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俺はまた、ゴーレムに開拓させている海岸に来ている。
今回ここで行おうと思っているのは、建物の建築だ。
当然だが、ここにはまだ誰も住んではいないのだが、ここにみんなが遊びに来たときの休憩場所や、農地で作業時に使用する道具の収納場所。
もし、この辺りに人が住むことになったときの、区画整理などを行っておこうかと考えてだ。
西に引き続き道を作っているゴーレムは、魔力が残っている限り作らせようと思ってはいるが、あまりに広大な森だから、森を横断出来ることはないはずだし、真ん中辺りまで行ければ御の字じゃないかと考えている。
道に関しては、北側にも伸ばしたいと考えている。
あと、折角海岸付近にいるので塩造りも始めたいし、海藻も集めたい。
そのためにも、まずはきちんとした拠点作りだ。
すでに、必要な木材は準備してきてあるし、サッシなども作成してある。
整地が終わっている土地に、組み立てるだけである。
今回の建物は、海岸付近にであるため軒下を作った。
まずは、柱を埋めるための穴を掘り、底に成形しておいた石をしき、その上に柱をたてていく。
ここまでが、今まで作ってきた家と違う作りなだけで、あとはほぞ穴にそれぞれの材木を繋ぎ会わせていく。
今回釘も、海岸付近ということで和釘を準備してきた。
俺の目の前では、魔法で組上がっていく家が出来てきている。
この世界には、ちゃんと大工はいるが、こんな風に魔法で材木を持ち上げたり、組み上げたりはしていない、元の世界の大工と同じように自分の力で組み上げているのだ。
まあ、元の世界の方が科学力によりまだ楽なのだと思うが。
建て終わったら、今回の建物には陶器のタイルを張り付けていく。塩害対策だ。
青いタイルを1階の壁面に、白いタイルを2階の壁面にそれぞれ張り付けて、目地と表面に防水対策をしていく。
これでひとまず建物は完成だ。
次は、家具の配置だ。
キッチンは、組み上げる際に作り上げている。食器棚も備え付けにしてみた。
1階には、リビング、ダイニング、キッチン、トイレ、お風呂、応接室、予備の宿泊部屋。
2階には、6部屋寝室とトイレを作っておいた。
大体で建坪60坪ってところだ。
もちろん、地下にはスライム部屋があり、下水やごみ処理をしてくれる。
外には、倉庫を作成した。
外壁には、家と同じく青のタイルを張り付けている。
この倉庫には、今のところアイテムボックスは付与していない。
ここにいつも来るわけではないのだから、そこまで食料などいれておく必要はないと思う。
次は、海藻や魚介類を集める方法だが、これにはゴーレムを作成する。
材料は、今まで陶器を作成時に失敗したものや、ルシア達が謝って割ってしまったものだ。
木だと、腐食してしまいそうな気がするし、土は重くなりすぎる、金属でもいいのだが、陶器のゴミが思った以上にたまるし、これはスライムが処理してくれないのだ。
ゴーレムの形だが、まず1つ目は鮫型にした。
口から魚介類を取り込み、海水のみを後ろから排出、中で氷の魔法で凍結させ、アイテムボックスの倉庫に転送させる。
次に海底を捜索させるゴーレムは、オクトパス型にした足の部分に砂の中まで捜索させ、貝類や海藻を集めさせる。
オクトパスの口のところにアイテムボックスへ転送させるように作っておいた。
それぞれ5体作成しておいたので、家に帰ってからが楽しみだ。
帰る前に、ゴーレムに魔力供給しておこうとそれぞれのゴーレムがいる場所まで移動していると、
「お・・・だ・・・・で・・・。」
「・・・ぶ・・・た・・・ぶ。」
なんだか北側の森の中から声が聞こえてくる。
声がする方へ近づいていくと、
「貴方は逃げなさい。」
「いえ、お嬢様だけ残して逃げることなんか出来ませんよ。それにあのゴーレムから襲っては来ないようですし。」
「それは、わらわが攻撃したから。」
しっかりと声が聞こえてきたし、姿も見えてきた。
「あの~、そこのお二人ちょっといいですか?」
俺は、驚かせないようにと、そ~っと声をかけてみた。
「な、何者です?」
「お嬢様様に近づくな!」
「あっ!すいません、ここを開拓しているものですが。」
「え?それではあのゴーレムは・・・。」
「ええ、俺のゴーレムですが。」
「近くにいなかったのに、どうしてゴーレムは動いているんですか?」
「ミッシェル、待ちなさい。」
「はい、お嬢様。」
「すみませんでした、わらわは、魔人族のクラウン王国、第三王女のルシール・フォン・メタスです。」
「ん?何でこんなところに?」
「ああ、それはクラウン王国領内からここが開拓されているようだと視認されておりまして、その話をお嬢様がお聞きになってしまい、噂の真相をはかろうかと…。」
「ミッシェルも面白そうだと話していましたよね。わらわだけが悪いような言い方して。」
「いえお嬢様、そういうわけではありません。」
「あの~、よろしいですか?」
「ええ、すまなかったわね。」
「まあ、開拓しているって言っても個人でしてるだけですからね。どこの国も関係ありませんから。」
「え?そうなの?こんなゴーレム使えるのだから、どこかの国のお抱え魔導師なんかじゃないの?」
「いえ、どこの国にも雇われていませんし、ここは俺が開拓した私有地ですよ。」
「それじゃあ、わらわの国に直ぐに来なさい。わらわ直属の魔導師ししてあげるから。」
「いえ、結構です。」
「そうでしょう、そうでしょう、直ぐにわらわの国に行・・・え?うそ?断ったの?なぜ?わらわ直属であれば、ある程度好きな暮らしが出来るのよ?」
「今の暮らしが好きなので、他に行くつもりはありません。」
「何もしなければ、ゴーレムは襲ってきませんから、お帰りいただいていいですよ。」
「いや、帰らないわ。これほど魔法を使えるのですから、なんとしても国に連れて帰りたいから、貴方にしばらくついていきますから。」
「断ってもついてくるんでしょ。ここで見捨てても、俺がまた来るまで、待っておきそうだしな。好きにしてください。」
俺は、車を出して、2人を乗せて帰ったのだが、車を出したとたん、これはなんだとか、どうやって動いているだとか、これが欲しいだとか、姫様は車内で散々喚いて、帰りつく頃には、疲れて眠ってしまったようだった。




