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田耕も終わり、苗も無事に育ったので、
「今から田植えを行います。」
「あんちゃん、田植えって何?」
「おう、この苗を目の前にある田んぼって言うんだがな、ここに植えていくんだ、田んぼに植えるから、田植えって言うんだ。」
「わかったあんちゃん、この苗をこのまま植えたらいいの?」
「いや、1本ずつ等間隔に植えていくんだ。」
「これから、1本ずつ!?」
「ああ、ただ最初はゴーレムで植えていく。今回のゴーレムは足がタイヤになっていて、植えていく間にタイヤが来るようになっているんだ。ゴーレムの背中に苗を積んで、腕が4本あるだろ、この腕で植えていくんだ。」
「それじゃあ、ルシア何もしないの?」
「いや、大事な仕事がある。」
「なに?あんちゃん。」
「ゴーレムじゃあ植えれない端の方や、偶々苗がとれず植えれなかった場所なんかに植えていかないといけないんだ。それに、ゴーレムの背中の苗が切れかけてきたら、追加する仕事もあるぞ。」
「わかったよあんちゃん。苗はこのまま載せればいいの?」
「おう、箱から出して少し水に浸けてから載せてくれ。」
「何で水に浸けるの?」
「少し滑りやすくするためだ、ゴーレムが苗を取る位置は変わらないから取りやすい位置に来るように水に浸けるんだ。」
「わかった。」
ゴーレムで田植えを行っていると、やはり間があいて植えられている場所が出てきた。
「ルシア、あいているところに苗を植えてきてくれ。」
「はーい、あんちゃん。」
ルシアは、初めて田んぼに入ったのだ、走ったまま入っていって、そのまま植えに行こうとしたのだろうが、やはりというか、足をとられそのまま倒れこんでしまった。
お笑い芸人真っ青に全身泥だらけである。
「ルシア、大丈夫か?」
ルシアは、少し顔を上げたのだが、
「う、う~。」
「お~い、ルシア。」
「足が、足が、」
「どうした?足を痛めたか?」
「足がついてこなかった。」
「まあ、どろどろだからな、足をとられたんだろ。」
「う~、顔もドロドロ。」
「一旦こっちに出て来て、魔法で洗浄しろよ。」
「そうだねあんちゃん。」
ルシアは、田んぼから出て来て全身水浴びをした。
「髪もなんだかジャリジャリする。」
頭をさらに念入りに洗いだし。
「ふい~、とりあえずこのくらいかなあんちゃん。」
「おう。」
俺は、ルシアの水浴びが終わったので、風邪引かないようにルシアに温風を浴びせ始めた。
「あんちゃん、ありがとう。」
「♪~!」
温風を浴びながら、鼻唄を歌っているのだが、気持ち良さそうだ。
「だいたいこのくらいでいいだろ。さあ、田植えを再開するぞ。」
「は~い。」
今度は、ゆっくりと入っていった。
「あんちゃん、こんな感じでいいの?」
苗を植えて、手を振りながらこっちに叫んでいるが、当然手に泥がついているのだから、ルシアは体のいたるところに泥がついているのだ。
「ちゃんと苗を1本ずつ、根から持って、しっかりと挿すんだぞ。浅かったら倒れてしまうからな。」
「わかった~、あんちゃん。」
俺達は、この日黙々と作業を続けたが、まだまだ作業が終わりそうにないなと思っていたのだったが、翌日再度田んぼに田植えに戻ってくると、ヒタムの子供達だろうか、大量の蜘蛛が作業をしてくれていたのだ。
その光景を眺めていると、後ろからヒタムがやって来て、
「ギーギー。」
「ヒタム、田植えも手伝ってくれるのか、ありがとな。」
「ギー。」
手を1本上げて反応してくれた。
さらに、田んぼに向かって。
「ギーギー、ギギーギー。」
なにやら声を発してはいるが、
奥の方から、大量の蜘蛛がやって来たのだ。
やって来たのは、ヒタムの子供や孫・・・まあ、家族だな。
しかも何処と張り巡らしているかわからないが、田んぼの上に垂れ下がっている蜘蛛もいるのだ。
その蜘蛛達が、空いているところに苗を植えてくれている。
しかも、ゴーレムの苗が減ってきたところに、次の苗を補充までしてくれているのだ。
これによって、俺とルシアは田植えでやることがなくなった。
元の世界の稲作でも蜘蛛は益虫であったが、今回は、全て担うことが出来るようになってしまった。
さすがに、数が多すぎて仕事がなく、暇をもて余していたらしい。
「それじゃあ、田んぼは任せてもいいかな?」
「ギーギー。」
ヒタムは、嬉しそうに手を上げて、田んぼに向かって
「ギーギー、ギーギギーギ。」
他の蜘蛛も喜んだのだが、作業していた苗を落としてしまう蜘蛛もいたため、ヒタムが申し訳なさそうにしていた。
俺とルシアは、それを苦笑いしながら見ていた。
田植えが終わったので、魔法で僅かながら成長促進はさせてみるが、急激には行わない。
新しい土地なので、必要な肥料が足りているかわからないので、通常よりは早いが、1年に2回が、3回になるくらいである。
ここをヒタムに任せて、家に戻ると母さんが俺に駆け寄ってきて。
「フォル、帰ってきたんだね、あんたの部屋からガタガタと音がしてるんだよ、ちょっと怖いから見てないけど、確認しなよ。」
「わかった。」
急いで部屋に向かって行った。
まあ、やっと待ちわびていたあいつだろう。
俺は、ドアノブに手をかけドアを開けると、顔面に何かぶつかってきた。
俺は、そのまま廊下に倒れこんだ。
ぶつかったものは、さらに腹に突っ込んで来たが、
「キュー?キューキュー。」
よく見ると、黄色っぽいドラコン?が俺に張り付いていた。
そのまま、部屋の中を見てみると、部屋の中は散乱しているが、その中でもベッドの周りに卵の殻が散乱している。
やはり、あの時の卵が孵化したのだ。
まあ、このドラコン?の幼生体は、産まれたのに近くに誰も居なく不安だったのだろう。探してみるが近くに居らず、他を探そうにも外には出れず、食べ物もない、まあ、この惨状も致し方ないことである。
まあ見た目的に、羽ついてるし、飛べるみたいだし、ドラコンで間違いないんだろうけど、つぶらな瞳でめっちゃ可愛い。
しかも、すでに刷り込み出来ているようで、俺になついている。
「お前、お腹減ってるだろう、食事準備しような。」
俺は、このドラコンの幼生体を連れてキッチンに向かったのだ。
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すいませんが
来週と、再来週はお休みさせていただきます。
よいお年を!




