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ファムファタルな君  作者: 一稀美
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Part2

恋愛小説を書くと自分の女々しさに驚きます

いや実際こんな女々しい感情は持ったことないんですけどね!!

だからこそ憧れというか、身を焦がすような苦しい恋を書いてみたくねりました。

リアルな景色が頭の中に広がりますように。

自己紹介ってのをまだしていなかったような気がする。

俺は優陽。ゆうはって読むんだけどね。ごく普通の大学3年。大阪の中で田舎の方で一人暮らししてて、寝れない夜にはギターと遊んで、休日は形だけ立派なカメラを持って漠然とした景色をフィルムに収めて、普段は塾講師のバイトをしながら無機質な生活を送る。そんな大量生産型の大学生。趣味は音楽に触れること。聴く音楽はもちろん邦ロック。ヘアスタイルは緩くパーマを当てたマッシュ。そして、俺史上最大のハートブレイク中。こんな言い方したらすごい軽く聞こえるかもしれない。けど俺の中ではもう何も手が付かないくらいに苦しい日を過ごしている。この世界の色なんてもう失われたみたいに灰色でくすんだ日々を過ごしているんだ。こんな俺に力をほんの少し与えてくれるのは音楽しかない。今日も俺はイヤホンを耳の中に差し込みガンガンに音楽をならす。頭の中の雑念を取り払うように、そして君のことを少しでも忘れる為に。


あ、やっぱりだめだ。

音楽は間違いなく俺に元気を与えてくれる。寄り添って辛い傷口を舐めてくれる。けどこのアーティストだけは、あの日からあの別れの後から1曲も通して聴けていない。なぜなら俺と彼女を会わせてくれたバンドだから。俺たちの過ごしてたきた時間は常にこのバンドの音楽で溢れていたから。君と俺が1番好きなバンドだから。


彼女、美緒と出会ったのはそのバンドのライブ会場。元々Twitterでお互い相互フォロー。ライブの前の日から会ったら写真撮ろうねとかそんなたわい無いことを話し合ったりしていた。出会った時の印象は単純に可愛かった。ライブが始まることの興奮と照りつける太陽の元で動き回っていたのとで額には汗が浮かんでいてメイクは早々崩れ気味だったけど。

その日のライブは最高だった。音楽を体全体で浴びて音に酔いしれながら会場をあとにしようとしていた。

「ゆうはくん!!」

後ろから俺を呼ぶ声。振り向くとそこにはより一層メイクの崩れた君がいた。

「おぉ美緒さん!!ね!最高だったね!」

「ほんとに〜〜!!!めちゃくちゃよかった!あぁ幸せ!!」

「ね!!あれ?1人??」

「連れの人とはぐれちゃったの!一緒に出口まで行っていい?」

「なるほどね!もちろん!!それよりさぁ新曲まで聴けるなんてさ……」

この日が俺達の始まり。この日会場から1キロある駅まで一緒に歩いたけど話が尽きることがなかった。ライブの興奮とすごく話が合う女の子への興奮。思えばいつもの俺ならきっと君のことをただの友達としか思わなかっただろう。ただこの日の俺はライブで頭を侵されていた。正常な判断をすることが出来ず理性を抑えることが出来なかった。汗と涙でテカテカした頬が街頭に照らされる君に俺は恋をしてしまった。


じわじわ誰かのことを好きになる。

ゆっくり誰かのことを好きになる。

気付いたらあの子のことが好きだった。

世の中ではこういった表現をよくする。これは正しいのだろうか?ゆっくりゆっくり好きになる?そんなこと存在するのだろうか。俺はそんなこと不可能だと思う。出会って好意を持つのは一瞬。その一瞬に気付いたら最後もう完全に好きになっているというのではないだろうか。

じっくり好きになっていいなら俺は君を好きにはならなかった。

正しく言うと好きになる権利はない人だった。

君は初めてあったその日からずっと誰かの彼女だったんだから。


美緒は大阪の大学に通う4年生らしい。つまり俺の1歳年上って言うことになる。年上。けどどことなく妹みたいだった。甘え上手で守ってあげたくなるような女の子。そのくせ俺のしんどい時にいち早く気付くのも彼女でそんな時は決まって「お姉さんが話聞いてあげる」って言ってた。話してたら途中から肩にもたれかかってきて最終的に頭を撫でているのは俺の方になっていたような気がするけど。真っ直ぐこっちを見つめる瞳に悪戯げ笑う唇、全てが魅力的だった。


出会った日の帰りLINEを交換した。それから怒涛のやり取りラッシュ。ライブの余熱が覚めないうちに夜通し。その時分かった事は彼女は彼氏持ちだということ。ライブの連れ添いそれ自体が彼氏だったということ。そしてその彼氏とは倦怠期だということ。彼はもう私の事好きじゃないんだって思っているということ。彼氏持ちなら好意なんて持つのはどうかしている。そんなことは分かっていた。分かっているけど彼女のセリフが僕への可能性を誇示しているような気がした。もはや彼氏持ちなんて関係ない。君にまた会いたい気持ちでいっぱいになっていた俺は明け方には次に個人的に遊びに行く約束まで取り付けていた。


初デートの日。もしかしたら君はこの日をデートとは思ってなかったかもしれない。単なる遊びの日だったのかもしれない。けど俺にとってた初デート。忘れることの無い初デートの日。君は柄に柄を合わせたような統一感のない服装をしていた。はっきり言って趣味が悪かった。全く似合っていなかった。笑顔が輝いてる君はそんなごちゃごちゃした服を着る必要ない。もっとシンプルな服装の方が似合うはず。そうは思っても似合わない服装を可愛いと思って着ている君が愛おしく見えていた。

「ゆうはくんはオシャレだよね。」

「いやまぁ量産型ですから。」

「私の服今度選んで!」

何気ない会話が嬉しかった。随所に現れる『今度』『次は』。俺は俺達の未来があるのが普通だと錯覚を起こしてしまったんだ。


初デートで流行りのラーメン屋さんに行ってその一週間後にまたデート。その次の週またデート。

服屋さん。ボーリング。カラオケ。カフェ。ゲームセンター。動物園。自然公園。

俺の中で彼女の存在が大きくなるのは当たり前じゃないだろうか。

お家デート。お家デート。お家デート。お家デート。

これも愛の形。君を俺の中に閉じ込めておきたくなるのも当たり前だ。

俺達はどちらからも彼女の彼氏のことについて口にしなかった。少なくとも俺は聞く勇気が持てなかった。言ったら全部がなくなってしまうような気がしたから。でもどちらからもなく愛は伝えた。俺は君を、君は俺を、好きだと言っていたその言葉だけを信じて疑わなかった。あのダサい服装がデートを重ねる毎に俺の好みに変わっていくその事実を信じてた。


思い出に耽り涙を流す夜を今日もまた繰り返す。午前2時。明日はこのバンドのライブの日なのに。

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