46 真面目に領主っぽい仕事もします ?
なんとか無事にお披露目のお茶会が終了して、クリミアナ義姉様にもアクセサリーセットを喜んで頂き、マジェンダ義兄様にも例の通い袋的なマジックバッグを進呈して、親子3人+モリーノでキュラスに帰宅しました。モリーノの転移で。
ヴェルムの領地管理を見直す事になり、旧タレイア地区をフェーブル。旧クナード地区をシャフェーと改名しました。地区の行政や納税などは王宮の管理官が管理してくれていますから安心なのですが、問題は各ギルドです。リーバスさんに言われて気付いたのですが、どちらのギルマスもキュラスの領邸に正式な挨拶には来ていません。
ヴェルムの領都をキュラスにしたので、サイトバル兄様とリーバスさんに挨拶は勿論、領主にも挨拶に来なくては行けないと思うのです。
冒険者ギルドは国に依存しない独立の存在である。
という建前はある物の、実際には助け合って成り立っています。商業ギルドは逆に領主に逆らったら営業出来ません。
そして、キュラスでは商業ギルドのギルマスがやらかしたせいで経済が滞っていた訳です。リーバスさんが来て私と商業ギルドを和解させたから、今、キュラスは好景気に湧いています。でも、挨拶に来ない旧タレイアと旧クナードに、リーバスさんは力を貸しません。付与魔石の恩恵を始め、私が係った商品は一切流れて行かないか、ぼったくり価格になっているのです。
サイトバル兄様に言わせると、
『冒険者は自由に移動出来るのだから、礼儀知らずの奴に構うなど時間の無駄だし、困るのは向こうだから気にするな。カサワドやグローリー、王都のギルドを見れば明らかだろう?王都のギルドなんて、今やオークション位しかまともなアイテムを扱えなくて、全国のギルドを統括しているなんて言えない状況だぞ。』
と笑っている始末です。冒険者に言わせると、サルカンドのアラン父様のギルドが一番で、駆け込みギルドとか、お悩み相談ギルドなんて言う異名が流れているそうです。なんだかね?
という訳で、管理官を通じて地区の改名を伝え、ギルドにも運営実態の報告を命じたのですが…
シャフェーの商業ギルドの副ギルマスを名乗る、フォーラスは翌日に挨拶に訪れました。ギルマスとなった旧キュラスのギルマスを連れて。フォーラスさんは2冊の帳簿を取り出すと、呼び出されて同席したリーバスさんを捕まえて、
『此方が改領前のクナード時代の収益です。此方は改領後、バックスギルマスが口出し始めてからの物になります。私が気付いて止めた物が無ければ、更に悪化していたと、私は考えていますが、リーバス様はどう思いますか?』
と、帳簿を渡しました。リーバスさんが帳簿を確認しているので、私はバックスと呼ばれた男を鑑定しました。マップがね、悪人表示なんですよ。罪名?詐欺と見えました。帳簿を確認したリーバスさんは、バックスをギロッと睨みつけると、
『この商人に融資する根拠が理解出来ません。此方の商談もギルドに損害を与える可能性が高く、敢えて受ける意味が分かりません。それ以外の件についても、私はフォーラスさんの意見に賛成ですね。バッグに貴族が付いていたにしても、引き受けるべきでない案件ばかりです。
あなたはこの案件を引き受けて、どんな利益を得るつもりだったのでしょうか?少なくとも、ギルドには被害しか与えないと思いますよ。』
バックスの持ち込んだ商談を悉く否定して睨みつけると、フォーラスさんも同じように睨んでいます。ところが、睨まれたバックスは平然とハリシエダ様に笑いかけ、
『だから、平民は使えないのですよ。この商人は、グランダイン侯爵家と取引が有るのですよ。この商人を助けておけばグランダイン侯爵様に覚えが良くなると言うのに。私が態々伝手を伝って話しを繋いであげたのですよ!』
と威張りだしました。この男はどれだけ私を馬鹿にすれば満足するのでしょうか。静かに怒りを溜めていると、隣りでハリシエダ様が話し始めました。
『成る程。あなたはグランダイン侯爵家に仕えたいのですね。フォーラス。君はこの男が居ないとギルドの仕事を熟せないのですか?』
聞かれたフォーラスさんはムッとした顔付きで、
『ヴェルム伯爵。あなたも帳簿を確認して下さい。私はギルマスが居ない時の方が利益を上げていました。正直なところ、前の副ギルマスの方が仕事も早く適切です!』
と訴えます。リーバスさんも帳簿を見ながら頷いてます。それを見たハリシエダ様は、
