懐に余裕が少なくても、キラキラした装飾は嬉しい筈ですよね。私も綺麗な物は好きです。魔石のように付与が付いてなくても、キラキラしたガラスのビーズの付いたアクセや服が有ったら、つい買ってしまうと思うのです。ターゲットの年齢に合わせてデザインすれば…と、今から胸が弾みます。


 子供が多いEランクでも採れる素材を使って、安価で作れるキラキラ素材。と考えたら、ガラスのビーズが思い浮かんだのです。自分で試しに作ってみて、最終的にはビーズ工房まで作れたら良いかなぁ。と思っています。素材はサイトバル兄様にお願いすれば良いし、職人はリーバスさんに丸投げしても良いですね。ふふふ。となると後は工房を作るだけですか?(笑)


 『ミスティーヌ、ねぇ、僕の話、聞いてる?せっかく僕がお手伝いしてあげるって言っているのに!』


 『あ、ごめんね。水晶、ガラスが採れたら何を作ろうかな?って考えていたの。ガラスはモリーノの雫程キラキラしていないけど、庶民には充分楽しんでもらえると思うの。魔法を使わなくても、ガラスは高温で溶けるから職人さんに任せられるし。暑さ対策は必須なんだけど、失敗しても作り直せる所が良いよね。』


 『エッ?魔法で作るんじゃないの?ミスティーヌは何時も魔法でゴリ押しするじゃない!(笑)』


 モリーノが凄くウケまくってます。何処が原因で笑いにハマったのでしょうか。私がムッとしていると、


 『ウーンと、話は変わるけど、あのね、インベントリを使えば簡単に水晶が採れると思うよ。』


 私がどうやって採取するかを悩んでいると思ったモリーノから、想定外のアドバイスが来ました。目から鱗!川砂を一旦、インベントリにしまって、水晶以外を取り出せば、インベントリに水晶だけ残ります。こんな便利な事、なんで思い付かなかったのかしら?でもコレって魔法のゴリ押しにならないかな?モリーノの思惑にハマるようですが、時間短縮出来るから、まぁ良いでしょう。


 モリーノにありがとう!と言って、チョコクッキーを渡すと、私は早速、インベントリに川砂を入れて、分別して取り出してみました。石英や水晶以外にも、宝石のカケラや金属の粒なども出て来ました。という事は、山の何処かに宝石や金属の層が隠れていそうです。此処は領地では無いので探しませんが。


 時間は10分程でしたが、インベントリには私が試すには充分な量が貯まりました。残りの10分を使って、更なる魔法のゴリ押しで魚を捕獲して、薬草を集めてくれているモリーノに声を掛けて帰宅しました。



 転移で部屋に帰って、フェンリル母様に見守られながらお昼寝休息を摂りました。疲れが有ったようでぐっすり眠っていると、何時ものように、勉強を終えたカヴィヨンに起こされて、今日は厨房に向かいます。私はインベントリから獲って来た魚を取り出して料理を始めます。ソソッ寄って来た料理長にエプロンを付けられたカヴィヨンは、そのまま料理長と一緒にクッキーを作り始めるそうです。


 時間停止の掛かった食材を入れる為のマジックバッグから、型を取って焼くだけになっているクッキータネを取り出した料理長を、ワクワクして見ているカヴィヨン。アレから何度もクッキーを焼いているので、慣れた手付きで型を抜いています。


 オーブンは熱いので、料理長にお任せですが、少し離れた処から覗き込んでいます。料理長の取り出したまだ温かさの残った作り立てのクッキーが、冷えてサクサクになる不思議に興味深々の様子です。


 『アランおジーちゃまにもあげるって約束したの。モリーノが持って行ってくれるって。』


 いつの間に連絡を取っていたのかと不思議に思ったら、モリーノでしたか。妊娠して転移を控えていた私の代わりに、インベントリに残っていたアイテムを使った作品を持って行ってもらっていたので、その時に何かしらの交流があったのでしょう。モリーノの気遣いに感謝です。


 『ありがとう、カヴィヨン。アラン父様もとても喜ぶと思うわ。でも、カヴィヨンの作ったクッキーは、サリシン義父様にも贈ってあげましょうね。』


 自分は貰えなかったと拗ねるサリシン義父様の姿がチラッと思い浮かんだのですが、きっと気の所為では無いと思います。何時も喜んで食べていますからね。処で、カヴィヨンは料理長と一緒にラッピングしていますが、チョコチップクッキーは避けていませんか?


