48 井の中の蛙は虎の威を借りていた事に気づかない
リーバスさんの情報力の凄まじさに怯えました‼︎
…最初の情報源がマジェンダ義兄様だと知りホッとしたものの、商業ギルドの繋がりは冒険者ギルドの比ではありませんでしたよ。10日も経たない内に良くもまぁ話しを聞きつけられました!
『お祝いの席で、何でも王都の老舗を名乗る平民の馬鹿から言い掛かりをつけられたそうですね。取り敢えず、当ギルドからも王都の商業ギルドに、伯爵夫人に紹介もされないのに話し掛けた上に、一方的に威張り散らすのが王都の商人の考えですか?と注意勧告をしておきました。
たぶん、王都のギルマスから謝罪が来るとは思いますが、来なかった時の対応なども含め、他にもお考えになっている事がお有りでしたら協力は厭いませんよ。』
と、ハリシエダ様に提案されています。リーバスさんにとって、私を嘲る事で領内経済の繁栄を停滞させるのは最悪の所業だそうで、絶対に許せない事なのだそうです。ましてやそれが、グランダイン侯爵家を後ろ盾に威張っている商家と判明したので、ハリシエダ様と二人で『経済戦争だ!』と息巻いています。ホント、あの侯爵家の関係者は碌な事をしませんね。
『いや、今回は王都の商会長が仕出かした事ですから、キュラスを始めとしたヴェルムの商業ギルドに影響はないですよ?私も自分の領地を繁栄させたいですから。しかも、リーバスさんもサイトバル兄様も私の味方なのですから、助力は惜しみませんよ!
どちらかと言ったら、ヴェルムとリストランテ、それにサルカンドの三領だけで地域限定販売商品を売り出す方向で協力を考えていますから。』
リーバスさんの怒りに驚いてしまい、影響されて一緒に怒っているいるハリシエダ様の隣りで、思わずリーバスさんにご機嫌伺いをしちゃいましたよ!
リーバスさんが怒っている原因の一つでも有る、『私の機嫌を損ねた期間のキュラスの経営実績』も調べたそうで、『バックスさんにはこの損失の穴埋めをさせてから追い出せばよかった‼︎』と悔しそうに呟いてます。リーバスさんが改革したギルドの話しを聞くに、真面目に仕事をしない人材の吹き溜りが、当時のキュラスの商業ギルドだったのでしょうか?
うーん、此処まで憤るなんて、どれだけの膿が溜まっていたのでしょうね。… リーバスさんって最初は穏やかなイメージの方でしたのに?コレが本性だったら少し怖いかもと引いてしまいました。
そう言えばバックスって、最初はアネトール義母様寄りの考えでキュラスの商業ギルドを運営していたのですよね?だから領主夫人にも関わらず、平民出身の私だから平気で無視したのです。男爵家の出身とは言え、バックスは平民の筈なんですが。
リストランテ領時代は小さな町でしか無かったかもしれませんが、キュラス子爵領としてまとめた時に領都に選んだのですから、付近の村などをまとめる位置にはあった筈です。それなのに… キュラスには大きな商家が有りません。バックスが家柄だけで能力を持って無かったのなら、それを見逃したハリシエダ様にも責任があるような気がして来ましたね…でも、ギルドは基本的に独立組織ですから、いくら領主の意向が有るとは言え、やはり、王都のギルドの責任も有りますよね?
