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とりあえず土を取り除き終わったところで、すでにお昼を回っていたらしく、
「あんちゃ~ん、お腹へった。あと切り倒した木を片付けといて。」
「ルシアわかったよ。今戻る。」
土を取り除いていた途中、丁度岩があった真下あたりに直径30センチほどの卵が見つかったのだ。
周りに穴があるわけでもないので、ずっと岩下にあったみたいだった。
とりあえずアイテムボックスに収納して持ってきてはいるのだが、温めないと産まれてはこないだろうから、ドドードリに温めさせようと考えている。
ただ、ドドードリの卵よりずっと大きいので、ドドードリが温めることが出来ないかもしれないけど。
「はぁやぁくぅ~、あんちゃん。」
「わかったから。」
考えながら歩いていたから、ルシアが我慢出来なくなってきているようだ。
急ぎ飛行魔法で戻り、料理することにした。
今日の昼は、ファングボアの肉を使った、カツサンドだ。
厚さ1センチ程にカットしたファングボアのロース肉の脂身との間にある筋に、数ヶ所切れ目を入れて、軽く包丁の裏側で叩いて、小麦粉、ドドードリの卵、パン粉の順番に衣をつけていく。
俺は、この時に肉自体に塩コショウで下味をつけない。
肉に塩をかけると当然水分が出て来て肉が少し固くなるからだ。
その代わりに、パン粉の中に少し塩コショウを混ぜてはいる。
パンに挟むときに、果物や醤油などて作っておいたソースにくぐらせてから挟むので、塩コショウ入れてなくても問題ないと思うのだが。
ファングボアのラード100パーセントの油で揚げるのではなく、焼いていく。
フライパンに少し多めにラードを溶かして、そこに衣をつけた肉を入れていく。
フライではないから、大量の油は必要ない。
まあ、普通の店ではどっちであろうが調理法は今は一緒であろうが、本来は、フライは揚げ物、カツは焼き物なので調理法は違うのである。
まあ、その辺は置いておいて。
大量に作っておかないと、アリスさん達が食べる量が思いの外多いので、食パン1斤で1人分で考えておかないと足りないと思われる。カツも、1斤あたりに3枚は必要と思われるので、10人分、当然ルドルフさん達の分も含まれているのだ。
なので、30枚のカツを焼かないといけなくなる。
フライヤーも作ってはあるので、あげてしまう方が早いのだが、俺としては、焼いたカツで作るカツサンドが好きなのだ。
まあ使っているフライパンは、1度に10枚同時に焼くことが出来るくらいのサイズなので、そこまで大変ではない。
あと、キャッパとアカタケ、それとドドードリで作ったつみれをドドードリの鶏ガラスープで作った、つみれ汁を作っておいた。
つみれ汁は、寸胴鍋一杯に作っておいたので、残りのものをアイテムボックスに保存しておけばいいと思っている。
「ねえ、あんちゃんまだなの?」
ルシアが、我慢が出来ずせっついてくるが、やっと全員のカツが焼き終わったところなのである。
これから、カットしておいたパンに、バターを塗り、キャッパの千切り、ソースにたっぷりとくぐらせたカツ、カラシを混ぜたマヨネーズ、上からパンをのせて完成だ。
このままでは、食べづらいだろうから、4分の1にカットして、それぞれのお皿に盛り付けておいた。
「ルシア、取りに来てく・・・。」
俺が、取りに来てもらおうとルシアに声をかけつつ後ろを振り向くと、
「・・・・・持っていく。」
ミールが、すでにスタンバイしており、両手を俺に突き出していた。
「頼めるか?」
「・・・・・ん!」
力強く頷き、顔をあげたミールは満面の笑みだった。
「じゃあ、頼んだ。」
ミールは、2皿づつ運んでいった。
俺は全員分のつみれ汁をつぎ分けた。
それをおぼんにのせて、食卓に運んだ。
その時にはすでにルシアは食べ始めていた。
「こら、ルシア勝手に先に食べ始めちゃ駄目だろ。手伝いにも来ないし。夕飯なしにするぞ。」
「ん!ん~っ!ごめんなさい、あんちゃん、次からはちゃんと待つし、手伝いもするから。」
「本当だな。」
「うん、ごめんなさい、あんちゃん。」
「わかった。それじゃあみんなで食べよう。」
「いただきます。」
みんな一斉に食べ始めた。
「このパン、ふわふわ。う~ん、おいちい。」
「もうベル、食べながらしゃべらないで、口から食べ物が飛んでる。」
「んっ、んっ、ん!ごめんリリネ。」
「・・・・・美味。」
「・・・・・・・・・。」
「アリス、凄い幸せそうな顔して。」
「だって美味しいんでゃもん。エアラもそうでしょ。」
「はいダン、あ~ん、っ!えっ?えっ?なに?」
「はいはい、ごちそうさま。幸せそうな2人はほっといて、この後どうするの?フォル君。」
「リリネさん、とりあえずは、さっき地面から出てきた卵をドドードリに温めさせようと思うから、ドドードリの鶏舎まで運んで、さっきの作業を再開かな。」
「それじゃ、私達も同じことでいいの?」
「今の場所が終われば、ルシアが開拓しているところもお願い。」
「わかったわ。それじゃあ、食べ終わったらすぐに再開するわね。」
「お願いします。」
俺たちは、食べ終わるとすぐに作業に取りかかった。
俺は、すぐにドドードリの鶏舎に卵を運んだのだが、当のドドードリが、卵を見るとすぐに鶏舎の端まで逃げていったのだ。
卵を持って近づいて行くと、更に反対に逃げてしまい、暖めてもらうことが出来なかった。
ファングボアと、ホワイトバッファローも同じく近づく事さえなかった。
どうしてだろうとは思ったが、近づかないので仕方なく俺の部屋で暖めることにした。
ちょうど部屋には、ドドードリの羽毛をヒタムが作った生地で作成した羽毛布団があるので、つつんでいれば暖められるだろうと考えられるから。
俺は、自室に持ち帰り、羽毛布団にくるんでから作業に戻った。
アーベルトさんの予定地の地下になっている壁を硬質化していき、水を排出出来るように下側に数ヶ所の穴をあけ、そこに流れ込みやすいように、傾斜をつけていった。
地下に木材で建築すると腐れやすいから、先程の大岩を切り出して石材に加工しようと思う。
まずは、この硬質化した場所に先程の大岩を取り出し、石材を切り出していこうと思う。
柱用、壁用、天井のアーチ部分用を各2階分と、アーチの上を床用、階段用、1番下の階の床用を切り出して始めた。
柱用の石材を切り出したところで、すでに日が暮れ始めていたので、その日の作業は終わったのだった。
石材を使った建築が初めてだったこともあり、時間がかかりそうだと思いつつ、自宅に戻り晩御飯の準備を始めたのだった。
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