39 閑話
【女神様】
拗らせてたなんて!ミスティーヌが、私のミスティーヌじゃ無くなった⁉︎
常に彼女だけを見ている訳じゃないから心の中まで気付かなかったけど。お気に入りに嫌われてしまったかもしれなかったなんて知って心が寒くなったわ。ハリシエダなんかと比べるまでも無い。って気にもしてなかったから、見当違いの内容でミスティーヌに責められて驚いたわ。
ミスティーヌが『ハリシエダ様にスキルをバラされた!』って、事件から1ヶ月も経ってから伝えて来たせいでちょっと時間が掛かったけどキチンと記憶の修正をしたのよ。その場で言ってくれたら即座に消せたものを、時間が経っていた分範囲が広がって大変だったけど。ついでにミスティーヌが戻った時に虐められないように偽情報も仕込んでおいたのに。それらを総てハリシエダの為にしたなんて勘違いされるとは夢にも思わなかったわよ!…王妃の夢を使って、王家の意識操作までしたのに。
ダンジョンの宝箱だってミスティーヌが喜ぶかなってご褒美を詰めておいたのに、宝物を王家に献上した事で、ハリシエダの助けになっちゃったし、もう!上手くいかなかったわ。そうね、マナが溜まって新ダンジョンが作れる様になったら、ミスティーヌ用の実用的な物を詰め込んだ新しい宝箱を用意して見つけてもらいましょう。献上品に流用出来ない物にしなきゃ。
結果的に何故か、ハリシエダだけが得をしている謎が残ったけど、取り敢えず誤解は解けたみたいだし、ミスティーヌが落ち着いてくれて良かった。私が気に入っているのはミスティーヌの方なのだから、誤解されない様にしなきゃね。そうそう、彼女の作る異世界感覚のアクセサリーはとても素敵なのよ。またお詫びに作ってくれるらしいから、今から楽しみだわ。
それにしても、あんなに楽天家でお人好しなミスティーヌでも、拗らせると豹変するのね。ホント、驚いたわ。ハリシエダの行動は要注意かしら?でも、下手に注目するとミスティーヌが拗らせる原因になりかねないし…やっぱり、放っておきましょう。(笑)
【王妃様】
息子のガウディの周りが賑やかですわ。いつの間にか聖獣様が王宮に居着いていますし、それも、ガウディの宮に居ます。何故、陛下の所に現れなかったのかしら?と思い、ガウディを呼び出して聞いてみると、妻のプリシラが抱えているSランク冒険者の縁で紹介されたと言うのです。
Sランクと言うと、数年前に昇格した少女よね?久し振りの昇格な上に年端もいかない年齢で話題を攫ったけど、そうね、確かにプリシラの専属に落ち着いたと聞いていたわ。年齢的にガウディ夫婦に仕えさせた方が良いと陛下も納得されていたから、広い意味では王家に仕えているとみなして、そのままにしていたわ。
侍女が血相を変えて部屋に来たから、何事が起きたか!と身構えたのだけれど、プリシラの持っているアクセサリーが問題らしいわ。興奮していて話の要領を得ないから、先触れを出して、プリシラの部屋に行き、問題のアクセサリーを見せてもらったけど…
確かに、個人の宝石箱に入れて置いて良い品物では無いわ。何事かが起きないうちに宝物庫に保管しなければいけない価値がありますわ。輿入れの際の目録に無かったと思い尋ねると、例のSランクの冒険者から献上されたダンジョン産の宝物と分かったわ。慌てて王家の宝物庫に保管してもらったけど、ガウディ夫婦には価値が分からなかったのかしら?
