47 元同級生のサルカンド伯爵子息の披露宴にて…
トレミリー伯爵の親類からお嫁さんを貰える事が決まったオリハルト様。ガスパール様もリュムレー子爵の長女とお付き合いが続いていて、近々婚約するそうです。で、直接付き合いの無いサルカンド伯爵家の事なのになんで私が知っているかと言うと、アラン父様から望月華などの珍しい花々の納品をお願いされたからです。…インベントリに仕舞ってある事がバレてます。(笑)
元?同級生だったオリハルト様とガスパール様と私には交友関係は無かったのですが、アラン父様とサルカンド伯爵様には、領主と領内の冒険者ギルドのギルマスという仕事上の?付き合いが有り、良好な関係が長い為、身分を超えた友好関係があった。という訳ですよ。
始まりは、自身は子爵でしかないのに、父親のグランダイン侯爵家の威光をかさに着たマディソン子爵が、図々しく娘のカシューとの縁組をゴリ押ししてくる事にありました。サルカンド伯爵様が何度断っても、『侯爵家と縁が繋がるのだから有り難く受け入れろ。』と、話しが通じない子爵に困ったサルカンド伯爵様がアラン父様に、侯爵家より身分が上のリストランテ公爵家への紹介をお願いして来たのだそうです。
とは言っても、平民のアラン父様が直接に公爵家と伯爵家の橋渡しを出来る訳もなく、次善の策として私の披露宴にサルカンド伯爵様を招いたそうです。つまり、お二人の縁の繋がるきっかけが私の披露宴だったと聞かされたからですよ。双子様はカシューが大嫌い。ハリシエダ様もカシューが大嫌い。披露宴が始まる前にコソコソと相談した結果、『マディソン子爵とカシューに迷惑を掛けられた連盟』が出来た?そうで、お見合いがひっそりと計画されたそうです。
何回か開かれた集団お見合い的なお茶会の一つであのブーケ事件が起きたらしいのですが、そんな『些細な』事を乗り越えて二人はそれぞれ無事に良縁を結べたそうです。サルカンド伯爵様と仲の良いアラン父様も喜んでいました。まぁ、グランダイン侯爵と仲の悪い領主同士で手を取り合うのは当然?と、サリシン義父様なら喜んで手を貸したのかもしれませんが、タルミナス領に閉じ込められているアネトール義母様が知ったら、違う事を思うかもしれませんね…?
因みに、自分の権威をひけらかして捻じ込んでいたのに、孫娘のカシューを断られた結果に加え、周囲の領地を敵対勢力?に囲まれてしまったので、怒ったグランダイン侯爵は、何故か、王家の覚えが良い私に対して『元平民の癖に!』と逆恨みして周囲に罵ったそうです。ですが考え無しに罵るのは逆効果でしか無く、ついに噂を耳にしたウォルトン陛下から、
『領地が減ったのは、グランダイン侯爵の領地経営がキチンとしていなかったからだ!自分の身内が詐欺行為をしていても咎めなかった事が原因だ。だいたい、ミスティーヌに伯爵位を与えた私の決定に何時迄も文句を言うのは、私に対する反乱と見做しても良いのだぞ!』
と叱咤される始末です。大きな声では言えませんが、ランティス様を通じて、王家と私の関係はとても良好なのです。陛下の機嫌を損ねた話しが広まるにつれて次第に取り巻きは減って行き、どんどん王宮での発言力が落ちて行くので、最近の噂では嫡男に軟禁されたらしいと囁かれています。
因みに、アネトール義母様の実家のカサワド辺境伯家はリストランテ公爵家寄りだそうです。あそこの冒険者ギルドも以前はサルカンドの冒険者ギルドに言い掛かりをつけて来ましたね。今となっては、本音は知りませんが、表立って私を卑下する発言は聞こえて来ませんけど。私があれ以来辺境に狩りに行っていないから言い掛かりがつけられないだけかもしれませんが。(笑)
そう言えば、カサワド辺境伯様もアネトール義母様が披露宴には招いていたと思いますが、私の記憶には有りません。もう3年近く前の事ですし、あの時会ったマウント取りたがりの貴族は殆ど覚えていませんね。と言うより、王太子様ご夫妻とマジェンダ義兄様夫妻以外の記憶は余り無いかな?あの頃はサリシン義父様ともそんなに話していませんでしたから。…昔からアネトール義母様寄りの貴族の方がマウントを取りたがっていて、アネトール義母様がその中でも頂点でしたね。
サリシン義父様の処にもオリハルト様の披露宴の招待状が届いたそうですが、アネトール義母様を呼び戻したく無いサリシン義父様の考えで、マジェンダ義兄様夫妻が代理で出席するそうです。私達も招待されているので、『若い世代で行く方がよかろう。』という大義名分で対外的にも問題無いそうなので、私達はカヴィヨンをサリシン義父様に預けて、4人でサルカンドに転移してお祝いして来ました。
会場には私の採取して来た望月華や月夜野草を始めとした可憐な花々が飾られ、華燭の典を盛り上げていました。各テーブル毎に生けられたブーケにはそれぞれの席順の名前が付いていて、高位貴族と思われるテーブル程輝く花が使われていて華やかでした。目に見える差がある事も貴族としては有効なもてなしになるのだなぁ〜と、座る方々の表情で気付かされました。
