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~村長サイド~
「くそ、くそ、なんで雪が溶けたとたん皆そろって村を出ていくんだ。」
「父上、一番奥のフォル一家のせいでしょう。」
「そんなことはわかっておる。あやつが家長になるまでは、どこの家も開拓は進まなくて、生活環境があまり良くなかったことはわかっているんだが、あやつになってからは、あの家だけ開拓が一層と進んだしの、家畜と評してはおるが、魔物を飼っているので、近づきにくくてもある。」
「ええ、平然と魔物を飼っているなど正気とは思えません。」
「それに、」
「それに?」
「あのエレノが、ガリガリだったのが、今やふっくらとしてきて、裕福になってきたのも見ただけで分かるようになってきたのもそうだが、行商人が皆フォルのところに仕入れに行くようになっておって、他の家の者たちは、収入を得るためには、道具屋に売って収入にするしかなくなって、道具屋は、それを販売するところがないので、このまま村で生活を続けていても、裕福になることがないと想像できるしの。」
「ではなぜこの間、エレノが提案してきたことを承諾しなかったのですか?」
「ん?あんなもの売れるわけなかろう。魔物の皮より薄いのであろう、そんな丈夫でないもの誰が買うというのだ、村の中で売っても大した儲けにはなるまい。」
村長は、元々布が高級品で販売されていたことを知らなかったのだ。
それも仕方のないこと、布は、王族や上級貴族が購入するのみで、一般の者が購入できるものではなかったし、王族や上級貴族が着ている服が、布で作られているなんて知る由もなかった。
更に、このところフォルがアーベルトに卸している品物の数々が、大変に人気になって王都に至っては、予約を受け付けないほどの、人気商品になっているのだ。
「と、兎に角だ、残りの3件にもう一度考えを改めるよう、説得を続けるしかあるまい。」
「宿屋と武器屋は兎も角、道具屋は、なんと説得するのですか?」
「しばらくの間は、売り上げを保証するとか・・・。」
「保障?いつまでです?一生保証するとなれば、喜んで残るとは思いますが、他の2件が反発するでしょう。」
「それじゃあ、他の2件も同じように保証するのか?」
「そのお金は、どこから出るのですか?村を維持するために、我々の生活ができなくなってしまうじゃないですか。」
「それじゃあ、どうしたらいいというのか。」
「父上にわからないもの、私にわかるわけないじゃありませんか。」
「と、兎に角話に行ってくる。」
「いってらっしゃいませ。」
村長は、急ぎ足で家を出っていたのだった。
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