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住宅の建築と、ルドルフさんの宿屋の建築、アーベルトさんの店の建築を始めて、すでに2ヶ月ほどすぎた。
住宅を建築する上で、まず区画整理を行った。
それぞれの土地の境目に、木材で柵を作っていったのだ。
アリスたちが住む家については、集合住宅を希望していたのでアパートにすることにした。
そこで問題になったのが、それぞれの部屋にキッチン、トイレ、バスルームを作るかと言う話だ。
アリスたちも出来ることならほしいけれども、この世界のトイレは、基本ボットン便所なので、2階以上ならば難しいなではないかということだ。
お風呂は、貯めたお湯を捨てる時と、体を洗うときにこぼれたお湯の排水が出来ないから、難しいのではないかということだ。
キッチンについては、まあ大体同じような理由もあるが、みんな料理が苦手なので使うことが少ないとのこと。
そこで必要となってくるのが配管であるが、当然塩ビ菅は作成していない。
まだ、石油が見つかっていないのだ、それ以外であれば、木酢液もあるし、銅の製錬したときの副産物の二酸化硫黄も、濃硫酸、塩化ナトリウムなどもあるから、ナフサさえあれば何とか塩化パイプは作れそうなのだが、石油がなければ、そこから精製される薬品が使えない。
そこで、鉱石は色々森の中にある山の中腹や、洞窟の中から採取しているものがあり、錫と銅から作成した合金、青銅が出来ている。
合金も様々な物を作ってはいるが、今回は、加工のしやすさを考えて、青銅で配管を作ろうと思っている。
それ似合わせて、トイレを陶器で水洗にしようと思う。
ウォシュレットをつけてもいいのだが、全ての家につけることを考えると、今回は先送りにしたい。
将来的には、下水道を作成し、スライムによる浄化場を作りたいと考えている。今は、各建物の地下にスライム部屋を作って、そこに排水を流すように考えている。
まず製作に取りかかったのが、トイレだ。
粘土に関しては、近くに川があって川底をある程度掘ると良質の粘土が取れるのだ。
今まで家の食器をいくつかは作成していたので、ある程度の粘土は貯蓄している。
泥奬を作る、粘土と水を混ぜるだけ。
釉薬は、灰と長石を混ぜたものを作成済み。
型枠は、石膏を準備した。(この世界にも、石膏はすでに販売されていたのだ。)
陶器は、一部種族が作成しているという噂だが、人族領には入ってきていないのだ。
一部の貴族が観賞用として買っているものはあるものの、観賞用としているため、食事などで使うものという、感覚がないそうだ。(アーベルトさん談)
うちでアーベルトさんは、陶器の器を使用したことにより陶器の有用性についていち早く理解をし、独自の生産を行いたいと、技術者を募っているらしい。
工場については、どうするのかは聞いていないが、アーベルトさゆのことだから、俺に建築を依頼してくるのではないかと思っている。
閑話休題
石膏の型に泥奬を流し入れ、そのまま魔法で水分を除去する。
魔法で水分を除去したおかげか、本来であれば縮んでしまう便器が縮んでなかった。
作成したものすべてを、窯にいれ素焼きを行う。
素焼きが終わったら、釉薬を均等に吹きかけて、窯に入れて焼成する。
1日かけて焼き上がったものの表面を、風の魔法で研磨する。
タンクには、水の魔鉱石を使用して水が貯めれるようにしておこうと思う。
水や火の魔石や魔鉱石などは、アーベルトさんの店で販売すればいいと思うし、魔法の使い方を全員に教えていけば、販売もしなくてよくなると考えている。
キッチンについては、蛇口を作成し、そこに水の魔鉱石をつければ、お手軽に水道の完成だ。
釜戸にすると、薪が必要だし、耐火についての問題が出てくるので、うちでも使っている、火の魔鉱石をしようしたコンロを設置しようと思う。
