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アーベルトさんが、従業員を連れてやって来た。
どうも、新しい従業員は全員帆馬車の後ろに乗っているようで、まだ顔が見えない。
「さあ、着きましたよ。」
アーベルトさんが、馬車の中に向かって声をかけている。
後ろから、まずは男性が降りてきた。
かなりしっかりとした体つき、見た目20歳くらいにみえる。
身長は、離れたところから見てるからはっきりは言えないが、180くらいはありそうだ。
その男性が手をとり降りてきたのは女性だ。
かなり豊満な女性で、赤い髪をポニーテールにしているが、それでも腰の辺りまで長さのある髪だ。
この女性も、女性にしては高い方じゃないかと思う。
だいたい170くらいはありそうだ。
おっ、次は子供が降りてきた。
まずは、女の子が2人、立て続けに男の子が3人降りてきた。
最後に、男性が降りてきた。
子供たちは、大体10才くらいかと思うが、まず女の子の1人目は、カスタードみたいな髪の色した子だ。もう1人は、薄紫の髪の子だ。男の子は、3人中2人が黒髪だが、1人は、かなりの短髪で、もう1人が目に髪がかかっていてよく顔が見えない。もう1人は、金髪で角刈りの子だ。
最後に降りてきた男性は、銀髪?白髪?近くで見ないとはっきりはわからないが、ヒョロっとした感じには見えるが、最初の男性より背が高く、2メートルくらいかと思う。
こっちの男性は、かなりのイケメンだ。
「フォルさん、お待たせいたしました。これからよろしくお願いします。」
「ええ、アーベルトさん。こちらこそよろしくお願いします。」
俺達は、手をとりあった。
「それじゃあ、新しい従業員を紹介したいと思います。まず、このしっかりとした体つきの男が、カリムです。」
カリムさんが一歩前に出て来て。
「よろしくお願いします。オーナー。」
頭を深々と下げてきた。頭を上げてすぐに後ろに戻ったのだが、
「え?いや、オーナーじゃ……。」
「じゃあ次の男が、ジュードです。」
ジュードさんも、一歩前に出て来て。
「ジュードです。よろしくお願いします。オーナー。」
やはり頭を深々と下げて、すぐに頭を上げて後ろに下がった。
「次の女性が、カスミです。」
カスミさんも一歩前に出て来て。
「よろしくお願いいたします。オーナー。」
スカートの縁を軽く持ち上げ、挨拶してきて、終わるとすぐに下がった。
「次は、丁稚の5人ですね。まずこの短髪の黒毛の子が、ヤホン。」
「よろしくお願いします。オーナー。」
その場で、頭だけ下げた。
「次、このよく顔が見にくいのが、ショウ。」
「お、お願いします。」
こっちは、深々と頭を下げた。
「で、こっちのがジレ。」
「頑張ります。オーナー。」
俺をキラキラとした目で俺を見ていた。
「頭を下げんか。」
アーベルトさんが頭を軽く叩いた。
「す、すいません、店長。」
「まあ、気を付けなさい。じゃあ、次ですね。こっちの子がアズ。」
薄紫の髪の子だ。
「私もよろしくお願いします。オーナー。」
顔を見たまま、少し頭を下げた。
「で、最後の子が、コッティです。」
「よ、よ、よろ、よろしく………………、お、お、おね、おねが、い、します。」
びくびくしてはいるが、恥ずかしがっているだけのようだ。
「以上です。フォルさん。」
「ちょっとアーベルトさん、こっちに。」
俺は、アーベルトさんを引っ張り8人を背にしてこそっと話し始めた。
「何で俺がオーナーになってるんですか?」
「そんなことですか、実際この土地はフォルさんのものですし、この建物の建築にしても、今後の商品にしてもフォルさんしだいになってますから、従業員たちには、その辺はしっかりと説明しましたから。ですから、みんなオーナーはフォルさんって認識しているんですよ。実際、開店資金のほとんどがフォルさんの商品を売った売上金で賄ってますし、事前にフォルさんに了承してもらってましたから、支払い出来てないお金も、開店資金で使わせてもらってます。誰がきいてもオーナーでしょ?」
「そ、そう、ふ~、わかりました。」
