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「ふんふん♪、ららんららん♪。」
後部座席で、鼻歌なのか、ルシールさんの旋律が聞こえてくる。
かなりの上機嫌ではあるのだが、横でどうルシールさんに声をかけようか悩んでいる、ミッシェルさんの姿がある。
「のう、ミッシェル。」
急に声をかけられたミッシェルさんは、驚いて反応できていないが、
「ミッシェル?」
「は、はひ!?」
声まで裏返ってしまった。
「なんじゃ、おぬし。クッッ。」
ルシールさんは、笑いをこらえているようで、バックミラーに映る姿が可愛らしかった。
ふと、ルシールさんが前を向き、バックミラー越しに目があってしまった。
ルシールさんが、俺の顔の横に顔を出してきて。
「ん?なんじゃフォル?」
こんなに近くに顔があるから、ドキッとしてしまった。
「いえ、何かあったのかなと、確認していただけですよ。」
「そうかの?にやついていたように見えたのだがな。」
「楽しそうだからじゃないですか?」
「まあ、そういうことにしておこうかの。して、フォル、あとどのくらいじゃ?」
「そうですね、あと4分の1位ですかね。」
「フォル様、やはり早いですね。」
今度は、ミッシェルさんがくいぎみにのりだしてきた。
「そうですね。」
「これが国にあれば、お嬢様の移動の安全の確保が…」
ミッシェルさんは、席に深くかけて何かブチブチ小言でいい始めたが、こちらまではなんと言っているか聞こえなかった。
「ルシールさん、もうしばらくお待ちください。」
「ああ、大丈夫だ。たまに見たことない植物なんか見えたりしているので、こうやって座っているだけでも楽しいぞ。」
「それはよかったです。」
俺は、そのまま会話を終わらせ、運転に集中した。
しばらくして、目的地である海岸付近に到着した。
「到着しましたよ。お昼は、建物内で食べます?それとも、天気がいいので、海辺にテーブルをだして食べますか?」
「海辺とな、外で食べると!今までそんな事したことがないの。」
「潮風がふいて気持ちいいと思いますよ。」
「そうか、それではそれで頼む。」
「それじゃあ、行きましょうか。」
俺達は、海辺に向かって歩き出した。
海辺に到着したところで、アイテムボックスからテーブルと椅子、テーブルクロスを取り出しセッティングを始めたのだが、ミッシェルさんが、
「フォル様、テーブルクロスを拝借してもよろしいですか?セッティングは私めにさせていただいても。」
「はい、お願いします。」
ミッシェルさんは、優雅に華麗にテーブルをセッティングしていく。
ミッシェルさんは、こう見えても次期公爵家当主だそうだ。ルシールさんに近いため、こうしてルシールさんと一緒にいることが多いそうだが、本来このような場所で、このようなことをしている人ではないのだが、
テーブルの上には、ティーセットが並んでいく。
ミッシェルさんは、希少なスキルであるのだが、アイテムボックスを持っているのだ。
俺のアイテムボックスボックスとの最大の違いは、生き物が入るということだ。
俺のように、許容量に制限がないことや、時間停止、アイテム付与などはないが、ある程度のものであれば、いれておくことが出来るそうだ。
「フォル様、お湯を頂いてよろしいですか?」
「紅茶用でいいですか?」
「はい、よろしくお願いいたします。」
俺は、ミッシェルさんが準備したポットの中に熱湯をいれていった。(もちろん魔法でだ。)
「そのくらいで結構です。」
「それじゃあ、俺も準備してきた料理をだしますね。って言ってもサンドイッチですから。ただ、すこし大きいので、ちょっとカットしますね。」
俺は、後ろにテーブルを別に出して、サンドイッチを一口大に切っていった。
「このくらいでいいですかね。」
ミッシェルさんに、皿にのったサンドイッチを見せると、
「流石フォル様ですね、美しいものです。これであれば、紅茶準備してものと調和出来そうですね。」
「それはよかったです。」
「お嬢様、それではお茶の準備も整いましたので、お注ぎさせていただきます。」
「うむ。今回も、フォルの料理だから、ミッシェルも一緒に食べるのじゃぞ。」
「はい、心得ております。」
ミッシェルさんは、流れる動作でお茶をいれ終わると、席に着いた。
それを確認するとルシールさんはすぐに、
「それでは、頂こうかの。」
ルシールさんは、まず紅茶を一口飲んだ。
「ミッシェルのいれてくれる紅茶は、いつも美味しいな。」
「はっ、ありがとうございます。」
そのまま、サンドイッチを手に取りすぐに食べ始めた。
「ん~~~~~!」
ルシールさんは、続けざまにサンドイッチを食べていく。
「うまい、うまいのう。やっぱり帰らんといかんかのうミッシェル。」
「ええ、それは1度帰らないと不味いですね。」
「そうか、やはりそうよの。」
「因みにどうやって帰るのか教えてもらってもいいですか?」
「「えっ?」」
「ここまでは、どのようにして?」
「対岸から、小舟に乗って。」
「その船はどこに?」
「・・・・・。」
「た、確かに見当たりませんね、お嬢様。」
「な、なに、冷静に判断しておる。どうするのじゃ。」
「どういたしましょう?」
「帰る足がないのであれば、今から準備しましょうか?」
俺が、そういうと。
「ぜひ、フォル様頼みます。」
「フォル、してどのようにするのじゃ?」
「まあ、ゴーレムの応用です。このように、魔石に魔力を注ぎ込み、その魔石を使ってゴーレム船を作成します。」
「ゴーレム船?」
「ええ、ゴーレムで推進力を維持させて進む船ですね。」
「まあ、よくわからんが頼むのじゃ。」
「わかりました。」
俺は、中型の魔石に魔力を注入し、ゴーレム船を作成した。
サイズとしては、500人ほど乗っても余裕のサイズだった。
「フォ、フォルは、規格外じゃの。」
それがルシールさんの、俺に対する評価みたいだ。
「フォル様、この船をお借りしてもよろしいのですか?」
「借りるじゃなくて、差し上げますよ。」
「頂いてよろしいのですか?」
「ええ、また来るときにもご利用ください。」
「あ、ありがとうございます。フォル様。」
「わらわからも礼を言わせてもらう。次に来るときにはお礼でも持ってこようかの。」
「それであればお願いがあるのですか。」
「なんじゃ?」
「この船に、俺のアイテムボックスに繋がる扉がつけてあってですね、この扉からものをいれることが出来るようになっているんですが、この扉にそちらで生産されている野菜等の種なんかを送ってほしいのですが。」
「よかろう、ちなみにそのアイテムボックスからそちらのものは取り出せるのかの?」
「いえ、一方通行です。生きたものも入りませんのですいません。」
「そうかの、残念じゃ。」
「なんか、すいません。」
「いや、よいのじゃ。頼まれたことは、必ず約束しよう。」
「はい、よろしくお願いします。」
そのあと、扉の場所などを説明し、ルシールさんとミッシェルさんは帰っていった。




