14 王都到着〜Sランクになってからの日常⁉︎
兄様と王都のギルドに着くと、速攻でギルマスに部屋に連れ込まれました!『花を見せて下さい!あぁ、望月華をまた見れるなんて!早く出して下さい!』キラキラと輝く瞳⁉︎のスキンヘッドのこの方は、前回お会いしたギルマスとそっくりではありますが、本物? パッカーンッ!と良い音と共にハリセンを手にした受付嬢さんが現れて、ギルマスは頭を抱えて蹲っています。兄様がマジックバッグを渡すと手続きをしてくれました。『中身を確認させて頂きます。』と、ギルドのマジックバッグを取り出すとささっと中身を移してしまいます。受付嬢さんのあまりの素早さに、ハッと我に還ったギルマスはただジーッと望月華を見つめています。
ギルマスの熱い眼差しに負けて『あの、数本でしたらお譲り出来ますけど?』と声を掛けると、サッと金貨を5枚も出して『では5本程お願い致します。』と間髪入れずに応対するギルマス。なんでしょうか、とても可愛いクマさんに見えて来ました。流石に望月華1本で金貨1枚なんてぼったくりでは⁉︎と思い、望月華を中心に月夜野草と月光草を5本ずつ入れ、周りを香りの良い花であしらって、リボンで縛ってブーケを作り渡しました。金貨を5枚も頂くならこの程度で良いかな⁉︎と作ってみたのですが、とても感激されてしまいました。…但し、私はお花屋さんでは無いので『今回だけの特別で、他の人にはしませんよ!』と釘を刺すのは忘れませんでしたけど。
翌日、王太子様の結婚式は華やかに、厳かに執り行われて、王都は祝賀モード一色でした。花々で飾られた王宮での夜会は、特に暗闇の中で輝く花が艶やかで、王太子夫妻は幸せに満ち溢れていた。と、後々まで語られたそうです。マジェンダ公爵様から贈られた花々は中でも一層輝いていたとか。まぁ、マジックバッグの性能の差が出たとしか言えませんね。…時間の止まるインベントリと同じ性能を求めるのは酷でしょう。多分。遅出しジャンケン狡い。とか言いませんよ。忖度した結果です。
その陰でこっそりと私のSランク昇格の認定式が行われて、目立つ事なく私はSランクに昇格してプラチナカードを手にさっさとサルカンドに帰りました。と言っても、帰り道はモリーノが一度行った処なら転移で飛んでくれるので、あちこちに寄り道をしてお土産を買い込んだり、山奥や湖などで兄様と思う存分魔獣を乱獲⁉︎して経験値を上げ、日程いっぱいを使って帰宅しました。
1日だけゆっくりお休みしてギルドに顔を出すと、ラキアさんに呼ばれました。王都でSランクに上がって来たので、早速Sランク用の依頼票を見せられて、『持ってる物は全部出して下さいね!』と脅され⁉︎ましたよ。解体場に移動して、ワイバーンやキングサーベントといった素材を次々に出して依頼票を消化していると、採取品の依頼票の中に『カーバンクルの涙の雫』が出て来ました。さり気なくラキアさんに依頼元を聞くと、『コレは…高級宝飾店の店長からですね。』と言われたので、アノ店カ!コレはわざわざ売る必要は無いな!と知らんぷりして、出した素材分の依頼料を計算してカードに入れてもらう事にしました。
『カーバンクルの涙の雫』の依頼で私の対応に不審を抱いたラキアさんから、『もしかしたら持ってるの?』と聞かれました。『実はね〜』と、家族に贈り物を買いに行った時の話しをして『Sランクにもなった事だし、例え指名依頼だったとしても、あの店に関わる依頼は受けないわ。』と宣言すると、ちょっとだけ呆れられちゃいました。でも、モリーノも嫌だ!ってテレパシーで伝えて来てるので、問題有りません。私にはね。…それに、運が良ければ誰かが拾ってくるんじゃ無いかな?
あっ!兄様には私特製の時間停止の付いたマジックバッグを渡してあるので、採取品について今回は別会計です。パーティーでの活動が有るのに、私のワガママに付き合ってもらったお礼に作って贈りました。今まで持っていたマジックバッグより高性能で容量も多いのです!とは言え、バレると煩いのがいるので、パーティーメンバーには内緒ですけどね。見た目はポーチで目立たない筈⁉︎
ギルドを出ると屋台で肉串や軽食を買いながら工房に向かいます。丁度お昼ですから皆さんへの差し入れにします。結構な量の差し入れを渡してランチをみんなで楽しんだ後、エルーシャ姉様に工房の状況を聞いて、足りない魔石の補充などを始めました。幸い黒字運営なので、資金の補填は考えずに済みました。問題は逆に依頼量の多さですね。特に新商品として発表した、カリヤ達の魔力蓄石への依頼数が激増してます。魔道具工房との提携で始めたのですが、予想以上の展開をしています。
魔道具工房では、今まで魔力の問題で売れ行きの悪かった欠点が補われ、多少高価でも需要が見込めると開発が進んでいるそうです。中でも飲食店から要望の多い冷凍庫用の大型魔力蓄石の発注が多過ぎて問題の様です。一応、依頼の受注は止めているものの、期日には間に合いそうも無いので、私も作り始めましたが、根本的問題を解決する必要性が有りますね。
表向きには納品ギリギリまで介入せずに見守り、間に合わなかった分だけ補填しました。大きな魔石自体はギルドで買い入れて有ったので、純粋に魔力付与、ようは3人の魔力が足りなかっただけとも言えましたし、それを3人だけで無く、みんなに理解してもらう為の見守りでした。