私が黙って考え込んでいると、実は…とリーバスさんが話し出しました。
『王都の商業ギルドのギルマスに、今回のやらかした商会長の話しをした時に名前を聞かれたので、ブルタロス商会と名乗っていたと伝えたのですが、その時にしみじみと、『ハザル商会でなくて良かった。』と言われたのです。
ハザル商会は老舗ではあるものの、今では本店は王都に有るものの、支店はラルテ男爵領にあるだけらしいのです。商会長のハザル氏は遣り手で一時期は商会を大きくしたらしいのですが、跡継ぎに恵まれず、一つだけ残った支店も使用人に任せているそうです。
と言うのも、ハザル商会長の息子は3人いたそうですが、一番優秀な三男を次男が殺したそうで、今は長男しか残ってないそうです。しかも、出来が良くないとハザル商会長が愚痴を零していると、ギルマスが苦笑していました。せめて孫がキチンと育っていたら良かったのでしょうが、父親の背中を見て育ったので自分に甘いらしいです。どうせなら祖父の背を見ていれば良かったのにね。』
え⁉︎ それって…?王都の老舗。と聞いて、ふと、グリード父様の実家を思い出してました。優しかったお祖母様からの手紙を読んだラメール母様の考えでは、グリード父様に厳しかったお祖父様も良い方だそうです。
ラメール母様の考えでは、上の二人の教育を間違えたから、グリード父様を厳しく育てたのだろうし、名ばかりの貴族でしかなかったラメール母様が将来困らない様に、お祖父様が悪者になって仕事を仕込んでくれたのだそうです。
でもお祖父様が望んだように育たなかった二人の伯父は…次男の伯父は私の両親を殺害した罪人として裁かれていますし、嫡男の伯父がたぶん跡をとっている筈ですが、支店を任されていないと言う事は、お祖父様と本店で働いているのでしょうが、今どうしているでしょうか?私の記憶に残っていないのですが、まさか、あの酔っ払いが伯父では無い筈!と思いたかった私には、グリードさんの話しは救いでした。たぶん、否、きっとハザル商会という方がグリード父様の実家だと思われます。
リーバスさんの話しに思わず絶句してしまった私に気付かず、ハリシエダ様は、
『あのオークのような腹の商会長が経営しているブルタロス商会って、ヴェルム領内に支店はあるのかな?キュラスでは聞いた事が無いと思うんだけど、旧グランダイン領のフェーブルとシャフェーにはどうかな?有るのなら、追い出したいんだよね。』
と、ハザル商会の話しには気も留めず、焦点をブルタロス商会に変えてしまいました。
『キュラスには勿論有りませんが、王都に近いですから、フェーブルには支店が有ってもおかしくないですね。シャフェーも一緒に調べますが、アソコのギルドはマディソン子爵領と入れ替え措置をされたので、まだボロボロなんですよ。ブルタロス商会はグランダイン侯にへつらって大きくなった商会ですから、旧グランダイン領なので有って当然かもしれませんね。最速で対応致します。』
リーバスさんも私を気遣いながら、ハリシエダ様と方針を決めています。そう言えば、フェーブルの監査報告がまだでしたね。報告書すら書けないギルマスと副ギルマス。そんなトップに従っていなきゃならない。って、今まではキチンと成り立っていたのでしょうか?
そんな二人の教育と、ギルドの立て直しの為に、キュラスを副ギルマスに託してシャフェーと往復しているそうで、リーバスさんの表情が怖いです。なんでも、シャフェーのギルマスのオプショも副ギルマスのプレパトもマディソン子爵の意向を汲んで仕事をしていた癖が抜けないらしく、リーバスさんの合格点には程遠いらしいです。
『いい加減、シャフェーはヴェルム伯爵領のギルドだと認識して欲しいのですが、低い方に流れた水を元の高さに戻すのは苦労します。賄賂を差し出すのが仕事と勘違いしているのか、検討違いの気配りが多くて困ります。余計な方面に気を回さず、真面目に仕事をしなさい!と叫んでばかりです。』
との事です。ハリシエダ様は公爵家で不自由なく育って来たせいか、苦労していない純粋培養されたお坊ちゃんの正義感と言いますか、どちらかと言うと正統派な考えの持ち主で、賄賂をもらっての贔屓が嫌いです。シャフェーの二人は考え方を変えないとハリシエダ様の機嫌を損ねそうですね。(笑) 清濁併せ呑むのが領主の仕事。とサリシン義父様なら仰るでしょうが、ハリシエダ様はまだ青年ですし、マジェンダ義兄様の甘やかしの賜物ですから、其処はリーバスさんに鍛えてもらいましょう。