『それなら話しは早い。あなたはシャフェーの商業ギルドを辞めて、グランダイン侯爵領の商業ギルドに行くべきでしょう。私の治めるヴェルムの商業ギルドに、他領を優遇する職員は必要ありません。フォーラス副ギルマスも文句はありませんね?』
にっこりと笑って決別を告げます。更に、
『あー、私はグランダイン侯爵家とは一線を引いているので、私からは口利きが出来ないが、あなたは自分で伝手を持っているそうだから心配は無いね。良かった。あなたも自分の力が発揮出来る処で、思う存分活躍してくれ給え。』
と、有無を言わさずに切り離しました。私が口を挟む暇が有りませんでしたねぇ〜(笑)
一転して笑顔のフォーラスさん。歯軋りが聞こえますが、誰も相手にしそうにありません。そして、帳簿を返しながら、さり気なく付与魔石の話しを始めるリーバスさん。当然、シャフェーでも話題になっているそうで、行商でキュラスに行く商人から話しを聞いた地元の商人から、同じ領内なのに何故手に入らないのか?と突き上げを喰らっていて…と交渉が始まりました。
フォーラスさんから話しを聞いて慌てて駆け込んで来たのが、フェーブルの商業ギルドのギルマスのオプショさんと副ギルマスのプレパトさん。この二人は元はマディソン子爵領のギルドに居たそうですが、領地交換の際に押し出されて?交換でフェーブルに来たそうです。つまり、バックスの伝手先。という事なのでしょう。
ハリシエダ様の逆鱗に触れてギルドを追い出された話しを聞いて、慌てて挨拶に来たそうですが、フォーラスさんと違い、まともな資料を持って来ませんでした。何をしに来たのかと思ったら、手土産に〜と包みを差し出します。
促されるままに包みを開けると、私が作った初心者支援マジックバッグが出て来ました。ハリシエダ様が私を見て首を傾げてますが、私も理解不能です。すると、オプショさんが、
『コレは冒険者ギルドからやっと譲ってもらえた、貴重なマジックバッグです。』
と、自慢げに語りだしました。やっぱり初心者支援マジックバッグのようです。私達が対応に悩んでいると、何を勘違いしたのか、
『コレは教会で作られた特別品なのです!私達はヴェルム伯爵の為に態々冒険者ギルドにお願いして手に入れました。ヴェルム伯爵夫妻に感激して頂けて良かった。』
と恩着せがましい言い方をして来ます。流石にこの勘違いはそのままにして置けなくて、
『コレは、初心者支援マジックバッグと言いまして、冒険者支援の為に安価で購入出来るようにとサービス価格で作った物です。あなた方は何処のギルドで、幾らで購入したのですか?』
と私が聞き、重ねる様にハリシエダ様が、
『正直に話せば罪に問うのは辞めても良いが、対応如何では考えも有る。』
と問い質しました。私達に責められた二人は困惑しきった表情で顔を見合わせると、
『旧マディソン子爵領の冒険者ギルドです。でも、初心者支援マジックバッグだなんて今、初めて聞きました。このマジックバッグは貴族への貢ぎ物として有名だったのですが、もう余り残っていない。と言われて…金貨20枚で買いました。』
と、ボソボソと答えました。約8倍ですね。売値は金貨5枚でしたから、4倍かな?何方にしても問題大有りです。
『コレは私が教会と商業ギルドに頼まれて、原価を金貨2枚銀貨5枚で作った初心者支援マジックバッグです。最初の売値は金貨3枚の筈でしたが、最終的に金貨5枚になったかな?そこら辺がはっきりしてませんが、そんな物です。』
『サルカンドでならもっと高機能の物が似たような値段で売られているよ。平民の冒険者相手にね。
君達は狭い場所の感覚しか持っていないから簡単に騙されたんだね。
因みに、私は妻の作った更に高機能のマジックバッグを持っているから、コレは君達に返す。2M立法しか容量のない小さい物など必要ないからね。』
私がした説明に被せる様にダメ出しをして心を折るハリシエダ様。貴族らしいというか、気配りの無いストレートな意見は取り付く間も無く、二人にダメージを与えます。
『さて、中に帳簿類も入っていないようだし、君達は何をしに来たのかな?
あぁ、旧マディソン子爵領の冒険者ギルドの摘発を訴えに来たのか。うむ。王都の冒険者ギルドに仕事を与えに来たのだな。』
仕事を終わらせたリーバスさんが駆け付けた時には、屍のようになった二人が居ました。リーバスさんがフェーブルのギルドを監査して、これ以上に問題が無ければトップはそのままですが、何か出て来れば更迭するそうです。…不正が見つかれば、一旦業務停止してギルドを閉じ、職員を全員キュラスに呼んで短期集中で再教育するそうです。ガンバレ、リーバスサン!
