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59 お誕生会に向けて。心を込めた贈り物

 クリスティとジャレットの1歳の誕生日を控えて、ハリシエダ様はカヴィヨンと何やら相談しています。私が平民から公爵家に縁付いたせいですが、カヴィヨンの誕生会は何処まで外部を呼んで良いか悩むので、家族のみでひっそりとでも華やかに祝っています。何時も祝われる立場だったカヴィヨンが主体で、弟妹の初めてのお誕生祝いしたい様なのです。流石、おにーさまですね。(笑)


 『あのね、クーとレットにね、お祝いのケーキを作ってあげたいです。かーさまの作るチョコケーキが美味しいので、ボクといっしょに作って下さい!』


 女神様に献上する為に作ったチョコケーキですが、一つだけカヴィヨン用に甘さたっぷりに作って、一口サイズを味見に分けてあげました。あれ以来、事ある毎におねだりするので、カヴィヨンのご褒美は甘いチョコケーキが定番になっていますが、ご褒美だから頻繁にはあげないようにしているのですよ。


 自分の一番のお気に入りであるチョコケーキを手作りの贈り物に推薦して来ましたが、カカオは刺激が強いので、やっと1歳になる二人に食べさせるには少し考えてしまいます。それに初めてお菓子作りをするカヴィヨンが相手なら、簡単に作れるクッキーの方が私も教え易いのですよね〜


 『カヴィヨン、カカオは刺激が強いから、カヴィヨンだって少ししか食べられないでしょう?まだ小さいクリスティとジャレットには早いと思うわ。それにケーキはフォークを使わないといけないから、自分だけでは上手に食べられないと思うの。でも、クッキーなら自分の指で摘めて食べ易いから、二人へのお祝いにはクッキーを贈ったらどうかしら?』


 私の提案に、カヴィヨンの本音としてチョコケーキを自分が食べたかったらしく、私からチョコケーキの許可が出なかった事に拗ねてしまいましたが、『今回は特別にチョコを混ぜたクッキーも作ろうかな?』と呟いた処、あっさりと機嫌は直りました。やっぱりチョコは偉大ですね(笑)


 さて、料理長に材料を用意してもらっている内に、エプロンをして、クッキーを作る支度をしましょう。カヴィヨンは新しいエプロンをフェンリル母様に見せびらかしていますね。厨房に着くと調理台の所にはカヴィヨン用の踏み台も設置されて、材料や器具も総て揃っているようです。


 厨房に着くより早く、料理長に促されて手を綺麗に洗ったカヴィヨンは、早速踏み台に乗り、既に色々と準備された調理台を見渡していますね。


 『粉は量って振るってあります。2種類ありまして、此方にはココアを混ぜた物になります。砕いたチョコは此方に、砂糖は此方ですね。バターは室温に戻してあります。玉子の殻を割るにはコツがあり、初めてでは見習いでも難しいので、此方に既に割った物を用意しておきました。』


 と料理長が用意してある食材の説明を始めました。カヴィヨンは料理長と一緒にチョコクッキーを作る予定です。本当はプレーンな基本から教えたかったのですが、チョコケーキを我慢したのだから、と譲らないのです(笑) まぁ、プレーンの生地にチョコチップを混ぜるだけと、ココアを使った2色クッキーだけだから…と料理長が引き受けてくれました。砕いたチョコはカヴィヨンの手の届かない処に置かれてます。


 私は横で基本となるプレーンの生地を大量に作ります。それにいろいろとプラスした生地…紅茶の茶葉を混ぜた生地、ココアパウダーを混ぜた生地、果汁の入った生地、小さく刻んだドライフルーツを混ぜた生地、など何種類か作る予定です。また異なる生地を作って組み合わせ、いろんなクッキーを作る予定です。


 カヴィヨンも料理長にボールを押さえてもらって元気よく生地を捏ねてます。多少粉まみれになるのは想定の範囲内です。疲れが見えると料理長が直ぐに交代してくれるので、カヴィヨンはご機嫌で粉を捏ねています。料理長も一生懸命なカヴィヨンを微笑ましく補助していますし、楽しいが一番です。


 カヴィヨンが抜き型を使って、楽しくチョコクッキーを量産している横で、私も細長く丸めた生地を重ね合わせてカットしたり、大小の抜き型を利用して二色のクッキーにしたり、いろんな種類のクッキーを作ります。オーブンはとても熱く、火傷の心配もあるので、焼くのは料理長に一任です。