俺達はすぐに戻って、
「では、これからよろしくお願いします。」
「「「「「「「はいっ、オーナー。」」」」」」」
まあ、1人返事出来てなかったみたいだが、頑張って欲しいもんだ。
「はいっ、それでは荷物を運びいれますよ。今日寝る場所を準備して、荷ほどきしないといけませんからね。」
今回、アーベルトさんが乗ってきた馬車は、前に帆馬車、後ろにもう1つ連結されており、そちらには家財道具がくくりつけてあった。
「アーベルトさん、今日の食事はこっちで準備しますから。」
「それは、すいません。助かります。あと、フォルさん、お願いがあるのですが。」
「なんでしょう?」
「木材を頂けませんか?」
「何に使うんですか?」
「この人数なので、さすがにベッドを運んでこれなくて、今から作成しようかと。一応、釘や道具などは準備してきたんです。」
「ベッドくらい作りますよ。釘を頂いてもいいですか?」
「いいんですか?いろいろお願いしておいて、これもしてもらうのは、悪いといいますか、その……。」
「まあ、そのくらい、大丈夫ですよ。サイズもありますから、それぞれ部屋に行って作りましょう。」
「ではまず、子供たちからお願いしたいのです。」
「それじゃあ移動しましょうか。」
俺とアーベルトさんは、従業員用の宿舎に移動した。
「子供たちは、個室ではなく、女の子用と男の子用に分けるかたちでいきたいのと、今後人数を増やしていく予定なので、多目に作っていただきますとありがたいです。」
「そうですか、う~ん、わかりました。普通のベッドで4つはおける場所は作ってあるので、そうですね、それぞれの部屋に3段ベッドを4つ作りましょう。」
「3段ベッドですか?」
「そうです、3段ベッドです。まあすぐ作りますから、見ていてください。」
今回のベッドの作り方は簡単なものだ。まず柱に、各段のフレームをつける、そのフレームに天板を支えるための、出っ張りをつける、天板には簀状にした板を配置する。最後に梯子をつけて完成だ。
この位の簡単な作りではあるが、材料に関しては大量にあるから全く問題ない。
「は~~っ!凄いものですね。」
「まあ、今回フレームには板を張り付けただけですから、見た目よくないですけどね。」
「いえいえ、これだけしっかりとしたものであれば、充分ですよ。」
今回の作業については、魔法で形を組み立て、釘で打ち付けていくだけという、簡単な工法だ。
言い換えれぱ、俺が魔法で組み立てしていれば、誰が釘を打っても大丈夫だ。
俺が7つ作成している間に、アーベルトさんも1つ作り上げた。
あまり大工仕事は得意じゃないということで、うまく打てなかった釘が、いくつか飛び出しているが、そこは後で手直ししておこうと思っている。
あと、4人分のベッドだ。
アーベルトさんの寝室は、建物が違うので最後に作成するとして、従業員の他の部屋は、8畳くらいの広さにして、クローゼットも立て付けしておいた。
従業員のベッドは、セミダブルで3人分作成した。
「あっという間ですね。」
「それじゃあ次、アーベルトさんの作りに移動しますよ。」
「はい、ありがとうございます。」
俺たちは、アーベルトさん用の建物に入っていき、3階に作成している寝室に入った。
寝室の広さは、約25畳だ。
「ほえ~!広いですね。」
「ええ、店主ですからね、広めにしてますよ。」
「では、作成お願いします。」
「ええ。」
俺は、部屋の窓際の真ん中に、キングサイズよりさらにシングルを合わせたくらいのベッドを作成した。
「いやいやいや、フォルさんこれは大きすぎでしょう。1人で寝るとしてのサイズじゃないですよ。」
「ええそうですね、1人で寝ないようにしたらいいじゃないですか。」
「1人で寝るしかないじゃないですか。」
「いい加減結婚したらいいでしょ。」
「な、なに言ってるんですか。怒りますよ。」
「いい年なんだから。」
「もう、フォルさん。」
ベッドを作成終わった俺は、この後しばらくアーベルトさんから文句を言われ続けるのであった。
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