表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/92

38 反省しました。

 翌日、ハリシエダ様とキュラスに戻って領主邸に入り、フェンリルご夫妻の歓迎を受けました。私の置いていったお肉を料理長が調理して出された晩餐の席で、集められた使用人を前に子爵夫人として挨拶をしました。以前から私を知っていた者は、『やっとお帰り頂けてホッとしました。』と歓迎してくれましたが、一部、特に初対面の貴族子女出身の侍女達からは良くない視線を感じました。


 そんな視線に侍女長のフェンリル母様が気付かない訳がなく、数日で侍女が入れ替わりました。本家へと返された侍女の代わりは、なんと、王太子妃様のお声がけ?で集まったそうです。フェンリル母様がランティス様に囁いた情報を、ワザと王宮で呟いたのを聞き付けた例の侍女が、『汚名返上の為に私は働きます!』と宣言して、王太子妃様のご実家の系譜に声を掛けて集め、送り込んできたそうです。皆さん、貴族子女にも関わらず、私への忠誠心を持ってキュラスに来てくれたそうです。


 貴族として行動する時の補助をメインにお願いした専属侍女が出来て、今まで逃げていた立ち居振る舞いやマナーから、貴族としての付き合いなどを教わる事になりました。半年かけて私に見直してもらう為に頑張る宣言をしたハリシエダ様の態度に、フェンリルご夫婦から私へも注文が入ったのです。『半年後、子爵夫人として立ち居振る舞いが出来なかったり、仕事が熟せないとしたら、それはミスティーヌの非になる。』と。


 逃げるのは簡単ですが、誠意を裏切るには私の意に反するので、貴族としての環境に溶け込める様に勉強する事にしました。専属侍女のマリエッタさんは子爵令嬢だそうで、『立ち居振る舞いは私の真似から入って下されば大丈夫ですよ。そんなに難しくは有りません。基本はゆったりと動いて、音を立てない。ここから始めましょう。』とニコニコして付き添ってくれます。


 『奥様が元平民なのは隠してませんので、「こんな事も知らないなんて…」と嫌味を言われたら、「あら、そんなに高い評価を頂けて光栄ですが、まだ知らない事の方が多いのでこれからも教えて下さいね、お願い致します。」と笑顔で返せば大丈夫ですよ。』


 等と、嫌味返しの秘策を教えてくれたり、侍女と言うよりはお姉様っぽい感じで教えてくれます。私の立ち位置としては男爵の上ですが、冒険者としては王太子妃様の専属なので、『シツコイバカには王太子妃様の影をチラつかせるのも有りですよ。卑屈になっては王太子妃様に叱られます。』とも入れ知恵されました(笑)


 侍女の入れ替えが有ったりして居心地の良くなった環境に、気を良くしたモリーノが輪をかけて結界を張ったりしたものだから、キュラスの私邸には悪意が近寄れなくなりました。安全で良いと言えば良いのですが、私邸に入れなかった方の対応とかは大丈夫なのでしょうか?


 モリーノの遣り過ぎにちょっとだけ苦笑しながら、整えた私室でアクセサリー作成を含む魔石手芸⁉︎のコーナーや、ポーション作成のコーナーなど、工房として使う場所を作っていると、


 『エルーシャさんから、ミスティーヌに伝言が届いていたよ。商業ギルドから魔石付きのバッグが届いているそうだ。私邸の方に運んでもらう事もできるけど、どうする?』


 とハリシエダ様が聞いて来ました。私は『仕事はエルーシャ義姉様の工房でします。』と断って、私室から工房に飛びました。(冒険者としての仕事を領主邸に持ち込む訳ないでしょ!)と私は思うのですが、ハリシエダ様は私が領主邸から居なくなるのを嫌うのです。でも、『私は領主夫人より、冒険者の仕事を優先します。』と宣言していますからね。私の行き先や日程を告げる事で折り合いを付ける事にしたのです。


 エルーシャ義姉様の工房に来て、魔石に空間拡張の付与をしていますが、受付の方が騒がしいですね。耳を澄ませて聞いてみると、王都の商業ギルドの方が来ているようです。サルカンドのダニエルの工房で受けていた『祈り』の魔石の件ですね。ダニエルのやらかしで、細々と受けていた契約が切れてしまったから、慌ててエルーシャ義姉様を頼ってキュラスまで来たのでしょうか?


