61 閑話
【カヴィヨン 3歳】
かーさまはめがみさまと仲良しで、キョーカイでよく話してリュんだ。僕もよく連れて行ってもらって、めがみさまとお話しすリュんだけど、なじぇかキョーカイを出ると、何を話したのか忘れちゃうんだ?でもめがみさまと一緒にいた事は覚えていリュよ。でもね…キョーカイを出リュと、めがみさまのお顔とか思い出せないんだ。それに、めがみさまと会って話をした事も、誰にも話せないんだ。
あ、フェンリリュばあやとフェンリリュじいじには話せリュんだっけ。それと、モリーノにも話せた。不思議だよね。ほかの人には話せないみたい。でも良いんだ。かーさまととーさまには話せリュから。僕がめがみさまとお話していリュのは嘘じゃ無いって分かってくれていリュから気にしない。
サリシンじいじは僕にムジュカシイ事を教えようとすリュから、あまり得意じゃ無い。フェンリリュばあやのよーに分かりやしゅく教えて欲しいんだけど…僕が困っていリュとかーさまが美味しいお菓子を持って助けに来てくれリュんだ。いーでしょ。
フェンリリュばあやの教えてくれるマホーはムジュカシイけど楽しくて、ついついイタズラに使いたくなってこまりゅんだよね〜でもね、5しゃいになリュまではダメなんだって。かーさまやとーさまがいない時もダメッてヤクショクしゃしぇらりぇた。
あ、オトートとイモートがきたの。クリュとレット。まだしゃべれないし、じぶんで動けないけど可愛いんだ。僕はおニーさまだからね、仲良くしてあげリュんだ。いっぱいあそんであげリュの。
【マジェンダ】
最初は王都とリストランテを行き来して仕事をしていたが、更に母がタルピナスに送られてからは、リストランテの実家に生活の場を戻す事になった。ハリシエダの嫡男である甥のカヴィヨンが生まれた辺りから、私は本格的に父の仕事を回されるようになった。数年前から公爵の名前を使って仕事はしていたが、昨年からは公爵位を正式に引き継いでしまった。
王都の家はまだ学校に通っている長男のユーリウスが残っているので、逆に父が管理する事になった。とは言え、父は孫三昧が出来て喜んでいる。しかし、母をタルピナスに送りつけた後の父の態度は如何な物だろうか。これまで母のやらかしに苦労して来た背中は見て来たので気持ちはわからんでもないが、でも、少し弾け過ぎではないか?
私は真面目な祖父母と父に育てられたせいか、仕事に対してかなり真面目に向き合っている。別に、それで良いと思ってはいるが、思ってはいるのだが!公爵家の仕事を全て引き継ぐ事になり、王宮の仕事を辞めたからと言って、これ幸いと押し付けられ過ぎではないか?ホントに父はこんなに仕事をしていたのか?
義妹のミスティーヌは、同じ義妹のロヴェニアと違って活発で、年が離れているせいもあってか、何かと気を遣わずに済み可愛い。元が平民のせいか、裏表が無く素直な処も良い。見た目も器量良しで良い処だらけなのだけど、才能が溢れ過ぎている処が欠点だ。言葉にすると変だが、妙な処で常識が無いと言うか、欲が無いのが問題なのだ。貴族が強欲と言う訳では無いし、平民が無欲とも聞かない。本当に稀有な存在だ。
元々ハリシエダの片想いが始まりで、無理強いに近い感じで押し切った結婚だったせいか、行き違いが生じて結婚式の日から10ヶ月近く姿を消してしまった。其の内の半年近くをダンジョンに籠っていたそうだ。
で、私が何を言いたいかと言うと、その半年程のツケ?を、父から丸投げされたのだ!
やはり可笑しくないか?父はユーリウスの世話をするぐらいに暇な筈だよな?私は王宮を辞職した物の、それを上回る量の公爵であった父の仕事を全部渡されて、溢れるほど仕事を抱えているのに、何故、新たに公爵外の仕事を増やされるのだ?