プリシラへのイジメと取られては困るからガウディを捕まえて問い質したら『更に上の価値を持つ品を献上されたら報告するつもりだった。』と言うじゃない!育て方を誤ったと頭を抱えてしまったわよ。『これが金額を付けられない程の宝物だと分からなかったの?』と重ねて問い質すと、『私的な状況で献上されたから、取り敢えず妻の持ち物で良いかと思って…』って、馬鹿じゃないの?公の場を設えて献上し直させなければ不味い状況が理解出来ないなんて!私的に献上って、要するに、王家の権威をチラつかせて無理矢理タダで取り上げた。と取られても不思議ではないのよ⁉︎
ガウディの返答に頭が痛くなったわ。『ミスティーヌが売りに出したら親に叱られるだけだし、持っていても不要の物だから、私達がもらってくれると助かる。と置いて行った物だから、此方から強請った事は無い。』って、それはあなた達とその場に居た者達しか知らない話よ?もう、どうして良いか…陛下に相談しなければいけないわね。
後日、夢の中に女神様が現れて、とんでもない事を申し渡されたわ。『Sランクの冒険者、ミスティーヌは転移のスキルを持っているのですけど、極力秘密にしていたのに、結婚披露宴で夫となったハリシエダが暴露した為に怒りまくって家出中なの。今はダンジョンに入っているのですけれど、暴露の事実を消去する対策として、王家の顔を貸して欲しいの。』と頼まれましたわ。当然ですが、女神様の願いを断る事などあり得ませんわ。
女神様に夢で神託された事を陛下にご相談した結果、ガウディがダンジョンのスタンピードを知って、新婚のSランク冒険者に無理矢理ダンジョンの攻略を依頼して、合わせて宝物を王家に献上する運びとなった事にしました。宝物に関しては、途中経過を知りたくて、聖獣様にお願いして転移で呼び出してもらった時に預かり、攻略達成後に献上し直す事になった。と辻褄を合わせる事にしたのです。
聖獣様を王家に紐付けして頂いたので、どんなに感謝しても足りない位なのよね。陛下とも相談して、まだ表向きには出せないのですが、功績や献上品を鑑みて、伯爵位を授ける事になりましたの。現在、飛び地にしか領地の空きが無いので、取り敢えず、拝領は後日検討する。としましたわ。女神様案件ですもの。聖獣様を連れて来てきてくれたのだもの。今回は異例重ねで、ミスティーヌ本人に陞爵させましたわ。領地が決まったら大々的に公布しますわ。驚く方が多そうで楽しみね。
【アラン父様】
通常のサンドローズだって高値が付くのに、虹色だなんて…オークションに通常を10個、虹色を2個出してみたら、通常は金貨10枚だったが、虹色は白金貨が付いた。うん。虹色は当分お蔵入りだな。通常のは、まぁ、相手を選んで売ってやろう。値が下がる位には有るからな。
20階層迄の物は、数量限定でオークションに出したが、自然界のより高値が付いたのは、ダンジョンだからではなく、状態が良過ぎるからだろう。ミスティーヌの出してきた皮には余計な傷が無いからな。普通は切り傷があちこちにあって、穴だらけなのだが、ミスティーヌの狩りは特別だからな。水魔法の進化した氷魔法を攻撃に使えるまでの魔力なんて、通常は有り得ないと思うんだが、ミスティーヌには使えるのが当然らしくて問題無く倒してくる。コレは気にしたもの負けな気がする。
時間停止付きの特製倉庫とも言える超容量マジックバッグのお陰で、少量ずつ、品を変えながらオークションに小出しにしているが、王都だけで無く、グローリーのギルドからも問い合わせが来るようになった。ダンジョンで無ければ他国に行かなきゃ出せない魔獣のアイテムも出したからバレても仕方ないが、『グローリーのギルドを通さない理由はなんだ。後ろめたく無ければ言ってみるがいい。』などと言い掛かりをを付けて来た。『出処がダンジョンだからと言って、娘が採って来た物なんだから、グローリーを経由する必要なんて無い。』と回答すると、『他のギルドの管轄に干渉するのか‼︎』と意味不明な返答が来た。
過去の教訓から、話を聞きつけたら絶対に口を挟みそうな王都のギルマスには、『グローリーの肩を持って介入するなら、今後、オークションの出品を考えさせてもらう。』と釘を刺しておいた。今の処、出品を切らした事は無いからな。そこの値段次第では王都のギルドに直接渡しているし。
グローリーからの余りにバカげた返答を無視していたせいか、『サルカンドの冒険者ギルドのギルマスは、不当な行為を所属冒険者にさせている。』という噂を流された。すると、それを聞いたあの3人組のパーティーが出て来て、グローリーのダンジョンでの一件を公表した。
『グローリーの冒険者ギルドは、新人パーティーへの支援が無く、金貨5枚で買えるマジックバッグの存在さえ公開していない。ダンジョン内での無法者を取り締まらないばかりか、力の無い新人がダンジョン内で消えても調査をしない。