 エルーシャ義姉様の言い分としては、『持ち込まれた魔石に付与をするだけなら受注しますが、私には魔石を加工したり、アクセサリーにするのは出来ません。』という事のようです。此処にはダニエルがいませんし、以前雇っていた子を辞めさせた後は誰も雇ってませんからね、彫金の出来る錬金術師が居ないのです。王都のギルドの要望は、『祈りの魔石はエルーシャさんが作れるのだから、以前と同じ商品の形で入荷してもらいたい。』という事なので、堂々巡りしているのですね。


 『祈り』の魔石は特殊で、付与してしまうと、付与した本人と、魔石が選んだ相手にしか見えなくなります。だから、以前のように工房でアクセサリーに加工してからエルーシャ義姉様が付与する形での商品化をギルドは望んでいるのですよね。なら、王都のギルドでアクセサリーに加工して、魔石付与だけをエルーシャ義姉様に依頼すれば良いと思うのですが、一手間増えるのを良しとしないのでしょうか?


 私が口を挟む問題では 無いので、そっとマジックバッグの付与に戻りました。付与しながら、紐で編んで魔石を包んではどうかな?と考えつきました。鉱物の錬金は人を選びますが、マクラメのように紐を編んで作るなら、魔力が無くても商品は作れます。『祈り』は兎も角、『回復』や『結界』を付与した魔石なら誰でも見えますから、気軽に服やバッグに取り付けられて使えると思います。


 バッグの魔石に空間付与が終わったので、魔石を編み込んだイラストを描き始めました。バッグに下げるタイプやミサンガのように縛る物、針金で編んだブレスレットやペンダントトップ。など、思いつくまま描いていると、話し終えたエルーシャ義姉様が来ました。


 『正直なところ、祈りの魔石なんてもう終わった商品だと思っていたので、ギルドの職員が食い下がっているのに驚きました。』と話し掛けながら、待っている間に描いたイラストを見せると、エルーシャ義姉様はいろんなデザインに感心しながら、


 『祈りを欲しがる若い娘が多くて需要が途切れないらしいの。だから、ミサンガは良いわね。針金で編んだペンダントトップはアクセサリーとしても人気が出ると思うし、結界や回復の付与魔石で作れば、商人や冒険者にも売れると思う!サリーナにも相談したいわ。』


 と興奮気味です。サリーナさんなら炎や風の攻撃魔法を付与出来ますね。イラストを見ながら、


 『紐や針金ならそんなに高くないし、この絵みたいにきめ細く縛るだけで作れるなら、作る人を選ばないから人も集め易いわ。後は、ミスティーヌが幾つ魔石を提供できるかね!』


 とやる気満々になったエルーシャ義姉様に、手持ちの魔石を思い出しながら、『ちょっとしくじったかな?』と思ったのは私です。


 盛り上がっているエルーシャ義姉様をクールダウンさせる為に、魔石の空間付与が終わったバッグを渡します。精算をしてもらって、ギルドに当てた請求書の作成をしました。今回も、あの子爵領の分だけは魔石代を上乗せした額になります。依然として魔石を用意出来なかったなんて、マジックバッグをキチンと冒険者に売っているのか疑問が出ますね。後1回で終わりますが、サミュエル兄様に問い質してもらった方が良いでしょうか?



 ダンジョンの魔獣のでは魔石代が掛かり過ぎる為、久し振りにG狩りに行きました。サイトバル兄様にG情報を聞いて、サルカンドとの境から山に向かって一掃しますか。山の中腹程でジェネラルをトップとした集団を発見しました。マップで確認すると、生きたまま捕まっている人は見当たりませんでした。結界を張った中に水魔法で水を満たして絶対零度で凍らせる作成です。結界に気付いたメイジがファイアー系の魔法を放って来ますが、結界に阻まれて私には届きません。大量に注がれる水に驚いてジェネラルも出て来ましたが、結界は壊せませんでした。水が溜まり、後は凍らせるだけです。


 マップで結界内に生命反応が無い事を確認して、全魔法を解除しました。キングやクイーンが育って無くて良かった。集落を潰せたので、200を超える魔石が手に入りました。ジェネラルやメイジの魔石は違う物に使いたいので分けておきます。


 集落内を全て探索し、攫われたと思われる遺体から身元が判るタグを回収しました。Gが襲撃して集めた財宝をインベントリに収納します。タグの持ち主の遺族に分けてもらえるように、アラン父様にタグと一緒に渡すつもりです。身元の判らない遺体も併せて、集落から離れた場所で荼毘に臥します。