 『料理長、私が見てあげますから、焼いたクッキーを分け直しましょうね。カヴィヨン、それともそのチョコチップクッキーは要らないのかしら?』


 私が軽く睨むと、二人は慌てて包み直し始めました。相変わらず、チョコに目の無いカヴィヨンと、甘やかし過ぎる料理長のコンビです。チョコの効能に付いては理解してもらった筈なのに、カヴィヨンのおねだりには弱い料理長です。ホントにチョコだけ取り上げるべきでしょうか?悩むところです。


 お昼寝から目覚めたクリスティとジャレットも連れて、ハリシエダ様とお茶をします。カヴィヨンが甲斐甲斐しくお給仕をしてくれます。自分の焼いたジャム入りクッキーを二人に渡すカヴィヨンの嬉しそうな顔に皆で癒されています。カヴィヨンのお皿にだけチョコチップクッキーが載っていましたが、二人に見つかる前にこっそりと食べたみたいですね。


 『にーにの、おいちいね。』


 と満面の笑顔でジャレットが言うと、クリスティもクッキーを口一杯に入れて、モゴモゴしながら頷きます。ハリシエダ様も紅茶のクッキーを食べながら、


 『カヴィヨンは意外な才能があるね。とても美味しく出来ているよ。私は料理をした事が無いからとても感心しているよ。』


 と手放しで褒めています。褒められたカヴィヨンも嬉しそうにしています。クリスティが、


 『にーに、クーもつくりゅ。クーもいっちょ。』


 とクッキーを手に興奮したように言いますが、まだ早いです。カヴィヨンが、


 『クーもにーにぐらい大きくなったら教えてあげるね。』


 とニコニコして頭を撫でてあげると、約束ね。と言うように頷いています。


 魚を使った夕飯を食べて、子供達を寝かした後、作業部屋に行って、ビーズを作りました。錬金術を使って作るのですが、ガラスだけで作るより、金属を混ぜた方がキラキラ感が増しますね。出来るだけ小さくした物や、色を何種類か混ぜて、一粒でも存在感のある物にしたり、水晶や宝石の欠片を表面に飾ったりして何通りか作っていると、ノックが聞こえました。ハリシエダ様が呼びに来たようですね。返事をすると、


 『根を詰め過ぎて疲れてはいないかい?そろそろ寝る時間だよ。』


 と入って来て、私の作ったビーズを見ています。集中して作っているので、短時間では有りますが、それなりの数が出来ているので少し驚いているかも。私は苦笑いしながら出来上がったビーズや材料、道具を片付けると、ハリシエダ様と一緒にベッドに向かいました。



 朝になり、気持ちが落ち着いた処で気付いたのですが、私が新しく工房を作る必要はないのですよね。工房を持っているエルーシャ義姉様なら、職人を探す伝手を持っているでしょうし、サイトバル兄様がいるから、ギルドに材料を頼み易い筈です。


 私は作り溜めた何種類かのビーズを持って、エルーシャ義姉様の工房に行く事にしました。工房に出掛ける事を伝えたら、何故かハリシエダ様も付いて来る事になりましたけど、取り敢えず、エルーシャ義姉様と話をしましょう。


 『昨夜、川で採取したガラス等を使って、これらのビーズを作ってみたのですが、如何でしょうか?付与魔石や宝石では無く、キラキラしているだけのガラスビーズですが、買い手が付くと思いますか?』


 最初は作れるかどうかではなく、売れるかどうかを見てもらう事にしました。売れない物を作ってとは頼めませんからね。それにガラスと言えば窓に使う以外では食器がメインで、余り装飾品の扱いは無かったように思うのですが、私が知らないだけで、既に在るのかもしれないのです。エルーシャ義姉様の方が詳しいと思っていますので、反応が気になります。


