51 日常のあれこれから〜 聖獣様 ファイアタートル etc‥
ずっとパール様の洞窟に遊びに行っていた?モリーノが久し振りに帰って来て、パール様の話を沢山教えてくれました。元々、パール様の洞窟に遊びに行く度にお料理やおやつは多めに渡していましたが、最近、それとは別にいろいろとおねだりをされたなぁ〜と思っていましたが、ナント!パール様は伴侶を探しに旅に出たので、暫く洞窟を留守にするそうです。暫くとは言っても、私が生きている間に番を見つけられたら良いかも〜という気の長い話しだと聞いて、聖獣様との寿命の違いを切々と感じました。
『はッ?もしかして、私はもうパール様に会う機会は無くなった。という事ですか?』
慌ててモリーノに問いただすと、
『モリーノとはまた会えるから大丈夫。と言ってたから、大丈夫だよ〜』
とノホホンとした返事が来て、私は脱力してしまいました。モリーノは聖獣だから私とは寿命の長さが違います!思わずフェンリルご夫妻を捕まえて愚痴を零すと、二人して見つめ合った挙句、
『モリーノはまだ70歳にも満たない。聖獣としては赤子の様なものだ。』
と慰め?られました。今迄掛けられた迷惑をフツフツと思い出しながら、
『相対的な成長は兎も角、それだけ長生きしているのにいろいろとやらかすのは問題なのでは?』
と思って訴えると、それに対しては、
『でもそれは、人間と関わっているから起こる問題であって、聖獣としては問題無い。』
と返されてしまい、不承不承納得せざるを得ませんでしたよ。守護して頂く事は私が願った訳では有りませんけれど、それによって思わぬ問題が生じても、相手は聖獣様ですから仕方が無いと諦めました。
フェンリル母様は、私が余りにも嘆いたせいか?ランティス様から手が離れた為か?モリーノの教育に目覚めたむきが有りますので、カヴィヨン共々目を掛けて頂いている状態です。…という事は、歳は違っても、二人は同レベルと思って見るべきなのかな?聖獣は70代でも幼児(笑)
そう言えば、最近、カヴィヨンを連れて教会に行き、女神様と話していた時に、モリーノの話しにも及んだのですが、女神様曰く、
『モリーノも群れからはぐれて、両親とも死に別れて、この国に辿り着くまで、一人で沢山の苦労をしたのですよ。成長に必要な魔力不足の件はどうしようも無くて、取り敢えず白蛇に預けていたのですが、白蛇は教え導く厳しさに欠けてしまっていました。最初の傷だらけのモリーノに会ってしまったのが不味かったのでしょうね。母性本能が過剰に働いて甘やかし過ぎてしまったのですよ。
因みにあの湖でミスティーヌと巡り合う様にセッティングしたのは私です。聖獣なのに魔力不足でいつまで経っても成長しないので、なんとかしなくてはならないと私も苦慮しました。』
と、反省?されてましたが、お陰で私が苦労してます。もぅっ!と苦笑いをしてしまいました。
『キュラスの邸に居る時はフェンリル夫妻の近くに居る事が多いので、モリーノも良い方向に成長すると思いますよ。フェンリル母様が教育に目覚めてますからね。カヴィヨンと同じ扱いをされてます。(笑)
フェンリル夫妻はスパルタ主義ですからね。ほら、ランティス様はモリーノと同じ位だそうですが、とてもしっかりとしていて、王太子様を初めとする王家を護っていますからね。』
と、現状を伝えて安心?して頂きました。魔力不足は私が補っているみたいですが、聖獣教育は私では無理ですからね。フェンリル母様に感謝です。
『ミスティーヌと守護関係が切れた後の話になると思いますが、その時にモリーノが成熟しているなら群れも認めてくれるでしょう。
…普通は保護者が居なくなれば、群れが育てるものなのですが、幻獣界に引き篭もって、誰も引き取りに現れなかったのですよ。…きっとモリーノの両親にも何か問題が有ったのでしょうね。』
と聞き、群れからはぐれた事を知りました。…以前聞いた時ははぐらかされた気がしましたが、まぁ、私の想像に近い答えでしたね。因みにモリーノが伴侶を探すのは私が他界した後になるだろうとの事です。互いに成熟しないと番と判らないそうなので、幼いモリーノにはまだまだ先の話しのようです。
ガウディ王太子様を守護しているランティス様は王家の守護では無いので、ガウディ王太子様が身罷った後は如何なるか分かりません。きっと数世代を見守れる位の寿命は有る筈なので、末永く王家を見守って頂ける様に、ガウディ王太子様に頑張って頂いて、良い関係を保って下さい。と願うしかありませんね。
因みに、モリーノは、
