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貯水池に水が溜まりきり、下流に向けて水が流れ始めた。
自然と池の回りに緑が増え始めた。川からも魚や魔物なんかも流れて来て、新しい生態系が出来つつあった。
山葵田には、山葵を植えたので、成長が楽しみなのだが。魚を生で食べる習慣がないので、俺だけで食べることになるかもしれない。ただし、元々葉山葵は野菜として食べられていたので、すりおろしてなければ、食べるかもしれないな。
田んぼにも水が流れ込んでいるので、田耕をする必要があるが、ここはゴーレムの応用で、腕を耕耘機にして自動的にさせてみればいいかなと思ってる。
とりあえず、水がはってから始めるしかないので、2~3日は待つ必要がある。
まあ、あせる必要はないしな。
種籾は、すでに貯水池に浸けている、もう発芽しはじめているから、作成しておいた育苗箱に床土を入れて、種まきしていく。
種まきしたら、上から土をさらにかけていく。
この時、厚くなりすぎないように調整して、水をかける。
乾燥しないように、遮光ネットをかけておく。
遮光ネットは、ヒタムに話したらあっさりと作成してしまった。
しかも、蚕がこの話を聞いていたらしく、今までの繭だけではなく、様々な性質の繭まで作るようになってきた。
このところ、蚕も出産ラッシュで最初には20匹だったものが、現在50匹以上いるのだ。
場所が、手狭になってきたので、蚕用の場所を追加で作らないといけない。
そのため蚕用の新しい建物を建てる必要がでてきたので、どうせならと縫製の工場の拡充とあわせて建てていこうと思う。
それで家の裏側のルシアが伐採した畑の予定地の一部に工場を建てようと思う。
以前の建物でもかの東京ドーム位の広さはあったのだが、今回は、その倍以上の大きさだ。
地下1階、地上2階で地下にはコンクリートを使用することにしたい。
石灰石、粘土、けい石、酸化鉄を魔法で細かく砕き、熱を加えていく。出来上がったクリンカを細かく砕き、石膏を混ぜる。
これでセメントの完成だ。
これに、砂利、砕石、水を加えたものがコンクリートだ。
まずは、地下なる部分を掘り下げる。当然、1番下にスライム室を作るので、その部分も掘り下げておくが、コンクリートを分解するかもしれないので、床と壁は、今までと同じように魔法で固めておく。
それから、型枠と鉄筋を組んでいく。
技術としては、頭に入っているのだが、鉄筋を組むのが初めてなので、少々手間取ってしまう。
「フォルさん、それは何をされているのですか?」
上から声が聞こえてきた。
上を振り向くと、アーベルトさんが覗いていた。
「この鉄筋ですか?」
「そうです、その鉄の棒、てっきん?と言うんですね。」
「ええ、鉄筋です。これは、この粉に材料を混ぜて、この型枠に流し込んで、乾燥するまで待てば、」
「待てば?」
「ええ、石のように固くなるんですよ。」
「石のようにですか。しかし、この鉄筋はなんのために?」
「この流し込むのは、コンクリートって言うんですが、圧縮力、つまり、押し潰すような力には強いんですけど、引張力には、弱いんですね。上から力を加えると、横に開こうとするんですね、横の力には弱いので、壊れてしまうわけですよ。逆に鉄は、圧縮力には弱いですね。鍛冶をするように、叩かれれば伸びます。しかし、熱してどろどろになってない限り、引張力には強いのですよ。」
「わかりました、それぞれの長所が、それぞれの短所を補っているんですね。しかし、それでは、太い鉄筋を1本入れればいいのでは?」
「それはですね、1本だと横の力が同時に2方向から加わると、1つの力にしか対応出来なくなるからですよ。」
「へ~、考えられているのですね。しかし、この鉄筋というのは腕の悪い職人なんでしょうか?こんなにもでこぼこと。」
「鉄筋がでこぼこなのは、わざとですよ。」
「なぜに?」
「石のように固くなったコンクリートに横に力がかかったとしますね、つるつるの金属の表面で固まったコンクリートの表面は、どうなると思います?」
「つるつるの表面に対してですので、やはりつるつるですかね。おおっ、それではこのでこぼこでコンクリートと鉄筋が絡むというわけですね。わかりました。それで今回は、コンクリートで建物を作ってしまうというわけですね。」
「いえ、今回は、地下だけですよ。」
「何故ですか?もったいない。」
「それはですね。このコンクリートは、流し入れて、次に流し入れるまでにそこまで時間が空けれないのと、隙間が空かないように細かく振動を与えていかないといけないのですか、どちらも両立しようとすると時間が足りないのですよ。」
「隙間を空けないのはわかりますが、時間が空けないのは何故でしょう?」
「時間がたつと固くなってしまいますよね。」
「ええ。」
「固くなったコンクリートの上に新たにコンクリートをうっても繋がったコンクリートにはなりません。」
「それは確かに。」
「コンクリートの表面は基本的にざらざらなので、コンクリートの上に、固く重いものが別にのってしまいますと、横に力が働いて崩れてしまうのですよ。」
「へ~!そういうものなのですね。フォルさんであれば出来そうな気はしますが。」
「流石に難しいですね。それにですね、周りの建物と見た目が違うので、ちょっとですね。そのうち建てますよ。」
実際には、アイテムボックスに作ったコンクリートを入れて出していけば、たてつづけに
「その際には、楽しみにしておきますよ。」
俺は、地下の天井まで鉄筋コンクリートで作成した。
固まりきるのに数日かかったが、型枠を外して、壁の横の土をきっちりと固めた。
その上に2階建ての建物を作成した。大量に木材はあるので建物の作成は魔法であっという間だ。
出来上がった建物の1階に以前の工場で使用していた機械は使わずに、全く新しく機械を設置していった。
2階には、蚕の養殖場を作成した。
作成が終わったところで蚕とムース達にヒタム達が引っ越してきたが、一部は前の工場に残った。
田んぼには、ある程度水が張り終わっていたので、ゴーレムが田耕を行っていたのだった。