 『凄く小さくて綺麗だけど、コレがガラスなの?確かに此処の透明な処はガラスっぽいけど、こんなキラキラした輝きは初めて見たわ。それに、コッチの楕円形のはいろんな色が絡み合っていて、複雑な模様だけどとても綺麗。この一つだけを使ってペンダントにしても素敵。

 ホントに、宝石や魔石と違うの?』


 良い感触です。驚いてはいますが褒め言葉ばかりですね。嬉しいです。


 『川砂から採集した物が材料なの。石英や水晶がメインで、後は金属の粉も使ったわ。材料を集めるのは大変かもしれないけど、魔法を使わないでも作れるのよ。まぁ、錬金術が使えれば結構簡単だと思うけど。

 でね、コレをエルーシャ義姉様の工房で作ってみない?』


 一粒ずつ手に取って光にかざして眺めていたエルーシャ義姉様が、エッという顔で私を見ます。


 『うちは付与魔石を使った工房よ。一部アクセサリー化してはいるけれど、装飾品がメインでは無いわ。それに、趣味に上乗せした程度の工房なの。コレを作るとなったら、人がそんなにいない錬金術を扱う部門だけが忙しくなってしまうわ。と言っても、サルカンドに外注を出すだけなんだけど。

 それとね、いくらイルミナがしっかりしているとはいえ、イスラールとイミエールがまだ小さいから、今、工房を大きくするのは遠慮します。』


 あ。振られちゃいました。静かに座って話を聞いていたハリシエダ様がおもむろに、


 『私は錬金術の職人に当てが合ったら紹介してもらいたいと思って付いて来ました。

 モリーノ様が夕べ、ミスティーヌが珍しく魔法のゴリ押しをしないでビーズを作るって言うんだけど、コレってどういう事か分かる?って、私に聞きにいらしたのです。

ミスティーヌは妊婦だから、自分で動かずに、領内の為になる産業を考えているに違いないと私は思いました。今朝、一番でエルーシャさんの工房を訪ねたいと言って来たので、やっぱりと思ったのですよ。

 商業ギルドの方は、私からリーバスに話を通しますので、一緒に職人を探してくれませんか?』

 

 モリーノったら、ハリシエダ様に根回ししていたなんて!逆サプライズをされて驚いていましたが、よく考えると、ホントにモリーノが考えたのでしょうか?今までの行動から想像出来ません。


 『モリーノ様を通してアラン義父にも言われていたのだが、ミスティーヌは自分が頑張る事に無意識でやり過ぎるというか、人に頼るのが下手らしい。

 今回の工房も最初は、ミスティーヌが一から工房を立ち上げるつもりらしいと、モリーノ様から聞かされたので付いて来たのだ。

 私は自分の工房を立ち上げるのに、職人を集める苦労が一番大変だった。工房の設立は私でも出来る事が多いので、職人集めに力を貸して貰いたい。』


 『私も主人の伝手が有るので、冒険者には心当たりが多いのですが、錬金術師となると、この領では余り力になれそうも無いのです。折角の話ですが、リーバスさんの方が適任かと思います。』


 と話していると、ノックの音が聞こえたので、入室を促すと、イルミナが入って来ました。


 『お茶を持って来たのですが、お話が聞こえてしまって。盗み聞きするつもりでは無かったのです。入るタイミングを伺っていただけなの。』


 と俯いたままお茶をセットしてくれていたのですが、気にしないで大丈夫という私の言葉に安心したのか何時もの笑顔に戻り、


 『学校の先輩で良ければ、就職先を探している人達を紹介出来ますよ。』


 と、さり気なく言い放ちました。


 『お母さんは余り工房を大きくする気が無い。って言ってるから言えなかったけど、家に入りたい。って先輩は少なく無いのよ。』


 と笑ってます。青田買いは思い付きませんでしたね。余り高い賃金は約束出来ない内容ですし、職人として成立している人に頼むには、仕事は遊びじゃない。とお叱りを受けるかも?という事を考えていませんでしたから、渡りに船です。


 ハリシエダ様もイルミナの提言に納得されているようで、リーバスさんに話を通してから、立ち会いの元に何人か面接する事になりました。…と言っても、工房が決まる事が先なので、もし、卒業迄にもっと良い待遇で雇ってくれる所が見つかったら、そちらを優先しても良い。という条件付きです。

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