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ファムファタルな君  作者: 一稀美
6/6

part6

こんばんは!暑いですね〜。

今日は今年初めてかき氷を食べました。

夏が始める合図が聞こえた気がしました。

遅いですねぇ〜!!

いちごのシロップの偽物の色と味が大好きでこの変わらない味をいつまでたっても美味しいと思える人間でありたいと思いましたね!!!

「いらっしゃいませー」


とある某チェーン店の居酒屋で始められる打ち上げ。6人用の席に俺を含めた6人がきっちり座る。その机の上は各々のお通しやら取り皿やらメニューやらが広げられている。ただでさえ定員丁度のテーブルは既に心持ち窮屈だった。

そして俺の横には何故か君が座っている

恋愛偏差値もあまり高いわけでなければ経験豊富でもない俺が言うことは世間の常識からズレているのかもしれないけど、本来グループで食事をするとカップルは隣同士に座るか正面同士で座るかが普通じゃないだろうか?少なくとも俺はそう思っていた。

けど彼女とその彼氏は比較的遠くに座りあっていた。特に喧嘩をしているからではなく、極々それが普通であるかのように。どうも彼氏が仲のいい男友達の横に座っただけなんだろう。

でも俺の知っている君はこんなドライな付き合い方を好む人じゃなくて「絶対隣にいて!」っていう人な気がする。隣の君と腕が微かに触れ合っているのは狭さのせいなんだろうか。


とりあえず全員飲み物を頼む。俺はどうしよう。あまり酔いたくない気分。すでに音楽で気持ちよくなったこの身体。酔って正常に考えれなくなってしまうのは勿体ない。君の前で何かを口走ってしまうのも嫌だ。もう君のことなんてこれっぽっちも気にならないんだっていう素振りを崩したくはなかった。

とりあえずライムチューハイにしようかな。まずライムが苦くて嫌いだから。チビチビ飲んでたらそんなに悪酔いしない気がするし。


「えーと。枝豆とポテトフライ2つ。唐揚げ。シーザーサラダ。手羽先。柚子胡椒味で。天ぷらの盛り合わせ。……あと飲み物がレモン酎ハイ2つ。梅酒1つ。……そっちなに飲む?」

グループの中で一番取り仕切っているハキハキ系女子が片方の机代表で注文する。その言葉に店員さんの顔がこちら側をむく。

「ライムチュ……。」

「赤玉パンチといちごサワーとソルティドッグで!」


は?

君が俺の言葉を遮るように勝手に注文をした。俺ライムチューハイの気分だったんたけど?君はニタニタ笑いながらこっちを見ていた。ねぇ褒めて?そういいたげな顔で。

「俺ライムだよ?」

「ライム嫌いでしょ?〜ソルティドッグが一番好きって言ってたじゃん?」

「言ってた?よく覚えてんね。」

「えへへ。当然だよ!」

言った。俺は君にそう言ったことがあるような気がする。

君と飲みに行ったあの居酒屋。ひっそりと大通りから外れた路地に佇んで、俺たちは決まって角のカウンターコーナーに座っていたあの居酒屋で何気なく言った気がする。二口くらいしか飲んでないのに、ほっぺたを赤くした君が「ねぇ〜〜〜〜しあわせ〜〜」そう言っていたのを思い出してしまった。

なんでこの女はわざわざこんなことを言うのだろう?


「かんぱーい!」

たくさんのグラスがぶつかり合う。形だけ大きな分厚いグラスがぶつかる音と中の氷が揺れ動く音とが響きあう。


一気にグラスの半分を空ける者。

ほんの一口舐めるように少しずつ少しずつ飲む者。

やたらと喉ごしをたてる者。

俺みたいにあんまり味を分からずに取り敢えず頷いている者。

お酒は飲み方に個性が現れると思う。例えばジュースなんかは皆同じように飲むじゃない。確かに飲む量に個人差はあるよ。けどその行為によって為人が見えるなんてことはないんじゃないかな。俺はそう思う。


そして君のお酒の飲み方。まったく飲む気のない君の飲み方。

今俺の横に座っている君は奮闘している。君の頼んだいちごサワーは果肉がごろごろ入っているお酒だった。多分君はこの果肉が目当てだったんだろうな。乾杯と共に何気なく混ぜて沈んでしまったいちごの果肉。これを取りたくてソーダスプーンでお酒をかき混ぜながら奮闘してる。炭酸が泡になって、混ぜられてまた生まれて、また泡になる。飲み手に刺激を与える為に生まれてきた炭酸がこんなに無残に消えていくことに気にも留めずに沈んだいちごだけを見てる君。こんなお酒の飲み方がある?

まったく飲む気ない。それが可愛い。本当に可愛い。一所懸命な子どもみたいで大好き。

一緒に飲みに行ったあの日々を思い出した。

横にいる君はあのころと何も変わらずにいる。


「なに見てんのよぉ。」

「別に見てないよ。」

「ふぅん?今目が合ってんのになぁあ。」

「合ってない合ってない。気のせいだよ。」

突然俺の視線に気付いてたこっちを見てきた君にあくまでそっけなく言うのはこれが限界だった。

「ゆうはくん全然変わってないねぇ!」

「そう?ちょっと髪の毛伸びたよ。」

「それでちょっと黒染めしたよね!」

「未だかつて染めたことないよ。」

「へへへ!そっかぁ!まちがえたぁ!」

茶化して。友達らしく。友達らしく。2人で笑い合う。


彼氏の水沢さんが席を立つ。こころもち君に触れていた腕が離れた気がする。そんな些細なことが、本当はそんなこと起こっていないのかもしれないけど、それでも俺の心が冷たくなった。やっぱり変な期待は抱いちゃだめだ。

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