 オーブンから良い香りが漂ってきます。沢山のクッキーが焼けました。美味しそうな香りの誘惑に、厨房にいた人のみ味見をしましたが、本当に美味しく出来ました。カヴィヨンを初め、皆さんもっと食べたそうですが、残りはパーティで出します。香りに釣られてモリーノがやって来ましたが、


 『モリーノはお手伝いしなかったのだから、クッキーを食べるけんりはありませんよ。』


 と、ドヤ顔のカヴィヨンに言われて泣きそうです。料理長が見兼ねて、自分のお皿に残っていたクッキーを差し出しましたが、それを自分もまだ食べたいカヴィヨンに見つめられています。私は笑いながら料理長のお皿にクッキーを足して、残りは当然、私のインベントリにしまいました。…二人に甘い料理長にはクッキーを預けられませんね(笑)


 飲み物と一緒にクッキーを食べて、お腹いっぱいになった二人は、フェンリル母様に連れられて勉強しに行きました。でも、眠そうなカヴィヨンはお昼寝タイムの方が良さそうですね。せっかくですので、ハリシエダ様にもカヴィヨンの作ったクッキーをお裾分けして上げましょう。料理長が補助してくれたお陰で、とても良く出来ているので、ハリシエダ様も絶賛してくれました。



 今日は二人の1歳のお誕生日です。お誕生会は家族のみで行いますが、贈り物は沢山届いています。カヴィヨンの時はリストランテ義父様が乱入しましたが、何やら忙しいそうで、今回はいらっしゃいませんでした。机の上に積み重なった贈り物を見たカヴィヨンが、


 『ボクの時よりも多いのです。』


 と贈り物の山に驚きながら呟いてます。記憶に残って無いと思うのですが、感覚的に多いと思えたのでしょう。でも贈って来る人は同じですから、一人分の数も同じなのですけどね。


 『カヴィヨン。カヴィヨンのお誕生日に贈り物をもらうのは、カヴィヨン一人だけだよね。でも、今日のお誕生会は、クリスティとジャレットの二人のお祝いだよ。だから、贈り物も二人分有るんだ。こんなに有るけど、クリスティとジャレットの二人にそれぞれ分けてみたら、どうだろうか?』


 ハリシエダ様がカヴィヨンを促して、クリスティとジャレットに贈り物を渡しています。二人とも大好きなおニーさまから贈り物を渡されてニコニコと受け取ってます。フェンリル夫妻に手伝ってもらって、二人は渡された贈り物の包みを一つずつ開けてはみんなに見せてくれます。


 私からは、布で作った柔らかい剣をクリスティに、柔らかな糸で編んだ編みぐるみをジャレットに贈りました。実は、剣は何本か作ってあります。クリスティが一人で振り回しても面白くないでしょ?だから、贈り物の山の一番下に、『カヴィヨンへ』と大きく書いて1本隠してあります。


 『トーさま!これ、ボクの名前が書いてあります。今日はボクのお誕生日じゃ無いけど、これはボクがもらっても良いのですか?』


 二人に贈り物を配り終えたカヴィヨンが、私の隠しておいた包みに気づいたみたいです。私が楽しげに何本も作っているのを知っているハリシエダ様は、ニコニコ顔で、


 『クリスティもせっかく剣をもらったのだから、剣で遊びたいんじゃないかな?剣は一人では遊べないからね。仲良く遊んでくれるカヴィヨンおニーさまにも必要なのだと思うよ。』


 と、私にウィンクします。剣と編みぐるみには鈴が仕込んであります。編みぐるみは振るだけでリンリンと鈴が鳴るのですが、剣は軽い衝撃が当たらないと鈴は鳴らないように工夫してあります。グルグル振り回すより、コンッとぶつけた方が澄んだ良い音がします。クリスティが振り回せるように軽く作ってありますし、柔らかい素材ですから当たっても怪我はしませんし、安全対策も考えて作ってあります。


 早速、ハリシエダ様が見守る中、カヴィヨンとクリスティが、涼やかな鈴の音色と共に遊び始めました。ジャレットは私の膝の上で編みぐるみを抱えてご満悦です。普段からお淑やかなジャレットは編みぐるみを振り回したりしませんが、何かの拍子に鳴った音に気づいて不思議そうに見つめています。



