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翌朝


「・・・・・おはよう。」

ミールさんが、急に朝食を調理していた俺の後ろから声をかけてきた。

「うわっ!びっくりした!ミールさんか!」

「・・・・・うん。」

「気配消して後ろから近づかないでくださいよ。本当にビックリするんですから。それに、料理をしていたんですから、もし落としでもしたらどうするんですか?怪我してしまうかもしれないじゃないですか。」

「・・・・・ごめん。」

「まあいいけどさ、ミールさん起きるの早いね、他のみんなは?」

「・・・・・まだ。」

「そっか、まだ寝てるんだ。ミールさん、」

「ミール。」

「うん、ミールさんだよね。」

「違う、ミール。」

「だから、ミールさ...。」

「ミール。」

「ミールさ...。」

「ミール。」

「ミール...?」

「ん。」

すごい笑顔で、部屋に戻っていった。


「さっきのは、呼び捨てしろってことでいいのかな。まあ、かしこまらなくていいのは、楽でいいな。まあ急いで、朝御飯を準備終わらせようかな。」

今、準備している朝御飯は、厚切りベーコンと、スクランブルエッグ、鶏ガラからとったスープで作った卵スープ、サラダにちぎりパン。人数が多かったので、厚切りベーコンを焼くのと、スクランブルエッグをいり卵にしないように大量に作るのに、手間がかかった。

ちょうど朝御飯の調理が終わったところで、母さんとルシアが降りてきた。


「おはよう、フォル。」

「おはよう、母さん。」

「あんちゃんおはよう。」

「おう、おはよう。もう、朝御飯出来てるよ。」

「あいよ、運ぼうかね。」

「頼んだよ、母さん。」

次々に料理を運び、食卓の準備を進めていった。


ルシアは、どこから摘んできたかわからないが、花を陶器で作った花瓶に入れて、食卓に飾っていた。


階段から足音が聞こえてきて、

「フォルさん、おはようございます。昨日は、すいませんでした。大変ご迷惑お掛けしてしまったと思います。」

「アーベルトさん、おはよう。そんな気にすることないけど、因みになんで意識をうしなったか、わからなくてさ。もしかして、無理しすぎて倒れたとか?駄目だよ無理しちゃ。」

「いえいえ、無理したなんてことないんですけど、はははは。」

アーベルトさんは、乾いた笑いをかえしてきた。


「えっとエレノさん、フォルさんは、あの魔物が国をも滅ぼしかねない魔獣であることを、しらないんですか?」

「多分知らないんじゃないかね、どっちにしてもフォルに従順に従っているからね。」

「もし、フォルさんを怒らせたら、魔物をけしかけられて、国を滅ぼしたりしないですよね。」

「そんな事、・・・ないと思うよ?」

「そ、そうですよね。」

アーベルトさんと、母さんは、こそこそと話をしているようだが、合間合間にチラチラと俺の顔を見てくるのだ。


「まあ、二人で会話もそれぐらいにして、朝ごはんにしようか、ルシア、他のみんなを呼んできてくれ。」

「は~い、あんちゃん。」


ルシアは、走ってみんなを呼びに行き、すぐにみんな集まってきた。


「皆さん、おはようございます。」

「・・・・おはよう。」

「おっはー。」

「おはようございます。」

「おっ、・・・痛い。おはようございます。」

「おはようございます。ミールが起こしに行ったと思ったんだけどな。」

「・・・・起こしてた。」

「思ったより、時間がかかったみたいだな。」

「リリネが遅いからでしょ。いっつも寝る前にお酒飲んで、朝起きるのが遅くなっちゃうんだから。」

ベルさんが、リリネさんに言い寄っている。

「悪かったよ。因みに、フォルくんミールの呼び方。」

「ああ、今朝ミールからさん付けしてたら、怒られたからな。」

「・・・・む~、怒ってない。」

「まあ、ミールからなんて珍しいじゃない。」

「兎に角、朝ごはん出来てるから、食事にしよう。」


みんな、一斉に食べ始めた。

今更だけど、前世のように『いただきます』やお祈りして食べ始めるなんて文化は、この世界にはない。

母さんやルシアは、俺がしているときには、真似してしていることがあるが、基本的にはしない。

「フォルさんの料理は、やっぱり美味しいですね。」

フォント、フォント(本当、本当)ほいひい。(美味しい)

「こら、アリス。口に入れたまま喋らないの。」

このパーティーは、よくしゃべるなぁと思っていると、


「そうですね、フォルさんの料理はいつ来ても美味しいです。あ、ちなみにここに来る前に村長のところに行ってきたのですが、この村大変なことになっているらしいですね。」

「アーベルトさん、何が大変なことってなんですか?」

「ご存知ないんですか?この村今5軒しかないらしいです。」

「まだ5軒あるじゃないですか。」

「いやいや、5軒ですよ。この森は、各国に開拓することを了承してもらってから、開拓を始める決まりで、5軒を下回ると、国の所有権が認められなくなるんですよ。まあ、開拓した土地自体は、開拓した本人が住み続ける限り、開拓した本人に権利がありますし、開拓を続けることも出来ますけどね。」