私が口を挟むような話では無くなって来たようなので、席を外してカヴィヨンの部屋を覗きに行きましょうか。お昼寝にはまだ早い時間です。本でも読み聞かせましょうか?と考えつつ部屋に入ると侍女長のフェンリル母様が居て、カヴィヨンの魔法を見てくれていました。
2歳を過ぎた頃から辿々しく言葉を綴るようになって、女神様の加護が発揮されたカヴィヨンは、苦労せずに魔法を使えるようです。と言っても、薄明るいライトとか、ほんの少しスッキリする?程度のクリーンのような、まだ生活魔法の域ですが、この歳から魔法が使えるなんてチートですよ。私がベッドに座ったままで自分の出したライトにはしゃいでいるカヴィヨンの頭を撫でていると、
『カヴィヨン様は基本属性は有りそうです。でも、ミスティーヌ様程の種類は無さそうですね。魔力量も程々には多そうですし、魔力制御を最初に覚えさせましょうね。』
と、フェンリル母様は笑顔でカヴィヨンを見つめています。それはありがたいですね。でも魔法は5歳になって教会で洗礼を受けてからでないと不味いかも。私はフェンリル母様に、
『取り敢えず、生活魔法のライトとクリーン以外は封印でお願いします。魔力操作や属性魔法は5歳になって洗礼を受けてからでも遅くは無いと思います。』
とお願いすると、
『ミスティーヌ様だって洗礼前から使っていたでしょう?カヴィヨン様は賢いから、言葉が理解出来るようになれば、5歳前でも大丈夫だと思うわ。ようは暴発させなければ良いだけでしょ?』
と笑われてしまいました。まぁ、初級魔法なら大丈夫かな?私はラメール母様しか魔法が使えなかったので、生活魔法と初級魔法しか教わらなかったけど、確かに狩りに使ってましたね。その後であの一件で前世の記憶が甦った事で、お一人様生活時代には高度な魔法も使ってましたね。
カヴィヨンが私と同じとは考えられないのですけど、良く言い聞かせて無茶をさせないようにすれば良いのでしょうか?魔法の指導をフェンリル母様にお任せすると人間の常識を考慮しないのが心配です。ハリシエダ様にお願いして、口の堅い先生を用意してもらった方が良さそうですね。下手に騒がれても困ります。近々、教会に行って女神様ともお話しして来なくては!
早速、ミスリルと宝石を組み合わせてアクセサリーを作り、カヴィヨンと教会に行きました。何時ものようにお祈りをすると、女神様の元に呼ばれました。早速、アクセサリーを女神様に贈ります。それと、テーブルを出してもらい、お料理とお菓子を並べてお茶会の準備をします。久し振りなので話す事は沢山有りますから、準備万端です。
先々月のオリハルト様の披露宴での事件の話しから始めて、領内の事、私的な事と順を追って話しを進めていきます。途中でカヴィヨンが自分の事を話し始めるので脱線しがちですが、微笑ましいので問題ありません。
披露宴でのブルタロス商会長の話しの時は女神様も少しムッとされましたが、一応、ハリシエダ様が対処しているので〜と流しておきました。下手に神罰が下るのも考え物です。女神様のお力に頼りきりでは私達も成長しませんから、良く観察して指導して頂く方向でお願いしました。
そして、遂にカヴィヨンの魔法についての相談です!メインというか、コレが相談したくて来たのです!と強調すると、
『だって、ミスティーヌの子供よ?万能に決まってるじゃ無いの。私の加護が付いているのに人並みとか有りえないでしょ?まぁ、やり過ぎは良くない。って思ったから全属性は付けていないわよ。基本だけ。聖属性も闇属性も無いでしょ?空間も付けてないから、インベントリも無いし、大丈夫。チョットだけ魔力が多い普通の人間よ。(笑) 』
と朗らかに笑っていますが、たぶん、普通のレベルじゃないと思います。はぁぁ。女神様が仰るのですから、何かあったら、『普通です。コレが普通なんです!』で通すしかないですね。魔力量が多いのは私の遺伝の為にしましょう。女神様が普通の人間。と太鼓判を押してくれたのですから、カヴィヨンの魔法に関する事は押し並べて普通ですで通しましょう。
カヴィヨンは女神様のお薦めもあり、フェンリル母様に魔力操作を教わる事になりました。永い時を経て来た魔法生物?のフェンリル母様が適任と女神様に言われたのです。
カヴィヨンはまだ3歳ですから、詰め込む必要はありませんし、『両親がほのぼのと教えるぐらいが丁度良い。』と女神様に諭されました。また、秘密を守る為には外部の人を入れない方が良い。と進言され、ハリシエダ様とも相談した結果、魔法の危険性については私が教えて、初級魔法の概念?についてはハリシエダ様が教える事になりました。