 残りのGは集落内の家に放り込み、また結界で覆って火魔法で焼払いました。集落が残っていてはまたコロニーが出来る可能性が高まるので、潰す必要があるのです。焼いた後は土魔法で上から土を被せて整地しました。こうして見るとかなりの広さです。木で隠れていたとは言えよく見つからなかったと思いました。


 山を降った川べりにスライムも居たので50位狩って、『祈り』用の魔石も集めて帰りました。以前は一角兎を使ったなぁ〜と思い出していたせいか?モリーノから『一角兎が食べたい。』とおねだりが入りました。(笑) 両親の墓参りをしたついでに花畑の周辺の草原でサラッと狩って来ました。そう言えば、唐揚げって、何で飽きないのでしょうか?


 Gの魔石は結界と回復を半分ずつ付与して渡し、スライムの魔石は『祈り』用にそのまま渡しました。エルーシャ義姉様曰く、『商品が出来上がったら、サルカンドのサミュエル義兄様に卸先を相談するわ。ミスティーヌへの支払いが遅くなってしまって悪いけど、待っていてね。』との事。王都の商業ギルドの職員さんはご愁傷様かな?


 サルカンドで思い出しましたが、サリーナの工房用の魔石も集めなくては!オークやボアなどは狩り過ぎると低ランクの迷惑になるから、場所を選ばないと行けないのですよね〜。サミュエル兄様の報告次第ではあの子爵領で狩り集めようかな?低価格で交渉に応じたのは、低レベルの冒険者に対する支援策の為だ。って説明を忘れているのかな?まぁ、100ぐらいずつなら狩り過ぎでは無いですよね。後でこっそりと狩って来ましょう。


 エルーシャ義姉様に一角兎のお肉もお裾分けして、領主邸に帰りました。私邸の方にミニキッチンが出来ていたので、一角兎の唐揚げを始め、数種類の料理とデザートを作っていると、いつの間にか聖獣様御一行が集まっていらして、私室を使っての晩餐会⁉︎になりました。


 私はハリシエダ様に呼ばれて食堂に行き、料理長が作った夕飯を頂きましたよ。クリーンで匂いなどは消しましたが、ミニキッチンで料理していた事はバレているようで、恨みがましい視線を感じましたけど。あれは聖獣様のご要望で作った物ですから、分けられません。勿論、私は味見しました。


 夕食後、私室に戻ると、聖獣様方は皆、帰られたようで、モリーノだけが残っていました。私がミスリル鉱石やガーネットなどの宝石を取り出して、アクセサリーを作り始めると、満面の笑みのままポロポロと泣き出して、カーヴァンクルの雫を作ってくれました。唐揚げの御礼だそうです。(笑)


 そう言えば、湖の周辺のは全部拾って私のインベントリの中です。モリーノが新たに落とさない限りは見つからなくてなってしまった為、ギルドでは常時依頼が来ています。以前より値段が上がってしまったのは、私が売らないからかも?王都のギルドと、あの宝石店以外だったら…サミュエル兄様の顔を立てて、サルカンドでは以前の値段で対応してあげた方がいいでしょうか?


 『そう言えば、モリーノ以外のカーヴァンクル様は何処に居らっしゃるのですか?もしかして、この国には私の会っていない聖獣様はもう居ないとか?』ふと思い立って冗談っぽく聞くと、『そうだよ!ミスティーヌのご飯を食べたがらない聖獣が居る訳ないでしょ。』と、呆れたように言います。え?どう言う事ですか?まさか、聖獣様って食いしん坊じゃないとなれないの?


 聖獣は国毎にいるそうで、一応決まったテリトリーがあって、土地への加護の問題とか色々な柵もあったりして、其処から基本的に移動出来ないそうです。例外は複数子供が生まれた時らしいのですが、ここ数百年話を聞かないとか。因みに南の国には、火山にフェニックスがいるそうです。年を取ったフェニックスは火口に飛び込んで焼け死ぬ事で再生する特殊聖獣様なので、数は増えないそうです。この国に居る限りは会えない聖獣様だそうです。フェンリル父様情報なので確かだと思います。


 私の周囲に聖獣様が集い過ぎていると思うので、余計な事は考えないようにします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