エルーシャ姉様を呼んで今回の大量受注を受けた経緯を聞くと、問題は勝手に受注を受けて来たダニエルさんに有りました。彼は錬金術の仕事の中でも、本当は魔道具を作りたかったそうですが、才能が無くて諦めた過去が在るそうです。憧れていた魔道士ギルドの依頼を受ける事で、彼の中で何かが起こったのでしょう。エルーシャ姉様が気付いた時には異常な数の依頼を受けてしまっていて、でも一旦受けた依頼を断る事は出来ず、納期を延ばしてもらうのが精一杯だったそうです。
そもそも工房の代表はエルーシャ姉様です。何故、ダニエルさんが窓口になったのかを問い詰めると、学生時代に面倒を見てくれた先輩が魔道士ギルドに居て、口利きを頼まれたのが始まりだそうです。頼られたのが嬉しくて、『任せて下さい。』と大見えを切ったのだそうです。
カリヤ達に作れる数の確認もせず、『わざわざ仕事を取って来て遣ったのだから作れ。』と仕事を投げた話しに至っては、流石に私も怒りました。『ダニエルさんが、ダニエルさんの為に作った仕事で、彼女達がこれ迄どれ程大変だったか理解していますか?』と問いただすと、『でも、この件以外で彼女達は仕事を取っていないし、ちゃんと納期に間に合ったじゃないですか。問題無かったと思いますけど?』と少しも反省していません。『私が冒険者の仕事で常駐出来ないから、連絡の取れるエルーシャ姉様に代表をお願いしている意味が分かってますか?今回の魔力蓄石の件は、エルーシャ姉様が気付いた時には納期を延ばすだけで精一杯で、取り敢えず魔石の確保で大変だった。と言う結果報告?と言うか、事後承諾しか来ていません。だいたい、私が帰れなかったら間に合いませんでしたよね!そうなれば依頼未達成の評価が工房に付いてしまったのです。工房にとってマイナス評価が付く意味が分かっていて、それでも問題無かった。とダニエルさんは言うのですね!』思わず、ダニエルさんの態度に切れてしまい、一気に捲し立てましたよ!激怒した私の態度にダニエルさんはやっと『悪かった。』とだけ言いましたけど、反省…してませんよね?
私は絶対許せなかったし、このままでは冷静な判断が付けられないと思って、この後はエルーシャ姉様にお任せしました。いつも一緒にいる人の方が正しい判断が出来ると思ったので。エルーシャ姉様の下した罰は『3人に心の底から謝って、其々に欲しい物を1つずつプレゼントする。』と言うものでした。甘過ぎると思ったのですが、ギスギスするよりマシ。と諦めましたけどね。後から『イージャがね、ダニエルさんに恋しているの。2人はその応援の為に頑張っているのよ〜』とエルーシャ姉様に聞かされた時には驚きましたよ!道理でポーション片手に必死に作っていた訳ですね。私はこんな無茶な依頼何で受けたの!って内心憤っていたのに。恋する乙女はいじらしいですけど、ダニエルさんにそんな価値があるの?と思ってしまいました。
1週間程掛けて、私は自分のノルマの付与魔石を多めに作った上で、久し振りに祈りやクリーン等希少性の付与魔石も作って在庫数を貯める事にしました。魔力蓄石も内緒で作り、マジックバッグに仕舞うと一括してエルーシャ姉様に運用をお願いしました。当然ですがダニエルさんには内緒です。今回の件で彼から信頼は消えましたからね。変な注文を勝手に取ってこられても困りますから。それから、受注はエルーシャ姉様にのみ任せて、他の人は受けられなくしました。商業ギルドにもキチンと届けましたよ。エルーシャ姉様のサインがない受注書は無効です。って。
ついでにポーションも多種作成して、マジックバッグに詰めてアラン父様達へのプレゼントを作りました。…ギルドでは人目に付きやすいので、夜、家で渡したのですが、サミュエル兄様の分を家用にするので、アラン父様はギルドに置いて緊急対応に使う。と喜ばれました。『常備薬みたいに、使った分を補充するから足りなくなる前に言ってね。』と言うと、『家庭用常備薬かぁ。それは良い考えだね。ミストの作ったポーションは性能が良いし、何か有った時に心強いよ。』と誉められました。サイトバル兄様の分はエルーシャ姉様にお願いしました。此方へは2セット渡しましたよ。
この一週間程は、昼間は工房に詰めて付与魔石などの在庫を確保。夜はモリーノの雫石や、インベントリのビーズを使ったアクセサリーを作って過ごしました。此方は簡単には日の目を見せられませんけどね、折角だからなんかの形にしたかったのですよ。パールにプレゼントしたら喜ばれそうですよね。私もモリーノの雫石なら常に身に付けていたいです。
商業ギルドの受付をしているアニス姉様から頼まれて、容量の小さなマジックバッグ用に、可愛いポーチやリュック等を作りました。コレにポーション各種を入れて、常備薬キットを作ったのです。プレゼントした時に『冒険者なら誰でも欲しがるだろう。』とアラン父様にも言われたのですが、アニス姉様から、『一般の人に広く売った方が良いから、商業ギルドで販売したいの。』と提案されるとね、間口が広い方が良いかな⁉︎と思ったのでした。
でもね、ギルマスからは、『次からはマジックバッグだけの納品をお願いします。』と依頼が来ました。『ポーション自体はあちこちで売っているけど、安いマジックバッグは無い。だったら、マジックバッグのみで良いのでは?』と言う事だそうです。『ポーション専用なら時間経過が付かなくても良い。容量は…少なくともポーションが10本以上は入って、金貨3枚で売れる大きさで決めて欲しい。』とお願いされました。一般的な価格だと荷馬車1台分で金貨何十枚とかって言うけど、アラン父様と相談して決めよう。