私の披露宴の時には手持ちの望月華の数しかブーケを作らなかったのですが、こうしていろんな種類のブーケを作れば全員分が揃えられたのですね!私には思いつかなかった発想に感心しました。やはり誰かと相談し合う事は大切だと気付かされ、サルカンド伯爵夫人の心配りに驚嘆しました。
会食が進み、ワイバーンやレッドサーペントの肉料理がテーブルに並ぶと、静かな歓声が上がりました。あ、コレって、アラン父様に頼まれて急遽狩って来た物よねぇ〜(笑) と苦笑していると、何かを勘付いた3人が『いつの間に?』と私を見ていますが、お小言をもらいたく無いので、必殺知らんぷりを発動しましたよ。だって、美味しいは正義でしょ⁉︎
挨拶に行ったサルカンド伯爵様ご夫妻に沢山のお礼を告げられました。私がSランク冒険者として長く貢献していた事や、結婚後も変わらずに実家のあるサルカンドに貢献していた事にまで話しが及んで、『とても感謝しております。』と言われた時には、マジェンダ義兄様に何とも言えない顔をされましたけど。…あの頃はキュラスはおろか、リストランテにも寄り付きませんでしたからね。本来ならそこに落とされていた筈の利益が何処に落とされていたのか⁉︎って言う話しですから。
ハリシエダ様とオリハルト様は、『今後、隣り合う伯爵家同士、末永く良い関係を続けましょうね。』と語り合っています。ハリシエダ様は1歳しか離れていないのに既に伯爵家当主として働いているので、領地経営を勉強し始めたオリハルト様は尊敬しているそうです。其処にガスパール様も入ってらして、3人で今度は王都の学生時代の話しで盛り上がっているようです。
私が知らない話しで盛り上がっているので、私は端のアラン父様のテーブルに行き、両親にカヴィヨンの事を話していると、オークのようなお腹の赤ら顔の老人が近寄って来ました。アラン父様の知り合いかな?と思い、マリアナ母様の隣りにソッと移動すると、
『君が、サルカンドに大量のマジックバッグを提供している、製造者かな?』
と紹介も無く私に話し掛けて来ました。私は知らない人なので、アラン父様を見ると、苦虫を潰したような顔付きです。あまり良くない人のようですね。知り合いでも無いのに話し掛けて来るなら、見た目と違い高位貴族なのでしょうか?と顔を見ていると、
『王都で商会長をしている私を知らない訳では無いだろうに?挨拶も無いとは、君は一体何様なのかね!』
と怒りだしたので、呆れてしまいました。初対面で紹介もされないのに知る訳が無いでしょう。たかが平民の商人の分際なら、伯爵夫人相手になんて態度でしょう!と断罪して然るべきかもしれませんね。ただ、どんな繋がりで此処に居るのかを知らないので、誰か説明を?と周囲を見回しました。
酔っ払いの叫び声は大きかったので注目を集めたようです。ハリシエダ様達が慌てて来てしまいました。はぁ、此れでは騒ぎが大きくなるばかりです。サルカンド伯爵様に頼んで別室に連れ出してもらい、オリハルト様方には場の雰囲気を取りなしてもらう事にしましたよ。
うっかり巻き込まれましたが、事態が理解出来ていない私に、アラン父様曰く、
『以前、王都のオークションにマジックバッグを出していただろう?出品元は明かさない約束だったんだがな、何故か、私を突きとめてサルカンドの冒険者ギルドに乗り込んで来たんだよ。
王都の老舗で有る私を通さないのは何故だと煩くてね。で、面倒になったからオークションで売るのを辞めて、冒険者ギルドで買い上げて、貸し出す事にしたんだ。
マジックバッグをミスティーヌが作っているのは、サルカンドでなら知っている者が多いから、誰かから、ギルマスの娘が作ってる。って事は聞き出したらしい。ミスティーヌ本人についても嫁に行ったとまでは聞いていたらしい。だが、何処に嫁いだかとか、ミスティーヌの身分とかはまでは調べていなかったようだから、平民だと思っているのだろう。
偶々、私に話し掛けているのを見て、コレ幸いとたかりに来たのだろうな。』
と怒ってます。つまり、私にマジックバッグを作らせて安く買い叩き、自分の店で高く売って暴利を貪ろうと企んでいたらしいです。たとえ私が平民のままだったとしても、Sランク保持者をどうにか出来ると思っていたなんて、愚かとしか思えませんね。あの酔っ払いは、普段お目にかかれないような高級食材をふんだんに使った料理を肴に、美味しいお酒に呑まれてしまって、考えなしの愚行に及んだようですが、自分の仕出かした事の責任は取ってもらいましょう。私も気分を害さなかった訳では無いので、
『何様だと聞かれてましてもねぇ、Sランク保持者の伯爵夫人です。としか言えませんよね?』
と、ワザと軽くハリシエダ様に振ると、
『この披露宴に招かれている者なら、有名なミスティーヌを知らない事が珍しいですが。まぁ、珍しい人もいるのだとして。
身分的な話しをするなら、あなたはさぞかし高位貴族なのでしょうね。でも、ミスティーヌが伯爵に陞爵した席に呼ばれていないなら、下級貴族になってしまう。可笑しな話しだね?