ギルドがそんな姿勢だから、グローリーの冒険者達は自己中心的な考えの者が多く、ダンジョン内で危険な目に遭っている新人を見ても誰も助けようとしない。それどころか、見た目が綺麗な子や、か弱く見える子を見ると身勝手な言い掛かりを付けて、囲い込み悪戯しようとさえする。』
『私達はダンジョンの入り口で自称Dランクの男に誘われて、オークを狩る補助をする事になったのですが、オークの群れに囲まれた時、オークは俺が狩るから安心しろ。と言って誘ったクセに、男は私達を囮に使って逃げようとしました。私達では3人がかりでもオーク1匹倒せる自信は有りません。と最初から申し出ていたのに。
オークに殺される!と諦めた時、運良くサルカンドのギルマスの娘さんに助けられました。その上に入り口まで護衛して送ってもらい、九死に一生を得ました。』
『ギルマスの娘さんにスリープをかけてもらった男を、グローリーのギルドに連れて行き、受付に突き出したところ、「ギルドを通さずに依頼を受ける危険性が分かったのだから、良い勉強をしたな。今回の件は美味い話に騙されたお前達が悪い。」と受付では蔑まれて終わりでした。私達に謝罪も賠償も無かったので、自称Dランクの男は多分、そのまま問題無しの対応だったと思われます。
ですから私達は報復を恐れてこのサルカンドまで逃げて来ました。此処で初心者支援を得た結果、今ではEランクに上がり、近々、Dランクに上がれる予定です。』
王都の冒険者ギルドから発信されたこのパーティーの訴えは、グローリーにも伝わり、私に対する噂はあっという間に消えた。私の娘がミスティーヌで、Sランクと知っている者が消したらしい。ダンジョン内で複数のパーティーがミスティーヌに救われていたのも、噂が消えた要因の一つらしい。
グローリーでの対応は知らないが、ウチではランクに合わせた依頼しか受け付けないし、特に新人に対しては、採取系なら場所の指定もある程度する。そういう事が知れ渡ったせいか、近隣から冒険者になりに来る新人が増えて、懐かれている中堅処が苦笑している始末だ。
ミスティーヌが新たに作ったサリーナの工房経由で、回復や結界の付与アクセサリーがウチと商業ギルドで、新人支援アクセサリーとして優先的に売られているのも追い風だと思う。王都のギルドからも注文は来るが、此処で売った残りを回す形だから、更に他所のギルドには出回らないのだろう。それもあってか冒険者に優しいサルカンドって言われている訳だ。
【サイトバル兄様】
ミスティーヌの為にキュラスに越して来てギルマスになったんだけど、予想外の事態に悩む事が増えたなぁ。ミスティーヌはサルカンドにばかり行って、此処には来れないから、専属のラキアさんは、『何の為にキュラスに来たんだか…』って愚痴がこぼれるようになっているし。うーん、副ギルマスをする為で諦めるしか無いのでは?と思う。来れない原因は分かっているんだ。
エルーシャの処へは魔石を納めに頻繁に訪れているのに、此処へはエルーシャ経由でお土産だけを届ける妹は、随分と苦労しているらしい。『ハリシエダ様がギルドに来なければ、サイトバル兄様の処にも顔を出したい。』と伝えられてるし、俺達を避けてる訳ではない事はよく分かっている。
と思ってはいるのだが、なんだこれは⁉︎『みんな一緒にしました。』って届いたマジックバッグの中身は、お土産ではなく、ダンジョン産のとんでもないアイテムばかりだ。サルカンドのギルドなら兎も角、キュラスから売り出すにはこれは手に余るぞ!俺もラキアさんも王都に伝手はないんだ。どちらかと言うと、王都は鬼門。というミスティーヌの影響が大きいからな。
と頭を抱えていたら、いきなり現れたミスティーヌに、何故か俺は休暇を取らされて、ダンジョンに連れて行かれた。ギルマスの部屋からいきなりグローリーのダンジョンの24階層に飛ばれて目を回しそうになったよ。出て来た魔獣はアンデット系。私に隠れて、レイスやゴーストをホーリーで吹き飛ばすミスティーヌ。珍しくオーバーキルだよね。アイテムも拾いたがらないし。…アーナツカシイナァ、ココハミスティーガダイキライナバショダ。
という事で、ミスティーヌの目の代わりをしてボスを倒し、さっさとキュラスに帰って来たのだった。ボス部屋のボスから出た宝箱の中身を押し付けられかかった。危ない処だったが、なんとか逃げ切った。ミスティーヌは欲がないというか、家族愛があり過ぎるのだ。冒険者を引退した私に、アンデット系を近づけない効果のある『聖なるマント』なんて無用の長物だ。Sランクの冒険者をしているミスティーヌにこそ必要ではないか!アンデット系は苦手なのだし。ボス以外の魔獣のアイテムは『迷惑代だから受け取って!』と渡されたから、それは受け取ったけど。一財産になるけど、まぁ、ミスティーヌの気持ちだから全否定は出来ないよな。時間を掛けてひっそりと売り捌く事にしよう。
冒険者としてのミスティーヌは心配していないのだが、ハリシエダ様と上手く行ってないのが心配だ。悪いのは勝手な事をしたハリシエダ様だけど、元々、ミスティーヌがハリシエダ様をどう思っていたのかよくわからないんだよな。多分、嫌ってはいないと思いたいんだけど。