『ミスティーヌが居なくなったら、カヴィヨン次第かなぁ?その時にならないと分からないや。』
と言ってくれましたが、元を糺せば、たくさんの聖獣様方が集まったのって、私の作るお料理目当てだったのですよね。それも有ってか、フェンリル夫妻は私と共に消えると表明しておりますし。最近では定期的に聖域に帰って、統治なさっています。
世間には隠して?いますが、一人の人間に聖獣様方がこんなに多く集まる事が珍しいのであって、幸運なだけですからね。そこは履き違えない様にしなくては!と、女神様にも揶揄われました。
大丈夫です。こんなに気軽に女神様とお話し出来る事の方が幸運だと理解しておりますし、女神様も聖獣様方も秘匿にしております。…ハリシエダ様やカヴィヨンに至っては、女神様との語らいがあった事なんて、夢の中の事だと信じています。たぶん、女神様が何かしたのでしょうね。(笑)
新しいマタニティドレスのデザインの為に、リーバスさんから紹介してもらった仕立て屋さん達と打ち合わせをしています。ノックが聞こえたのでドアを開けてもらうと、サリシン義父様に連れられた男性とハリシエダ様が入って来ました。
『仕事中済まないが、時間を取ってもらえないか?』
とサリシン義父様が言って来ました。丁度、使う布地の話しをしている処だったので、仮縫いは仕立て屋さんのご主人に一任という事で、話しを終わりにしました。仕立て屋さん達が部屋を出て行くと、お茶を入れ直してもらい、話しの場を設けました。
『此方はリストランテで、商業ギルドのギルマスをしている、キエランだ。リーバスがリストランテにいた頃の上司だな。今日はファイアタートルの甲羅の件で出向いてもらった。』
と、サリシン義父様が紹介してくれました。今迄、ハリシエダ様を含めた3人で相談していたそうです。と言うのも、やはり、ナイジェル義兄様は私の言い方が気に入らなかった様で、タルピナスの商業ギルドに丸投げしたそうです。ですが、15Mも有る超巨大な甲羅はタルピナスのギルマスの手に余ったそうで、リストランテのギルマスに泣きついて来たのだとか。
『正直な話し、タルピナスの様な地方のギルドでは買い取れる程の資金力が無いのですよ。と言うより、お金はどうにかなったとしても、買い取った甲羅を活かす工房に伝手が無いのです。あそこは活動が緩慢ですからね。人を育てるゆとりが無い。』
アレ?愚痴になっていませんか?どう返事をすれば良いか悩んでハリシエダ様を見ると、
『前回、ミスティーヌが言いましたが、無理して買い取って頂かなくても大丈夫ですよ。リーバスなら王都でオークションに掛けるなり、なんなりして処理してくれると思います。
だいたい、ミスティーヌが善意で自分の持っているアイテムの情報を出したのに、それを悪意で返すなんて。実の兄だから呆れるだけで我慢してますけど、正直、有り得ない話しだと思いませんか?』
ア、ハハハ。愚痴が返って来た。というか、ハリシエダ様は静かに怒ってますね。つまり、そう言う結論だったのでしょうね。サリシン義父様にも頼まれたのでファイアタートルの甲羅は売りますが、3人で相談した結果、タルピナスは交渉の席から外されたという事なのでしょう。
『私は何とも言えませんが、ファイアタートルの甲羅はアラン父様も引き取りを嫌がった程のアイテムなので、ナイジェル義兄様にも嫌がらせと取られたのかもしれませんね。
一応、貴重なアイテムでは有るので、キエランさんが活用されるのなら、私はサリシン義父様に預けますよ。リストランテ領の為に使って下さいな。』
と、ファイアタートルの甲羅を入れたマジックバッグを取り出しました。お腹も膨れて来たのにタルピナスまで馬車に揺られるなんてしたく無いので、誰かに託せる様に予め用意はして置いたのです。
『甲羅が入ってるという事は、容量は?まさか時間停止は掛ってないよね?』
マジックバッグを渡されたサリシン義父様が呆れた様に聞いて来ます。まったく、常識無しか何かのように言いますね!
『以前、暇で作ってしまって、売りに出せないサイズの物です。一応、時間経験有りです。甲羅に新鮮さは関係しないので、時間の経過無しにはしていません。
何の装飾も施していないので見栄えはしませんが、手数料代わりにお義父様にプレゼント致しますよ?』
笑って申し出ると、ハリシエダ様まで苦笑してます。何故かしら?
『表面の装飾なんて後からでも足せるから問題無い!問題は容量だ!ミスティーヌは何度言っても分からないけど、それだけの容量を付与するのにどれだけの魔力が掛かるか!