あぁ、下級貴族だから面識の無い伯爵夫人に対し、何様などと言い捨てられるのかな!』
と冷たい視線を浴びせてます。別室にはサルカンド伯爵様も同席して居て、
『伯爵夫人のミスティーヌさんを始め、皆さまに不快な思いをさせてしまって申し訳ない。
彼は古くから当家と付き合いのある商会長だが、王都の大きな商家では有るが平民に過ぎない。今迄の付き合いから末席に呼んだが、この様な仇を返されるとは思わなかった。
今後の取引は辞めるので、それで許してやってはもらえないだろうか?』
と、商会長には怒りをぶつけながらも、一応、庇った上で私に対しては平謝りです。別室に場所を変え、ハリシエダ様の怒り、私達に対するサルカンド伯爵様の態度を見て頭が冷えたのか、自分の仕出かした事にやっと気付いたようで、
『あ、申し訳ありませんでした‼︎ 何やら多大な勘違いをしておりました!』
先程の宴の席での態度を逆転させたかのように這いつくばって謝り出しました。でも、遅いですよね〜だって、私よりもハリシエダ様の怒りの方が大きいようですもの。酔っ払いには視線すら向けずに無視すると、サルカンド伯爵様に対し、
『我が家と直接の取り引きがある商家とは違うようですし、多分、我が領にも商店は出していないのでしょうから、サルカンド伯爵様の顔を立てて、裁定はお任せ致します。
私としては、今後一切の関わりを拒否するだけで済ませますよ。当然、新規の出店及び、領内の移動販売なども受け付けませんので!この場合の領とはヴェルムだけで無くリストランテも指しますから、ご注意下さい。
サルカンド伯爵様もご了承頂ければ結構です。めでたい祝いの席でこの様な揉め事を起こされてお怒りなのは、私達よりもサルカンド伯爵様の方でしょうから、私達に対する気遣いは無用です。』
とニッコリと冷笑をもって答えています。うん。当然ですね。サルカンド伯爵様もけんもほろろな態度で商会長に対応されています。
私達は顔を見るのも不快なのでさっさと別室を後にして宴の席に戻ると、和やかに会食を済ませて帰りました。ヴェルム伯爵家とサルカンド伯爵家の仲は良好ですよ。と印象を塗り替えれば仕事は終了です。…ハリシエダ様大好きなマジェンダ義兄様も、酔っ払いの顔は記憶したようです。ハリシエダ様から商会の受け入れ不可を聞いて、早速、リストランテ領内も調べて対処するそうです。
リストランテのお邸に転移で戻ると、遊び疲れたカヴィヨンがサリシン義父様に抱かれて寝ていました。レイチャイルド様はベッドで寝ているそうですが、カヴィヨンはグズって寝なかったそうで、サリシン義父様は喜んで抱っこしてくれていたそうです。ありがとうございます。
カヴィヨンをじっくりと?観察していらしたそうで、『魔力量が多いのでは無いか?』と聞かれました。私はチートなので気付かず、ハリシエダ様は…なので、様子を見ながら魔力操作を教えようかな?と考えてます。まだ早いと思いますが、本人が学びたい時には教えましょう。
一晩、リストランテの領主邸に泊めて頂いて、私はクリミアナ義姉様とアクセサリーを作り、男性陣は今日の酔っ払いの暴挙について語り合ってました。(笑)
ワイヤーを使ったアクセサリーは、簡単に作れる割に華やかにも出来るので、クリミアナ義姉様がハマったようです。インベントリからダンジョンで採取したアイテムを出したのですが、ランクダウンしたとは言えまだそんなに出回っていないようで、とても喜ばれました。本職の職人に作ってもらえるようにアイテムも多数譲りましたが、一緒に作ったのが一番喜ばれたかも。
残っているワイバーンなどのお肉などを少し?料理長に預けておいたので、美味しい食事を頂いて、キュラスに帰りましたが、何故か、リーバスさんが良い顔で押しかけて来ました‼︎




