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セカンドライフ〜インベントリって素晴らしい  作者: 清香


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35 ダンジョン攻略! 逃げていた日常よこんにちは

 『ダンジョンクリアおめでとう、ミスティーヌ。一人でのクリアは如何でしたか?』


 女神様の問い掛けに私は少し考えました。周囲に他の冒険者がいた時は、神経を使ってはいたものの、寂しくは有りませんでした。階層が下がり、攻略困難になるにつれ周囲から人気が無くなり、気が付くと転移してサルカンドに戻っていました。


 『自重せずに過ごせるのは気が楽でしたが、感情を分かち合えないのは詰まらなかったです。聖獣様方が夕飯と朝食を共に過ごしてくれましたが、攻略は一人でしたので。初めは周囲の目が有るので、モリーノが居ない方が良かったのですが、周囲に誰も居なくなっても、モリーノは何処かに行ってしまうので、私も途中から意地になって一人で攻略するんだ!と…』


 話しているうちに、この半年近く、私はとても寂しかった。と気付いてしまいました。女神様の目が優しく私を見つめています。転移出来たから何とか過ごせたけど、そうで無かったら…


 『ねぇミスティーヌ、もう一度、ハリシエダと向き合ってみない?まだ直接会わなくて良いから、陰からこっそり観察して、今のハリシエダを見てあげて欲しいの。私の間違いだったかもしれないけど、それでも、私の目にはミスティーヌにお似合いだと映ったハリシエダを、本当に無理なのか、見定めて欲しいの。』


 あぁ、そうでした。その問題が解決すれば、女神様のお力で何とかして貰えるのでした。と考えていた処、緘口令が引かれた転移の件は、女神様のお力で第三者の記憶から既に消されているそうです。今、知っているのは私の家族と王太子様ご夫妻、それに、ハリシエダ様とマジェンダ様にまで絞られているそうです。リストランテ様のご家族と言う括りは私からは関係が遠過ぎるので。


 『あ、ごめんなさいね、ミスティーヌ。下の階に作る筈の鉱石置き場などはまだなの。ほら、分離して別の場所に発生させるにはマナを貯める必要が有ってね、それでね、このダンジョンの攻略難度も少し下げる予定なの。だから、今回。ミスティーヌには大盤振る舞いしちゃった!』


 と、ニコニコと話題を変える女神様に脱力してしまいました。


 『貴重なアイテムを沢山頂きまして、ありがとうございます。エンシェントドラゴンの宝冠とティアラは王家に献上させてもらいますね。女神様にはアクセサリーなどを、私が後程作成して奉納に上がります。ので!ダンジョンの攻略難度低下については、是非とも、教会にて神託を降ろして頂きます様、何卒!よろしくお願い致します。』


 私を通して下知なんてさせないよね!という意志を目力に込めてしまいましたよ。正直なところ、20階層迄はAランクのパーティーなら行けるのですが、私の為に開放してくれた21階層の火山辺りからかなり難しく成るのですよ。だから、ガーネットリリィは高額商品になって、アラン父様に叱られるのです。


 私はミスリルゴーレムが女神様のお詫びの品だったと聞かされて、ホッとしました。今後はタブン出ないそうです。『頃合いを見計らって神託を出す。』と、女神様に言質を貰って、一旦、サルカンドに戻る事にしました。その前に、此処に籠って、アクセサリーや手芸などを大量作成しますけどね。祭壇が在るお陰で、聖域になっていて気持ちが良いのですよ。


 因みに、31階層は閉鎖空間のままで、私以外の攻略者には、ゴールデンドラゴンを倒せば、1階に出る転移陣が出るそうです。…エンシェントドラゴンも私のみで、シーサーペントは、10Mに満たないサイズに縮小されるそうです。今のままではマナの回収率が悪いので、階層毎の規模を縮小して、他のボス等も押し並べて弱小化するそうです。


 聖域化している所為で、聖獣様も居心地が宜しいらしく、入れ替わり立ち替わりでいらしてはいろんな事を教えてくれます。先日はエルーシャ義姉様から、『教会から魔石付きのバッグが送られて来たから、付与をお願いします。』と連絡を受け、キュラスの工房に飛んで空間の付与をしてマジックバッグを作って来たついでに、ハリシエダ様の生活をこっそりと覗いて来ました。