以前の経験で、釘も大量に作成、ストックしているので、アリスたちにも建築を手伝ってもらっている。
最初は、釘を打つ手つきは危なかったけれど、もう見慣れたものになってきた。全ての木材に番号を記載しているので、順番通りにセットして、釘を打っていけば出来るようにしておいたのだ。
さすがは冒険者である。
木材を軽々と運んで、連携しながらセットしていく。配管は、俺が仕上げたけれども、アリスたちが住む予定の集合住宅は、形は出来上がりつつある。
建物の色は、4人で決めることになっているのだが、それぞれの希望が異なり、難航しているらしい。
ちなみに、アリスが赤で、ベルが白、ミールが緑、リリネがベージュを希望している。
ただこの色は、外観の希望であり、室内は揃って白を希望している。
他の住宅を建ててるのは、ルシアだ。
俺と一緒に建築してたこともあり、魔法を使用して一気に組み立てていく。さすがに配管については、俺がしないといけないが、木材さえ作っておけば、1棟につき2時間もあれば完成してしまう。
集合住宅以外は、トイレ、キッチン、お風呂については、1階にしか作成していないので、そこまで配管は必要ない。
キッチンの排水の配管さえ作成していれば問題ない。
なので、キッチンは後付けで作成するので、ルシアはノータッチだ。
アーベルトさんの、店の地下部分の石材による建築は、すでに完了しているので、空いている場所に土を入れ直し、その上に、他の建物を建てていかないといけない。
ルドルフさんの宿屋には、基本的に部屋に風呂はないし、トイレもない。
大浴場と貸し切り風呂、トイレは各階に男女別に作るだけだ。
特別室に関しては、別に作成しておく必要があるだろうが。
もうここはどこの国にも属していないから、身分については問われることはない。
まあルドルフさんも、
「一旦村じゃなぐなっだわけだぎゃで、新しい名前を考えておくだで。」
って、言ってたしな。
「お~い。」
ん?、なにか呼ばれたような気がするんだが?
「お~い。フォルさ~ん。」
やっぱり呼ばれた。俺は、急いで家の敷地の入り口に向かって行くと。そこには、アーベルトさんが来ていた。
「アーベルトさん、お久しぶり。」
「ええ、フォルさん。私の店、建築しているって言うじゃないですか、ある程度の仕事終わらせて、急いできましたよ。」
「まあ、まだ地下部分しか出来てないんですけどね。」
「いえいえ、地下だけでもこれだけ立派に作ってもらって、大変にありがたいです。」
「地下は2階までありますので、地下1階は、光の取り込み口を作っていますから、少しは明るいですよ。地下2階は、魔道具を設置しないと暗いですね。」
「地下は、やっぱり倉庫としてですかね?」
「まあ、倉庫としてが主でしょうね。」
「ほうほう。」
「一応、地上にも倉庫は作りますが。」
「地上にもですか?」
「ええ、地下は店舗用で、地上は行商用です。」
「なるほど。確かに効率がいいですね。」
「ちゃんと敷地を塀で囲む予定ですし、裏口の搬入門は、大きくする予定です。」
「ほえ~、私が想像していたものよりもかなり大きな店になりましたね。」
「ここで商売していただけでは、儲からないでしょ!」
「確かにその通りです。しばらくの間は、王都に作った店は、支店にして、弟に管理を任せる予定ですので。そこに商品を運んで売らせる予定です。」
「まあ、まだ暫くは完成までに時間がかかりますから、気長に待ってください。」
「ええ、そこは大丈夫です。フォルさんのペースで結構です。でも、このサイズを見てると大商人みたいにみえますね。」
「将来的に考えてこの位いるかなって思ってですね。」
「ありがたいです。よろしくお願いいたします。」
そう言って、俺の手を握りしめ、上下に力一杯振り回すアーベルトさんの顔が、泣きそうな顔をしているのをみて、なにも言えない俺であった。
アーベルトさんは、翌日には俺から買取りした商品を馬車に積み込み王都に帰っていった。




