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それから少しした夏直前の頃、武器屋がとうとうこの村から出て行った。

道具屋も、近日中に出て行くらしい。

宿屋に関しては、行商人や冒険者に泣きつかれてまだ暫くは営業を続けることにしたらしいのだが、この店主、名前をルドルーフレドと言って、通称ルドルフというのだが、先日うちにきて、


「フォル坊、頼みがあるだぎゃ。」

「いきなりですね、ルドルフさん。」

「おう、いきなりですまなあだぎゃ、冒険者どもに泣きつかれてしもうて、これから宿屋続けていくことになったんだぎゃ。」

「そうだったんですね、昔からの知り合いが一軒でも残ってくれて嬉しいですよ。」

「おう、それでにゃ、宿屋の場所が遠いだぎゃ!元の村の土地全部フォル坊のものにしてくれていいだで、この近くに新しく宿を建てて欲しいだで。」

「本当にいいんですか?」

「さすぎゃに、おらの宿屋が離れていたら、何かあったとしても頼れねえでな、おらと二軒しかないから出来たら近くにと思っての。」

「わかりました、いいですよ。アーベルトさんの店もうちの近くに作る予定ですから、買い物するにしても便利でしょうし。」

「なに?アーベルトの店もできるだぎゃ。」

「ええ、村でなくなったあとという条件で決まってましたよ。」

「それはいいことを聞いたぎゃよ。まあ、まだ道具屋がいるもんで、道具屋がいなくなったら、また相談に来るだぎゃ。」

「わかりました。お待ちしてます。」


と、いった話があったんだ。


で、今そのルドルフは、うちにきてくつろいでいる最中である。

「おう、フォル坊。このミルクっちゅう飲み物旨きゃなあ。」

ルドルフは、大ジョッキほどある木製のコップに並々と入ったミルクを、すでに5杯も飲み干し、6杯目に手を掛けていた。


「流石にルドルフさん、飲み過ぎですよ。」

「そうだぎゃ?別に酒を飲んでるわけじゃなきゃので、問題なきゃろ?」

「いえいえ、ミルク飲み過ぎると、お腹が緩くなって、下痢なんかになりますから。」

「そうだぎゃ?フォル坊がそんなにいうなら、これまでにしとくだぎゃ。代わりに酒くれ。」

近くに座っている母さんが、あきれた顔してルドルフさんを見ていた。

「でも、ルドルフさんこんなしょっちゅううちにきていいんですか?」

「なんでぎゃ?」

「まだ道具屋のコーグさんいるんでしょ。」

「あぁ、そでは気にしなくていいんじゃ。もう、明日出て行くらしいんでな。村長の準備も終わったらしくてな、一緒にいんじゃて。」

「そうなんですね。それじゃあ、アーベルトさんとルドルフさんの建物を建てる場所の整地だけでも始めるかな。」

「おう、フォル坊、アーベルトの店の場所は決まっておるのか?」

「ええ、決まってますよ。アーベルトさんの建物は、うちの前に作る予定ですから。」

「それじゃあ、おらのところはその隣にしてほしいんじゃ。」

「隣ですね。わかりました。」

「おう、頼んだ。で、酒の方は、まだかの?」

「やっぱり飲むんですか。わかりました、準備します。」

「おう、悪いの?」


俺は、笑いながらお酒を準備したのだった。

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