 ランティス様のご両親から報告されましたが、この半年で、内面が著しく成長した様子です。公私の私の部分が殆ど無いかの様に領地経営を頑張る姿は、私の目から見ても格好良く見えました。女神様のお力で記憶操作された結果、貴族の間には、私は王太子様ご夫妻の依頼で、各地の魔獣対策に出回っていて、領地に帰っていない事になっているそうです。


 その為、最近では、ご両親の態度も結婚式前に近い状態に戻りつつあって、頑張っているハリシエダ様の援助をしているそうです。私は悩んだ結果、マジェンダ様を訪ねる事にしました。女神様曰く、『マジェンダには記憶操作をしていない。』との事なので。


 執務室にマントを纏って入ると、コソッとメモを落とします。マジェンダ様以外に誰も居ない筈の部屋の床に、カサッと音がして紙が落ちました。マジェンダ様がギョッとして拾った紙には『ミスティーヌですが、お時間を頂けますか?』と書いてあります。


 『ミスティーヌさん、今、この部屋の中に居るのですか?』


 と、小声でマジェンダ様が囁きます。私は机の前に回って、


 『はい。此処にいます。相談したい事がありまして。』


 と言いながらマントを脱ぎました。ほぼ、半年振りの対面です。緊張してしまいます。


 『元気そうに見えるけど痩せたかな?半年前は愚弟がとんでもない事を仕出かしてしまい、お詫びの言葉も無いくらいだ。』


 と、頭を下げられたので、驚いてしまいました。この場での謝罪は受け取って、私も、今までに送られてきた書状などを放置したまま、中を見てすらいない事を伝えました。尊い方の仲介が有り、今になってやっと、ハリシエダ様に向き合う気持ちが生まれたと伝えると感謝されました。


 転移の件に付いては、尊い方の御技でほとんどの出席者からの記憶から消えて、私に関する異なる情報が植え付けられた事を伝えると。『そうだったのか。』と、頷かれました。4ヶ月程、ハリシエダ様を見捨てたご両親が、最近、また面倒を見始めたのが不思議だったそうです。しかも、私の話しをしようとすると、『王太子様も新婚のミスティーヌに配慮が無い。』と、何故かあさってな対応をとるので訳が分からなかったそうです。


 マジェンダ様から見たハリシエダ様は、最初の3ヶ月程は甘えが酷い有様で、ミスティーヌが可哀想だから絶対に別れさせてやる!と思っていたそうです。その後、諌めた結果、仕事に対する態度が変わって来て、最近では内面も成長が窺えるそうです。式の時に此処まで成長していたら、あんな酷い事は仕出かさなかっただろう。と、それを見抜けなかった自分を恥じているそうです。


 私はご両親の公爵様とはあまり交流が無かったので、想像でしか有りませんが、学業が優秀だからと、ハリシエダ様をご両親が甘やかしたのでしょうね。きっとマジェンダ様の教育が無ければ、私は結婚を決めなかったに違いない。と話しを聞きながら思いました。


 マジェンダ様は、手紙には書いた事なんだけど、と前置きして、ハリシエダ様が暴挙に至った考えを教えてくれました。根底には私に対する愛情しか無い。と言い切るのです。本当でしょうか?


 『うーん、ハリシエダ様の愛ですか。確かに愛されているのだろうなぁと思う事は有りましたが、何処かズレていたんですよね。私を愛している自分を愛している様な、上から目線?貴族と平民の違いなんだろうなぁ。と、諦めて理解したつもりだったのですが、諦められなかったのですよね。きっと。心の奥に仕舞い込んで蓋をして、諦めたつもりで居たから、私も爆発してしまったのでしょう。

 何度断ってもプロポーズを繰り返して来るので根負けして受け入れた結果、私が2年掛けて頑張って勝ち得た結果を譲ってまで一緒に居る努力をしたのに、それに見合う物を返す処か、最悪な事をされました。宴での皆様からの挨拶も、私を卑下する物が殆どなのに、隣りで聞いている筈のハリシエダ様から、私を労る様な発言も無く、何の為のプロポーズだったんだろう?私は何の為に苦労したのだろう?あの時はそれしか考えられず、飛び出してしまったのですよ。』


 あの場で私が思った事をマジェンダ様に言うと、また、頭を下げられてしまいました。


 『あの宴の素晴らしさは、出席した貴族達の賞賛とやっかみの嵐だったよ。アレをミスティーヌが一人で用意した。とハリシエダから聞き出した時は、本気で縁を切ってやろうかと思ったよ。』


