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「おや、フォルどうしたんだい?ん?アーベルトじゃないかい、何があったんだい?」
「ああ、母さん。それが、布を作っているところを見たいってだから、見せてあげてただけなんだけど・・・。」
「もう、いいよ、それだけで大体の事情はわかったよ。」
「ん?そう。それじゃあ、アーベルトさんどうしよう?」
「服も濡れてるじゃないの、今風呂は、女の子達が入ってるしね。さて、どうしたもんかね。」
「とりあえず、着替えさせとくよ。」
「ああ、そうだね。頼んだよフォル。」
一方そのころ、お風呂では。
「エアラ、何あのかわいい子は?あなた婚約者がいるのに。」
「もう、ベル。そんなわけないじゃない、この村に依頼で来たときに、既に雪が酷くなっていたんだけど、村の宿が全て埋まっていて、村長の紹介でこの家に来たの。でも、ここにたどり着く前に倒れてしまったのよ。そんな時にフォルさんから助けてもらったの。」
「じゃあ、何!あの子に助けてもらってなければ、今ここにエアラはいなかったって事!」
「そうね、ベルの言うとおりね。」
「でも、そんな状況で好きにならなかったの。」
「私には、ダイさんっていう素敵な婚約者がいるもの、それは、ちょっといいかなって、・・・って何言わせるのよ。」
「いや、エアラが勝手に言ったんでしょ。」
「・・・・・フォル、格好いいと思うよ。」
「ミール、ほぉ、あたっ、本当に!」
「・・・・・うん。」
「リリネは、どう思う?」
「う~んそうね、ちょっと若いかしら。もうちょっと渋目な人がいいのよね。」
「リリネは、やっぱりドワーフね。」
「「「「「あはははははは」」」」」
「悪かったわね、ドワーフで!」
「別に悪くは無いわよ。渋目がいいって言っても、ドワーフの人は嫌って知ってるんだし。」
「・・・・・でも、彼氏いないね。」
「それを言わなくても・・・。」
「「「「「あははははは」」」」」
お風呂では、賑やかに入浴を続けていた。
その、お風呂を覗く1人の視線があったことは、誰も気が付いていなかった。
「・・・・・・・」
アーベルトを着替えさせ終わったフォルは、多くの来客のために料理を始めていたのだった。
タンタンタン、グツグツグツ、ジャーァ、ザクザクザク、ギュッギュッ
どんどん料理を作っていき、テーブルには、ハンバーグ、野菜炒め、照り焼きソースのサイコロステーキ、つくね串やバラ串、トマトベーコン巻き串、キノコの串等の焼き鳥各種、野菜サラダ、チキングラタン、キノコとほうれん草のクリームパスタ、かぼちゃのポタージュ、かぼちゃ・ゴボウ・ピーマン・ズッキーニ・オクラの天ぷら、トウモロコシのかき揚げ等がところ狭しと並べられていった。
飲み物としては、ウイスキーにビール、シソ焼酎に麦焼酎、シソジュースや果物を使ったジュースが並べてあった。
((ガチャ))
「いやー、お風呂って気持ちいいわね。」
「そうでしょ、リリネ。」
お風呂に行っていた女性陣が、タオルで髪を拭きながら上がってきた。
「・・・・・いい臭い。お腹すいた。」
「ミールさん、食事の準備は、出来てますよ。好きなだけ食べてください。」
「いいの。はぁり・・・、また、噛んだ。ぐすん。」
「アリス、慌てないでよ。」
「ベル、慌ててないわよ。」
「いや、慌ててるわよ。顔がこっち向いてるのに、手が食べ物に向かっているじゃない。」
「そういう、ベルだって。」
「沢山ありますので、気にせずにどうぞ。」
彼女らは、一斉に食べ始めた。
「やっぱりフォルさんの料理は、最高だわ。」
エアラさんが、料理を誉めてくれていて、それをミールさんが眺めながら、それでいて食べる手を一切止めず、次から次に手を出していた。
「足りなかったら追加で作りますから、気にせずどんどん食べてください。」
「フォルさん、今日は何の肉をつかったのですか?」
「今日はですね、ドドードリと、ファングボアに、ホワイトバッファローですね。ハンバーグは、ファングボアとホワイトバッファローの合挽き、ベーコンは、ファングボアで作ったもので、ツクネは、ドドードリだよ。他は、まあ見たらわかるだろ。」
「・・・・・・・」
エアラさん以外のアリスさん達一行は、絶句していた。
「フォルさん、毎回見事な料理ですよね。誰が食べても問題ないって凄いですよね。」
「そんな事ないですよ。」
「にゃ、にゃんで?」
アリスさんは、また噛んでしまったようだが、言い直すそぶりがない。
「にゃんで?」
「いや、なんで?魔物の肉がそのまま食べれるんですか?」
「・・・・・誰が食べても問題ない?」
ミールさんは、上目遣いで俺の顔を覗きこんできた。
「な!うちで飼ってる魔物だからですよ。あはは・・・。」
エアラさんに、以前タケノコを食べさせたことがあるが、エアラさんのことだ、忘れているだろう。
「しょ、そうなの!?」
アリスさんは、涙目になりながら聞いてきた。
「それ以外に何か考えられますか?」
さすがに俺が触ったら全てのものが、安全に食べれると誰でも知られてしまうと、今後の生活に影響が出てしまうだろうから、ここはこのまま押し通そう。
「ふ~ん、そうなんだ。」
リリネさんは、疑いの目ではあるものの、さすがにそれ以上追求はなく、料理を食べ尽くしていった。
食事が終わった頃は、まだ夕方であったのだが、旅の疲れもあったのだろうか、ベットに横になるとすぐに眠ってしまったようだ。
アーベルトさんは、翌朝まで目を覚ますことなくその日は過ぎていった。
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