何時の間にか父に懐いたモリーノ様に転移で運ばれて、度々ヴェルムとリストランテ、それに王都と時間短縮で連れ回され、目が回りそうな日々を過ごす事になり、とうとう爆弾が落とされた。アイテム管理が面倒になったらしいミスティーヌから、ダンジョン由来のレアアイテムをごっそりと委託されてしまった。あれから何年経ったと思うんだ、まだこんなに残っているなんて…
『まぁ、確かに労力は提出しているな。父の代わりに私が事務作業はしているしね。でも、義妹の資産を譲られるのには、義兄として抵抗があるのだよ。』
とミスティーヌに吐露したら、
『迷惑料です。ほんの気持ちだけですが。』
と返ってきた。
『…‥…そうだね。父に振り回されているけれど、内容はミスティーヌの案件だものね。可愛い義妹のお願いだもの。私は頑張るしかないね。ハリシエダは伯爵だけど、私は公爵だ。身分で言えば私の上には王家しかいないのだし、何かあったら私が庇ってあげるよ。
大丈夫。レアアイテムばかりで、垂涎の的ばかりだから、欲しがる人は多いだろうし、群がる奴等は続出するだろうから、私が防波堤になってあげるよ。』
上目遣いで謝罪するミスティーヌと、可愛がっているハリシエダに頼まれては、尊敬されているお兄様は頑張るしかないね。
ただね、横でしたり顔で笑っている父には私の防波堤になってもらうからね。逃がさないよ。
【クリミアナ】
ミスティーヌの妊娠に過剰反応しているハリシエダ様を宥める為に、キュラスまで出向きました。カヴィヨンで経験したのだから、学習しても良い筈なのに。と思いながら妊婦に対する対応を教えていると、
『侍女長に依ると、今回は双子らしいから、カヴィヨンの時と同じでは無い。』
と、過剰反応を認めない発言。まぁ、ハリシエダ様らしいと言えばそれまでかも。でも、ミスティーヌが大変なので、そこは思い込みをミスティーヌに押し付けないように、無理矢理約束させたのだけど。
一応、ハリシエダ様を説得したので、ミスティーヌの元に行き、久し振りに語らう場を設けてもらったのです。カヴィヨンの話も聞きたいですし、せっかくキュラスまで来たのに、ハリシエダ様にお説教して終わりでは詰まらないですからね。
ミスティーヌの溜め込んでいるアイテムの話から、侍女長も加えてアクセサリーを作る事になりました。初めての挑戦の上に、ミスティーヌの持っているアイテムの高品質さに、少しドキドキしましたけど。結果としてとても楽しく有意義に過ごせました。
何より、ミスティーヌの付与魔法が凄すぎて…私、家宝を作ってしまったかもしれません!
魔石を幾つも使って作ったので、複数の付与をしてくれました。回復に結界。此処までは一般的です。でも少し大きめの魔石には状態異常解除を付与したのです。
内緒の話だそうですが、プリシラ王太子妃様の為に開発した付与魔法で、王家に渡した以外では、コレだけだそうです。
エェーッ!
コレって国宝では無いですか?
後から合流なさったサリシン義父様に速攻で相談しました。ミスティーヌの『何時もの』やらかしに慣れているサリシン義父様も頭を抱えていらっしゃいます。それなのに、ミスティーヌったら、
『わかりました。コレは此処だけの秘密という事で、状態異常解除なんて付与は忘れてしまいましょう。回復と結界の掛かっているアクセサリーなんて、最近は珍しく無くなりましたし、付与が掛かっている事はバレても、なんの付与か迄は気付かれないと思うのですよ。
だって、状態異常解除なんて付与は今までに出回っていないのですから。
この場の皆様が黙って忘れて下されば問題有りません。大丈夫です。』
なんて、ホニャラ〜と笑って済ましてしまうのです。ハァ。私も忘れてしまいましょう。
【キエラン】
ミスティーヌ様のアイテムが放出されたという事で、ヴェルムに呼び出されました。マジェンダ公爵様に手渡された凄い数のリストを目にして、改めてSランカーの凄まじさを思い知りました。半年間もソロでダンジョンに篭れるという事も驚きですが、集められたアイテム数が普通ではありません。何人でパーティーを組んで集めたのですか?と言いたい程の種類と量が有りました。
マジェンダ公爵様が主導なさってリストの担当を分けましたが、リーバスより私の方に高価なアイテムが多く回されています。これらを売る権利を任されるなんて、ギルマス冥利に尽きます。ミスティーヌ様に嫌われなくて良かったとしみじみ感謝しました。