 と遠い目で呟かれました。


 『部屋の装飾、各テーブルに生けられたブーケ。そして、珍しい食材を使った美味しい料理。アレを用意出来る子爵家など他には居ない。流石、公爵家だ。と、リストランテ家を持ち上げる事で自分の矜持を保った貴族は少なく無かっただろう。しかも、王太子様ご夫妻がお忍びで駆け付けるなど、公爵家の主催でも無ければ有り得ない事だった。それなのに、用意したのはSランクとは言え平民のミスティーヌだし、王太子妃様と繋がりが在るのもミスティーヌと言われれば、面白くないのは招かれた貴族だ。その上、祝辞代わりに嫌味を言ってもミスティーヌには笑顔で流される。』


 『いや、貴族相手に怒るなんて度胸は有りませんよ。しかも相手は酔っ払いの集団でしたから。』


 『それだけ成熟した考えをハリシエダが持っていたなら、いや、ミスティーヌに矛先が向かない様な気遣いが出来なかったのが問題だったな。公爵子息として傅かれる生活しかしていない上に、過保護にしていた私達のせいか。まぁ、笑顔で流してしまうミスティーヌの態度を大人の対応と気付けなかった、表面しか見ないハリシエダはやはり子供だったのだろうな。』


 私のツッコミに、更に落ち込んでしまったマジェンダ様に、私も慌ててしまいます。どうしよう?言い過ぎた?とオタオタする態度を見て、


 『そんな処は子供っぽくて可愛いのだが、基本的に平民の方が成熟度が早いのだろうか?』


 と、笑うので、私も少し考えて、


 『私は特殊な例だと思います。幼い頃に両親を伯父に殺されて、私も殺され掛けました。アラン父様に拾われるまでは、幼児ながらに1年以上も保護される事も無く野生児で過ごしましたから、普通の平民とは基本的に何かが違うのでしょう。

 話しを戻しますが、尊い方のお力添えが有り、私の秘匿を知る者は極小数になりました。その方は、あの出来事の起きる前の状態に出来るだけ戻したから、もう一度、ハリシエダ様に寄り添えないか、確認しなさい。とおっしゃるのです。』


 『寄り添って貰えるならお願いしたいが、私はハリシエダでは無いから、ミスティーヌに許せるかの判断は付かない。私が力を貸すとしたらどうすれば良いのかな?』


 とおっしゃるので、


 『私が積極的に慕う気持ちを持っていないので、ハリシエダ様からも私に対する執着?が消えているのなら、このまま半年後に白い結婚で終われば良い。と思ってしまうのです。今現在の、ハリシエダ様のお気持ちや考えを聞き出して頂けませんか?』


 とお願いしました。女神様の考えに添うには、ハリシエダ様の本音を知りたいと考えました。


 『執着。ね、そういう見方もあるのかな?ハリシエダは一途なだけだよ。アレは甘やかされて育った所為で貴族らしからぬ純情な処があってね。遅い初恋だから、ミスティーヌだけしか見えないだけだよ。それは私が保証できる。私からの助言を受け入れてくれるのなら、アレを信じて欲しい。』


 と笑われました。えっ?半年も無視して放ったらかしているのに、大丈夫なの?と思いながら、マジェンダ様がキュラスに行って聞いてくれる事を約束してくれたので、私もマントで隠れて立ち会う事になりました。


 先行で訪問を伝えて、約束の日時にマジェンダ様と転移する事にしました。マジェンダ様も忙しい時間を割いてくれているので、不要な時間の短縮です。訪問までの空いた時間で、サルカンドに行き、溜めた手紙を読んで来ましたが、最初の数ヶ月分は思わず焼いてしまう程の内容でしたが、最近の物はお付き合い始めた頃のハリシエダ様を彷彿とさせる物で、気持ちが落ち着いて来ました。


 自分勝手な言い分としか思えない内容だったのが、私を思い遣る内容に変わって来て、私が何故怒ってしまったのかも理解したみたいです。私が独りで準備した事に対する謝罪も、最初の頃は誰かに言われるまま、心が伴っていない様に感じましたが、最近の物は何故、一緒に準備しなかったのだろう?という反省になっています。


 公爵夫人からのお詫びは、義理の娘に対する物というよりは、貴族から平民に対する内容で、ハリシエダ様の愛情が有るうちに機嫌を直して戻って来る様に。と、見当違いの叱咤すら書かれていました。コレだけはマジェンダ様に見せて、『例え戻っても、公爵家とは関わりませんが、よろしいですね!』と言うと、『私の代になった時に考え直してくれれば良いよ。』と言質を取りました。

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