 ジャレットが喜んだので、暇を見つけては編みぐるみを増やしています。小さい物には基本的に鈴を入れてありますが、そんなに沢山は鈴を作っていなかったので鳴らない物もあります。侍女達からも請われて編み方を教えた処、話を聞き付けたリーバスさんが職人さんを連れて来ました。服飾のレース編みの職人の見習いだそうです。


 ホールの隅に私や侍女達が編んだ編みぐるみが飾ってあるのを見て、レース程細かい編み方でないので、練習に丁度良いのでは無いだろうか。と思ったそうです。実は、編みぐるみを見つけた方から、何処で売っているのか問い合わせも有ったそうで、こんな事を思い付くのは領主夫人しか居ない。と思って邸に来てみたら、案の定飾ってあった。と言われました。


 『ミスティーヌ様。ホウ・レン・ソウは大切です。と、約束しましたよね?』


 どうしようかな〜という表情でリーバスさんが私を見つめます。


 『だって、アレはジャレットの為に編んだ物で、売り物を考えた訳ではありませんよ?自分の子供へのプレゼントに作っただけですから、リーバスさんに説明なんて思いもしませんでしたわ。

 柔らかな太い糸を編んで綿を詰めただけのおもちゃです。ほら、リーバスさんに依頼した糸と綿で作った物ですから、ある意味、連絡済み?』


 正直なところリーバスさんが押し掛けてきた意味が理解出来ない処もあります。


 『公邸に飾ってあっても不特定多数の目に付かなければ問題無かったのですよ。

 流石に、たまたま、目にした子供が『伯爵、アレ下さい。』って直接おねだりは出来ませんでしょう?

 そこで、その子達の親や祖父母達から、『ヴェルム伯爵家ではアレを何処で購入したのか?』とギルドに質問が殺到したのです。』


 まぁ、簡単と言えば簡単ですから、出し惜しみせずに教えました。編みぐるみと言っても、子供が遊ぶ目的の他にも、飾る編みぐるみも作れます。そこでリーバスさんには、飾るタイプの中の詰め物についてアイデアを渡して、いろんなヴァージョンを作ってもらう事にしました。目的はホールに飾る芳香剤ですね。ポプリを詰めた物をホールに飾ると、良い香りがお出迎えしてくれる訳です。


 リーバスさんとサイトバル兄様が相談して、ポプリに使うお花は、お花屋さんを巻き込んで、少し元気の無くなった花で香りの良い物の再利用をする事で価格を下げる事になりました。低ランクの冒険者に依頼するより確実ですし、品質の安定化を考えたそうです。


 私が詰めたポプリはダンジョン産の香り高い物ですから、サイトバル兄様に相談したのですが、『貴族向けに売る訳では無いから。』というリーバスさんの考えだそうです。…貴族向けに特注品の予約が来たら、サイトバル兄様の出番のようです。


 鈴を作ってくれた鍛冶屋さんは、担当してくれた見習いさんが大忙しだそうです。最初は子供のおもちゃと笑っていた兄弟子さんが巻き込まれて、大量生産中だとか。立場が逆転しちゃったねぇ(笑)と揶揄われながら手伝ってくれているそうです。因みに見習いさんは鍛冶屋さんの一人娘で、兄弟子さんは恋人候補?で仲良しさんだそうです。


 後、半年ぐらいは鈴に掛かり切りになりそうだ。とリーバスさんから連絡がありました。他の鍛冶屋さんにも話を振るのかと思っていたのですが、剣や槍などの武器や、鍬や鋤のような農具、鍋や包丁などの調理器具といったような物は作る人も多いそうですが、鈴のような繊細な作業に向いている人は少ないし、見習いさんもやりたがらないそうで、二人の専売特許になっているのが現状です。と苦笑していました。


 私の考えでは、この先の需要は減らないと思うのですが。今はヴェルムというか、キュラスで発信しただけですが、マリアナ母様が知ったらサルカンドで広まるでしょうし、キエランさんが知ればリストランテも視野に入ると思うのですよ。リーバスさんが黙っているとは思えません。


 まぁ、それぞれの領地の鍛冶屋が喜ぶでしょうから、私はリーバスに丸投げで良いでしょう。どちらかと言うと、彼女の手が空いたら手芸用の材料をお願いしたいのです。鈴はその為の前振りみたいな物だったのですが、私としては思わぬ波紋に苦笑しています。

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