43 幸せな日常かもしれない?けど、面倒かなぁ〜
カーライト様の誕生から半年程経った頃。匂いに敏感になり、食事の度に気持ち悪い事が増えました。心配したハリシエダ様に呼ばれたお医者様に妊娠を告げられました。悪阻ですね。何となく気付いてましたけど。後、何故か眠気に襲われる事も増えてしまって、度々、ベットと友達になっていましし。眠気と張りあって無理する意味が分かりませんからね。素直に寝ています。
今は安定期に入り、悪阻が治まったので食欲も戻りました。痩せた筋肉を取り戻すように?只今、ハリシエダ様に隠れて運動してます。と言っても、ただ、モリーノと話しながら庭を早足で歩いているだけですけど。色付いた庭の木々が綺麗です。
私だって大きなお腹を抱えて魔獣の討伐に出掛けたりはしませんよ⁉︎ でも、何故かハリシエダ様の信用が薄いのですよ。私、普通に常識を持ってますよ?お腹の子供は愛おしいですし。
『ミスティーヌなら、魔獣に対して遠くからウォーターボールで倒すだけだから安全。とか言い出して討伐を遣りかねないから、一人での外出は禁止します。行き先が街中でもね、外出時には私じゃなくてもいいから、誰か護衛をつけて欲しい。たとえ必要なくともね。でないと心配で閉じ込めてしまいたくなる!』
なんて言うのです。超過保護になったハリシエダ様対策には、クリミアナ義姉様にも協力をお願いして、妊婦の太り過ぎによる健康阻害をしっかりきっちりと教育してもらいました。切迫流産の危険性も無いのに、部屋に籠っているだけでは健康的な出産が出来ない。と強調してもらいました。
安産な出産の為には適度な運動が必要と理解してもらう為に、私も頑張りました!…けど、言葉に依る説得よりも、甘えた態度をとる方が有効だなんて唖然としましたけど。
ハリシエダ様の心配している表情に愛情を感じつつも、束縛を感じて息苦しくなるのですよね。でも、私も何時迄も子供ではいられませんし、クリミアナ義姉様に対策を教えられたので、考え方を変えて幸せな束縛を楽しむ事にしました。邸内なら1人で行動しても文句言われませんし、部屋にこもって落ち着いて物作りに集中するのも楽しい筈です。
先ずは、入れっぱなしになっていたインベントリの整理から始めましょうか。いろんなアイテムが溜まっています。サイトバル兄様に頼んで、少しずつキュラスで売りに出すのも良いでしょう。
以前、絶対に離婚する。と考えていた時にはアラン父様に頼んでサルカンドのギルドを潤してましたが、ヴェルム伯爵夫人になったからには、もうキュラスに根を張る覚悟を決めましたからね。領主夫人としてキュラスに利益を与えて発展させて行く方向で動きましょう。
ダンジョンの深層のアイテムも少しずつ市場にで始めたようですし、そろそろ売り出しても目立たないかも?それも含めてサイトバル兄様に相談しようと思います。女神様が『マナが溜まったらキュラスの近くにダンジョンを開いてあげますね。』とおっしゃっていたのも楽しみです。まだ数年後を予定しているそうなので、育児明けに一番乗りは出来そうです。
外に出れない鬱憤を抱えていたせいでしょう。気づいたらかなりの量の作品が溜まって来たので、サイトバル兄様に連絡して取りに来てもらう事にしました。マジックバッグなら冒険者ギルドでも取り扱っていますからね。ついでに売りに出すアイテムの相談もしたいです。
中でも、問題は付与魔法の付いたアクセサリー系です。願いの付与魔石はエルーシャ義姉様からの依頼品ですから良いとしても、それ以外です。サイトバル兄様に全部お願いしても良いのですが、たぶん、結界の付与のされているアクセサリーは商業ギルドも欲しがるでしょうね。サルカンドではサミュエル兄様に頼んで、商業ギルドにも卸していて、商人にも人気でしたから。それに、付与魔石を使っていない単純な⁉︎アクセサリーは、確実に商業ギルドの管轄ですからね。…面倒だから、全部の付与魔石を付けちゃう?