サイトバル兄様が懸念したように、両冒険者ギルドからの挨拶は有りませんでしたので、ヴェルム領公認の冒険者ギルドはキュラスのギルドだけにしました。そのように王都の冒険者ギルドには伝えておきました。つまり、たとえ他領のギルドから攻撃?されたとしても援助しない。という事です。
と言っても、冒険者ギルドなんてそんな物でしょうから、改めて申告する必要なんて無いと思いますが、ヴェルムはねぇ、領主夫人がSランク保持者なんですよ。だから、コレは私を守る為の申告です。不条理な事をする馬鹿を庇う気は有りませんから。
さて。カヴィヨンの断乳が済み、フェンリル夫妻の助けも有り、ダンジョン以外の依頼がラキアさんから入るようになりました。と言っても精々2時間程で終わる内容?です。と言っても、採取系はインベントリに揃っているので、出掛ける必要が無い場合が多いのですけどね。
久し振りに望月華の注文が入ったそうです。アレ、グランダイン領内のフォルム湖に有るのですよね〜なんで、キュラスに依頼を出すのかな?
流石に、自分の披露宴で使い切っていたので、夜、カヴィヨンが寝た後に行く事にしました。誰かに見られたく無いし、満月の夜に咲きますからね。転移で行けますから、わざわざ昼間に彷徨く必要は有りません。
アレ、満月に咲いて綺麗なんですよね〜ハリシエダ様も見たがるかな?どうせなら、カヴィヨンにも見せたいかも。と考え出すと、一人で行くのが勿体無く思えて来て…フェンリル夫妻に相談しちゃいました。前回、湖の主は倒したし、フェンリル夫妻さえ居れば危険性は低いと思うのですよ。
という訳で、夜のピクニックの開催が決まりました。湖の辺りに結界を張り、ピクニックシートを広げて、温かいお茶とお菓子を用意して、クッションを敷き詰めたそこにカヴィヨンを座らせます。隣りに座るハリシエダ様と、人化したフェンリル夫妻に囲まれて、ご機嫌のカヴィヨンが見守る?中で、満月を浴びて湖底から茎が伸び出し、銀色に輝く望月華が咲き始めたので、採取を始めました。
普段ならGだったり、グリズリーだったり、ホーンディアだったりが出て来るのですが、フェンリル夫妻効果で、邪魔な魔獣は出て来ません。安全な空間で幻想的な風景を眺めながら、美味しいお菓子を満喫する一行に、両腕に抱えられるだけの望月華を持って戻ると、感心されるのを通り越して、呆れられてしまいました。確かに、此れの何倍もインベントリに仕舞ってますが、呆れなくても良いと思いませんか?
ついでに、月夜野草と月光草も採取しましたけど、別に拗ねてませんよ?効率重視。と言うだけです。だって、付近に咲いていると分かっているのに取らないなんて有りえないでしょ?
非日常な夜中のピクニックを楽しみましたが、カヴィヨンは既に夢の中です。ハリシエダ様の腕の中で眠るカヴィヨンを見て、安らかな寝顔に癒されながら、キュラスの邸に転移しました。
翌日、サイトバル兄様に部屋でこっそりと望月華を納品しに行きました。何と、依頼者はサルカンド伯爵でした。アラン父様経由で来た依頼だったのだそうです。なんでも、夫人がお茶会の席で、私の披露宴でブーケをもらった人から望月華を自慢されて、『ミスティーヌさんは元々、我が領の自慢だったのに!』と悔しがったのだそうだ。それを聞いて、『だったらあなたも頼めば良かったわね。もう遅いでしょうけど。』と嘲られて収まりが付かなくなったそうです。
あの時は予め名前を付けておいたけど、アネトール義母様が人選していたから、誰に行ったのかは知らないのですよね。サルカンド伯爵なら貰って当然だと思うのですが、あの人の考えでは、自分の取り巻きを中心にしそうだから…と考えると、私の想定外の人に渡っていても仕方ないかも。
王都のギルマスには金貨5枚で花束を売ったなぁ。と考えながら月夜野草と月光草を添えて望月華のブーケを作り始めました。少なくとも、披露宴で配ったブーケより華やかです。依頼料を聞いたら金貨30枚だったので、ブーケ代として金貨5枚。残りは時間停止の付いたマジックバッグに入れて渡す事にして、そのマジックバッグ代にしました。容量は3M立方と少なくしましたからね!
私の名前を出さなくても、サルカンド伯爵は判るでしょうが、依頼料以上の価値を添えたのは、学生時代に庇って頂いた御礼です。