マジェンダ公爵様からお聞きしましたが、王都の冒険者ギルドのギルマスは最初の出会いで勘違いしてしまい嫌われたそうです。ミスティーヌ様は優しいけれど、利用される事を嫌う方なのです。最初のおねだりに成功したギルマスは、それに味をしめてしまった事が間違いだったと気付かずに来てしまったので、今だにミスティーヌ様に嫌われています。しかも、当時、欲を出したせいでサルカンドの両ギルドから支持を外されてしまったそうで、特に、ミスティーヌ様の父上がギルマスをしている冒険者ギルドとの関係は最低限の扱いしかされていないとか。
商業ギルドも似たような対応を取ったらしく、ミスティーヌ様の感情的に近寄りたく無いらしいのです。そのせいで、私は困った人達に絡まれる事が増えてしまった。特に今回のリストの話が漏れたせいだ。
サルカンドのアランギルマスに相談して、オークションを活用して売り先を探したのだが、其処で目を付けられた。侮られたものだ。と悔しくなったが、良い勉強になった。と割り切る事にした。
私に縋って来たのは遠縁の更に先の、他領の職人だ。素直に商業ギルドを通せばいい物をと思ったら、そのギルドでも過去に行商人がミスティーヌ様と問題を起こしていたらしい。ギルマスが直接関わっていた訳では無いそうだが、根が小心者の様で、敢えて今回の対応から逃げたらしい。細過ぎる縁を辿って来た割には上から目線な物言いをする職人だった。
ミスティーヌ様に断られたが、対応策としてサルカンドのアランギルマスを紹介しておいた。今や冒険者といえばサルカンド。と言われる位に、力の有る冒険者が揃っているから、魔獣狩りを含む採集依頼はサルカンドに出すのが一番確かだからだ。
なんかなぁ。王都のギルドの立ち位置って、見直しが必要な気がして来ましたね。
【リュムレー子爵】
私の母がリストランテ公爵家の末娘だった繋がりで、一人娘の婿にサルカンド伯爵家のガスパール様が入ってくれたのだが、あれ以来、我が家の流れが変わった様だ。
マジェンダ様の肝入りで、プルメリア国から職人を引き抜いて、防具工房を立ち上げられた。材料のファイアタートルの甲羅も超レアサイズを回して頂けた上に、アレを下回る物の、現在では滅多に手に入れられないサイズの甲羅を合計17個迄はキープしてもらっている。
防具はプルメリア国では人気の商品で、作れば必ず売れると引き抜いた職人から太鼓判を押された。キープしてもらっている甲羅は売上げが入ったら、順次売って貰う契約になっている。しかも、甲羅を入れるマジックバッグまで貸し出してもらえるのだ。マジックバッグの有無で掛かる経費が確実に変わるし、それはストレートに利益に響くのだ。
アイテムとマジックバッグの持ち主はサルカンド出身のヴェルム伯爵夫人で、サルカンド伯爵家の次男だったガスパール様の同級生なのだそうだ。マジェンダ様が防具工房を立ち上げる際に我が領を選んで下さったのは、ガスパール様に対するお祝いの一環らしいと聞き、本当に感謝している所だ。
最初は工房をタルピナスに置く予定だったそうだが、ナイジェル様が不平不満を訴えて取り消された為に我が領が選ばれたそうだが、順番なんて関係無い。我が領が選ばれて、現在、工房の運営が行われている。という事が大切なのだ。
正直な話。目立った産業も無いリュムレーは、王都に隣接するジャマン男爵領よりも田舎びている。と下に見られる事もあったので、今回の工房設立は謂わば悲願達成的な喜びもあって、手放しで喜んでいる状態だったりするのだが、婿のガスパール様が、
『少し遠いけれど、グローリーのダンジョンで活躍する冒険者を育てる事を始めないといけませんね。何時迄もミスティーヌ様に頼る政策では先行きが不安です。
リュムレーの冒険者ギルドのギルマスを呼んで話をするべきだと思いますが、如何でしょうか?』
と将来を見据えた提言をして来たではないか!婿で有るガスパール様の代で功績を挙げておかないと、次代に子爵位が渡せないので、コレは是非ともガスパール様の名前で施策を行うようにしましょう。
私の娘、マリーヌはとても幸運に恵まれている様だ。我が家の将来に強く輝く光を感じたのだった。