サルカンドだったらサミュエル兄様が居るんですけどね。私、キュラスの商業ギルドとは余り関わっていないのですよ。エルーシャ義姉様に仲介してもらって、顔繋ぎしておけば良かったかな?最後の手段としては、モリーノにサルカンドまで飛んでもらって、サミュエル兄様にお願いするのも有りかしら?あ、単純にサイトバル兄様にお願いすれば良いのかもしれませんね。
アイテムやアクセサリーの売り先で悩んでいましたが、サイトバル兄様が来たので、取り敢えず、マジックバッグから時間経過や容量を説明して、値段を相談する事にしました。いろんな種類を作ったので種類毎に値段を付ける予定です。『仕事がひと段落ついたから。』と、ハリシエダ様とサリシン義父様も一緒に入って来られました。
サイトバル兄様の付けた値段が高過ぎると思った時は、理由を聞いて考えを擦り合わせます。材料費だけを考えている私とは加算基準が違うのです。なので、主に私の魔法付与の価値が問題になります。私が大して苦労していないので値段を下げようとすると、
『価値に見合った値段をつけないと、他の製作者に迷惑をかける事を、教会とコラボした時に理解した筈だよね。』
と諭されました。それは理解したつもりですが、私、結構お金が余っている気がするのです。
『じゃあ、売値はサイトバル兄様の好きにして良いから仕入れ値を下げるのは?』
と言ったら呆れられました。…冗談はともかく、お互いが納得できる値段に決めるつもりです。少し矛先を変えようと、
『暇に空かせて、宝石を使って豪華に仕上げたマジックバッグもあるのです。教会に頼まれた初心者向けの物でさえ欲しがるのだから、これぞお貴族様仕様!なマジックバッグでも売れるのでは?と考えたのですよ。ハリシエダ様やサリシン義父様を通せば売る相手は直ぐに見つかりそうでしょ?』
と、無駄に高くつくマジックバッグを持ち出してサイトバル兄様に話すと、
『素材が高いから、高い値段でも良いでしょう。って処だけど、たぶん、ミスティーヌの考えている10倍位の値段が最低金額で良いかも?』
と笑われました。バッグの装飾などは全部一点物ですが、設定は、10M立方の時間経過有りと5M立方の時間経過無しで作ってあります。
相談した結果、10M立方の方は金貨500枚で、5M立方の方は、金貨750枚で売る事にしました。時間経過無しはダンジョンでも滅多に出ないから、容量が少なくても高額で良いそうです。…サイトバル兄様の付けた値段はこの倍以上でしたが、ハリシエダ様の
『あまりに高くし過ぎると、買い手が居ても、この数全部は売れないよ?これだけの富が我が伯爵家に集中するのは、他の貴族から良くは思われない。』
との助言と、サリシン義父様からの、
『最初は高値で持って行って、最終的にこの値段に下げて恩を売るのだよ。このマジックバッグの数だけ、ヴェルム伯爵家に味方が出来る。という事だ。』
との一言で決まりました。貴族の嫉妬は醜い上にいやらしいので、サリシン義父様がよく考えて、売る相手と順番をハリシエダ様に伝授して下さるそうです。取り敢えず、7個ずつしか作っていませんし、お金に困っている訳でも有りませんから、積極的には売らない方針だそうです。目立たない分には不満は有りません。噂になる程には出回らないでしょう。
ダンジョン関係のアイテムは、私が想像している程は出回っていないそうで、未だにオークションが主流なんだとか。しかも、ダンジョンレベルが下がって、私の持っているアイテムは希少価値が更に上がっているそうです。アクセサリーはサイトバル兄様の範囲外ですので、今回は見送りです。
…内緒で王家に献上出来ないかな?『気づかなかったけど、宝物庫にこんなのも有りました〜』なんて扱いで良くない?とハリシエダ様に話し掛けると、
『カーライト様もまだ小さいし、これからもお祝いする事は多々あるだろうから、そういう時に小まめに贈った方が喜ばれると思うよ。今後の御兄弟の出産を狙うのも有りだね。』
と諭されました。追いかける様に、
『ミスティーヌは簡単に献上し過ぎる。物の有り難みが判らなくなるのは、王家にとっても好ましい事では無い。』
とサリシン義父様にも釘を刺されました。聖獣様を頼って、こっそりと宝物庫に隠してもらおうかな?と考えていた事は諦めましょう。バレた時に叱られそうです。
アラン父様達をサルカンドに残し、私の体調を心配して駆けつけてたマリアナ母様から『みんな、最近会えなくて寂しがっている。』と聞いてました。私も会えない寂しさは同じです。妊娠するまでは気軽にサルカンドに飛んでましたからね。みんなに会いたいです。
特に、サミュエル兄様には、キュラスで捌きにくいアクセサリーやアイテムを押し付け…お願いしたい処です。今回はマリアナ母様を経由して、アラン父様に頼んだので、最終的にサミュエル兄様にも届くとは思いますが。アレ?会えなくて寂しい話でしたっけ?