ミスティーヌは一度、他の付与魔術師の実態を知って、自分の非常識さを認識すべきだ!』
アレェ?サリシン義父様からお叱りを受けてしまいました。あ、何かから戻って来たキエランさんが、
『領主様。あの、冗談だと思ってお伺いしておりましたお話しは本当だったのですね。単なる?Sランクの実力の上に、他の追随を許さない付与魔術の才能。ハリシエダ様をはじめ、リストランテ領をも敵に回す馬鹿が出ない事を祈りましょう。…相手にすらされずに沈み行く未来しか想像出来ません。』
と、真剣にサリシン義父様に話し掛けてます。ウンウンと頷きながらハリシエダ様が、
『私も勘違いからミスティーヌに見放されて、死んだ様になった事が有りましたよ。ミスティーヌは一緒に居てくれるだけでも嬉しいのに、更に、私欲が無くてね、私がして上げられる事が本当に無くて困ってしまうのですよ。』
と、しみじみと話し出すでは無いですか!変な空気を変えようと、
『済みません。甲羅の話しに戻して頂いても?
結局、サリシン義父様に預けるという事で宜しいでしょうか?そろそろカヴィヨンのおやつの時間ですし、皆様もご一緒にお茶でも如何ですか?』
と、カヴィヨン大好きお祖父ちゃまに話しを振ると、さっさと話しをまとめてお茶の用意をしてある四阿へ向かう事になりました。
キエランさんは、折角キュラスに来たので、リーバスさんと話がしたいと言って、ギルドに向かわれました。カヴィヨンはフェンリル母様の教育がもう少し残っているそうなので、先に3人で四阿に入り腰を下ろすと、
『今回の件で、アネトールの扱いが決まった。息子ばかり3人も産んでくれた訳だし、政略結婚とは言えその責務は果たしているので、辺境伯の元に返す迄はしない。が、今後は終生、タルピナス預かりとする事にした。貴族籍上は公爵夫人のままだが、私がマジェンダに公爵位を譲渡する事により、権限は全て取り上げた。
もっとも、公爵夫人としての責務は果たして無いから、今まで権限のみを使えたのが間違いだったのだがな。私もあれだけ慕われると悪い気はしなかったから見逃していたのだが、ここ数年の、爵位を得てからのハリシエダや、今までのミスティーヌに対する態度を見ていると、自分の間違いにも気付けた。
私は貴族の頂点に立って、その立場でしか世界を知らなかったからな。貴族の地位を取り払ったその者の本質を見誤っていた様だ。
伯爵位を授かる、平民だったミスティーヌの存在は本当に稀有な物だね。』
と、しみじみとサリシン義父様が語り始めました。ハリシエダ様も、
『そうですね。私もミスティーヌと縁付くまでは母上に構ってもらえませんでしたから、急に母上からチヤホヤされてしまって浮かれました。それがあの勘違いにも繋がった気がします。
マジェンダ兄様に諭されて愕然としたのが昨日の様に覚えてますよ。私の気遣いは独りよがりで、ミスティーヌにとって迷惑なだけだった。と認識した時は死んだと思いましたね。もう、このままミスティーヌに会えないのか。と絶望しました。
その後、マジェンダ兄様に助けてもらいながら頑張っていた時だって、母上には勝手に浮気相手を送り込まれたり…良い迷惑でした!
そうですね、私達兄弟の中ではたぶん、ナイジェル兄様だけが母上を守る義務が有ると思いますよ。母上に育てられていない私とマジェンダ兄様では、母上と考えが合わないから無理だと思います。』
そうですね。私も『関わりたく無い。』と明言して戻りましたから、今更押し付けられたくは有りませんねぇ〜。と明後日の方に目を反らしてしまいました。
3人して微妙な雰囲気になってしまった処に、モリーノと一緒に転移してカヴィヨンが来ました。驚いた私が顰めっ面で、
『モリーノ。カヴィヨン。侍女長に転移のお許しは受けてますか?』
と聞くと、カヴィヨンは首を傾げてモリーノを見ています。モリーノがアッという顔をしている内に、サリシン義父様に呼ばれてカヴィヨンはさっさと逃げてしまいました。そこに、スッとフェンリル母様が現れて、此方も私の様な般若顔で、
『私は許可していません。モリーノ、カヴィヨン様はまだお小さいので、転移はしない様にと普段から注意してますよね。まだ覚えられませんか?』
うわぁ、フェンリル母様が静かに怒ってます。私もとばっちりを食いたく無いので、フェンリル母様からワゴンを受け取ると、さっさとお茶の支度に逃げました。(笑)