「えっと、うちと、村長のところに、宿屋、道具屋、武器屋くらいかな残ってるのは。」

「ええ、その通りです。今回の雪が少なくなった頃合いを見計らって7軒一斉に出て行ったそうですよ。村長以外の残りの3軒も出て行くって村長に話をしてきているそうです。なんとか村長としては、残るように引き留めているようですが、まあ、時間の問題でしょ。」

「3軒出て行ったら、村長とうちだけか。」

「いえ、他が1軒でも出て行ったら、村長はクビになりますので、出ていかないといけません。」

「えっ!そうなの。」

「まあ、俺はここから出て行くつもりはないけどね。」

「やはりそうですよね。村長以外は出て行く必要はありませんからね。そこでフォルさんに折り入って、お願いがあります。」

「えっ!改まってなんですか?アーベルトさん。」

「ええ、お願いというのは、ここが村でなくなった後に、この家の前に、私の家兼店を作ってほしいのです。」

「なんで村でなくなった後なの?」

「村でなくなれば、どこの国にも属していないので、当然税金もかからなくなります。基本行商を続けていれば、入出国税以外はとられないので、ここに拠点を移したいと思うのです。」

アーベルトさんは、興奮したように顔を近づけてくる。しかも、鼻息荒く。

「わ、わかった、わかったから、そんなに顔を近づけなくても。」

「いいんですね、言質はとりましたからね。従業員を募集しなくちゃ、いや~忙しくなるなぁ。」

すでにアーベルトさんは、今後のことを考えているようで、何を食べてるかわかってないようだ。

「でも、ギルドの出張所も村長が兼務していたから、買い取るところがなくなって、冒険者も来なくなるんじゃない?」

俺が悩んでいると。

「フォルさん。そこは大丈夫だと思いますよ。ここの森は、魔獣や魔物が多く、ある程度の実力がある冒険者でないと入って行けませんが、貴重な薬草など高収入の依頼などが数多くありますので、もっと高ランクの冒険者達が、今後も来ると思います。」

「エアラさん、そうなんですね。でも、この森の周りって。」

「ええ、そうね。この森の周りは、5大国に囲まれてるわね。」

「えっと、魔人族領に、人族領、樹人族(エルフ)領、土人族(ドワーフ)領に、獣人族領ですね。」

「そうよ、それぞれに小国もあるけども、森の周りにあるのは、5大国だけね。魔人族領と人族領は、隣と言っても、森と海が間にあるしね、ちょっと岬にそれぞれなってるところが、一番近いから、あのあたりで争いは続いているわね。」

「直接森の中で争うことはないでしょ!」

「そうね、この森自体がかなり大きいものね。直接争うことはないと思うわ。軍隊がこの森をぬけようと思ったら、どれだけ損害を被るかわからないものね。」

「そんな、この森そんなに恐いところではないですよ。まあ兎に角広いですけどね。」

因みにこの森の広さは、北アメリカ大陸位あるらしい。


「なんでみんな出て行くんでしょうね?自分で開拓した土地は、放棄しなければ、権利は一生子孫になるまでも保証されるっていうのに!」

「フォルさん、それはこの家が原因と言っても過言ではありません。」

「なんで?」

「他の人が一生懸命開拓した広さ以上の開拓を、その何10分の1の時間で開拓した上に、建物もすごく立派な建物を見せられて、心が折れないわけありませんからね。ここを開拓始めた頃であれば、建物を建てるのを手伝ってもらったとしても、当然でしょうけれども、今建物を建ててもらうと言うことは、当然対価を払わないといけませんから、自分たちの生活が惨めに感じてきているのでしょう。それであれば、こんな辺境で生活するよりも、まだ都会で働いて生活した方がいいと考える人が少なからずいるのです。」

「そんなに言われるほど辺境じゃないんですけどね。」

「いえいえ、普通の人からしたら、死と隣り合わせと言っても過言ではない場所ですよ!まあ、フォルさんからみたら普通の場所なんでしょうけれども。」

「そんなに言われるほどの場所じゃあないんですけどね。実際、飼っている家畜だって、大人しいもんですし、作業してくれている、蜘蛛とネズミだって、可愛いですしね。ねえ、母さん。」

「まあ、そう言われると、家畜も蜘蛛もネズミも大人しいからね。そこだけ見れば、フォルが言うことも一利あるのかもしれないけどね、普通の人からしたら恐ろしいことに変わりはないんだよ。」

「そうなのか、でもルシアも同じだよな。」

「ん?そうだねあんちゃん。ムース達も可愛いしね。」

「あの、魔物達が可愛いだなんて、流石フォルさんとルシアちゃんは、違いますね。」

「今度どっちも数が増えそうだしな」

「数が増えるんですか?」

「ヒタムもムースも雌らしくて、どうも身籠っているみたいなんだ。どのぐらい生まれるかはわからないけど、ちょっと楽しみなんだ。」

「そ、そうなんですね。」

「ああ、会話もいいけどせっかくの料理が冷めてしまうから、しっかり食べてくれ。」

「ええ、いただきますよ。」

みんなわいわいと楽しく朝ごはんを食べ、昼過ぎにアーベルトさんと、アリスさん達冒険者一行は、帰っていった。

その際、ミールが残るとわがまま言い始めて、皆から怒られ仕方なく帰っていった。


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