マリアナ母様は、私のお見舞いの後はエルーシャ義姉様の処に寄って帰るそうです。エルーシャ義姉様は妊娠後期で、そろそろ予定日なのです。お揃いのマタニティウエアーを着ています。イルミナちゃんの後は出産に繋がらなかったそうで、久し振りの?出産に喜んでいるのですよ。
エルーシャ義姉様に贈った服の中には、胸の処にポケットを模した別布を当ててボタンで留めるようにして、服を脱がずに授乳出来るデザインも贈ってます。授乳する時を考えて妊婦服を探したのですが、希望した機能のデザインが見つからず、試作したので、エルーシャ義姉様にお願いして試してもらう事になってます。
『確かに、他人から胸が見えないのは良いですね。更に、上にケープを羽織れば外出先の授乳でも、他人の目が気にならないかな?』
とは、たまたまその場に居合わせた、王都の商店のご夫妻の意見で、知り合いの服飾関係者を紹介されました。私は気づきませんでしたが、商店の女将さんとかは仕事上、出産したからと奥に引っ込んでいられず、子育て中でも店先に立つのだそうです。子供に乳母を付けられる程のゆとりを持っていられる大店は少ないので、店先から離れられず、隠れての授乳が大変なのだそうです。
私はエルーシャ義姉様に丸投げでも良かったのですが、何処で意匠登録するかが問題?になりました。私やエルーシャ義姉様がキュラスの商業ギルドと繋がりが薄いのがネックで、話し合いの結果、最終的にサミュエル兄様に押し付けて、サルカンドの商業ギルドで登録して、王都とサルカンドの服屋さんで売り出す事になりました。
それを伝え聞いたサリシン義父様が、『キュラスの商業ギルドがヴェルム伯爵領の商業ギルドのトップなのに、領主夫人との顔繋ぎをしに来ないなんて!』と怒って、サミュエル兄様を引き抜こうと騒だしたのです。流石にそれにはサルカンド伯爵の待ったがかかりましたけど。
仕方ないので⁉︎リストランテの副ギルマスが呼ばれて、キュラスのギルマスになり、伯爵領の商業ギルドを統括してもらう事になりました。今までキュラスに居たギルマスは、クエードのギルマスに配置換えだそうです。
マジックバッグを相談した時に、サリシン義父様から『ミスティーヌは何故、商業ギルドのギルマスを呼ばなかったのか?』聞かれて、『面識が無くて…』と答えて気がついたのですが、確かに、私が領主邸に戻って来ても、挨拶はありませんでしたね。
ハリシエダ様の処にはキュラスの領主になった時に挨拶があったそうですが。あの時は私がいませんでしたけど、私がヴェルム伯爵になった時にも祝いの挨拶は無かったと思います。『女性に伯爵位が贈られた!』と、割と話題だったのですが、気にならなかったのでしょうね。
ハリシエダ様から聞いた話では、結婚後も私がキュラスに姿を見せず、サミュエル兄様を頼ってサルカンドの商業ギルドばかりと取引していた事が気に入らなかったらしいです。率直に言うと、キュラスにお金を落とさない領主夫人の私を憎んでいたみたいです。でも、私に直接コンタクトを取っては来ませんでしたよね?
サリシン義父様が調べた報告書を読むと、ギルマスは男爵家の出自で、元平民の私に頭を下げてまで挨拶するのが嫌だと周囲に漏らしていたそうです。義母様のやらかし?を知っていて、『平民の領主夫人が追い出されるまでの辛抱さ。正式な領主夫人がいらしたら挨拶に伺う。』と笑っていたのだとか。初めはキュラスのギルドに拘らないで、他所に自分から出て行く選択もあった筈と思いながら読んでいましたが、同情心は消えましたね。出自はどうであれ、領主夫人を敬えないなんて、関わらなくて正解。と思います。
私に逆恨みをしていたらしい。と知り、クエードの商業ギルドに内偵を放ったサリシン義父様。今迄知らなかっただけで、公爵家には影が居るそうです。…ホントは跡取りにしか知らされない事だ。って聞いた時は、お義父様!なんて事を教えてくれるの⁉︎と頭を抱えました。
クエードに飛ばされたギルマスは、あちらで中々受け入れられずに苦労しているそうです。
『表向きは栄転だが、実質左遷だからね。元のキュラスのギルドからの支援は無く、更に恨みを募らせそうだが、そんな暇は無いみたいだね。』
と、サリシン義父様が笑ってますが、それで良いのでしょうか?逆恨みされているのは私ですよ?
クエードの元ギルマスは、副ギルマスとして残っているので、協力がもらえないと大変でしょうが、領主夫人に逆らって左遷された。と噂が広まっているので、早めに気づいて反省して欲しいです。…気づかなければ更に何かをやらかして、正副の交代、若しくは更なる降格でしょうね。私は見限ってますし、ハリシエダ様よりもサリシン義父様の方が憤ってますから…




