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それより数日がたち、ひどかった雪は止み、積もってた雪も溶け始めていた。
道に積もってた雪に関しては、魔法で吹き飛ばして地面が見えるようになっていた。
「フォルさ~~~~~~ん。」
声がする方を向くと、村の中心部へと続く道の先に行商人のアーベルトさんがいつも通りに馬車に乗って、周りに人を引き連れて・・・って、他の人?
アーベルトさんが、いつもと違う成りで向かってきていた。
「お~い、フォルさ~~~ん。」
アーベルトさんのいつもの服は、一般市民って感じなのだが、今日は、俺が渡していた布を使って作った服だとは思うが、所々に、貴金属があしらってあり、豪勢な感じになっているのだ。
「聞こえてるよ、アーベルトさん。」
俺は、手を振りながら答えた。
周りにいる人達は、少し苦笑いをしながらこちらに向かっていた。
ガラガラガラガラ。
俺の目の前に、馬車。荷馬車が停まって、その行者席からアーベルトさんが降りてきた。
「お久しぶりです、フォルさん。」
「ええ、お久しぶりです、アーベルトさん。今回は、え~と。」
「ああ、この人達ですか!この人達はですね、護衛としてついてきてもらった冒険者の方々です。」
「私、パーティーのリーダーしへ・・いたっ」
「もう、アリスったら。私は、剣士のベル。」
ベルさんは、赤髪の切れ目の女性で、しっかり屋さんって感じだ。
「えへへ、ごめーん。アリスです。弓士です。リーダーしてます。」
リーダーのアリスさんは、ブラウンの髪でこの中で1番身長が高くて、俺より少し低いくらいだ。ただ、目の色がグレイだ。
「・・・・・ミールです。魔術師です。」
ミールさんは、髪の色がライトグリーンで、耳が尖っている。けして長いわけではない。身長は、160ちょっとって感じかな。
「見たらわかると思うけど、ミールは、樹人族です。あっ、私は、リリネドウィトール。リリネって呼んで。で、土人族よ。あと、いつもはもう1人パーティーがいるんだけれども・・・。」
やっぱり見た目通り、ミールさんは、エルフだった。
リリネさんは、ドワーフだけあって、少し身長が低いが出るとこは、1番出てると思う。
「あっ、みんな~!」
後ろから、エアラさんが手を振りながら走って来た。
ん?エアラさん知り合いなのか?
「エアラじゃない。もう、心配したんだから。いつまでたっても帰ってこないし。」
「ごめん、ごめん。ちょっと雪で遭難しちゃって。助けてもらって、帰れるようになるまでここですごしてたの。」
「えっ、そ、遭難してたの!いくら結婚式の費用のためって言ったって、自分の命は、大事にしなくちゃ。」
ん?今、な、何て?
「えっ?エアラさん・・・。」
「ああ、フォルさん、帰ったら結婚式なんですよ。ちょっと費用が足りなかったから、急いで仕事を受注したんですが、助けてもらうはめになって、大変なご迷惑かけました。でも、魔法を教えてもらえて嬉しかったです。」
「・・・ああ、それはよかっ」
エアラさん結婚!?そ、そうだったんだ。お、俺・・・
「えっ?エアラ、魔法使えるようになったの?見せて!」
「後で、後でね。あうあうあう、お願いベル、手を、手を離して、ガクガクしないで、き、気持ち悪い。」
ベルさんは、ハッと気が付いて手を離したのだが、時既に遅くエアラさんは、ベルさんに向かってキラキラしたものを振りかけてしまったのだ。
ベルさんの暴走で、俺が悲しむ暇がないくらいカオスな状態になっているのだが・・・。エアラさんは、そのまま吐き続けている。
「また、いつものやつだよ。ベル、相手の事考えないからそうなるのよ。」
リリネさんが、ベルさんに説教?を始めたようだ。
「エ、エアラさん、ベルさん連れてお風呂入ってきなよ。」
「う~、そうします。ベ、ベル、行くわよ。」
「エアラ、まだ、ベルに話があるのよ。」
リリネさんは、まだ言い足りないようだ。
「リリネさんも、ミールさんも、アリスさんも一緒に旅の汚れを落としてきたらいいですよ。」
「お、お風呂あるんだ。そ、そう、それじゃあ、お言葉に甘えようかな。」
「うん、あたしゅも・・・、また、噛んじゃった。」
「どうそ、お風呂広いから皆で一緒に入っても、ゆっくり入れますよ。」
「・・・・・・貴族みたい。」
「ミールさん、俺は、貴族じゃないです。」
「・・・わかってる。」
「エアラさんについて行ってくださいね。」
「・・・うん。」
すでにお風呂に向かうために、家に向かって歩いているエアラさん達に追い付くために、小走りでかけていった。
「フォルさん、まあ、気を落とさずに。」
俺の横に来たアーベルトさんが、肩をポンポンっと軽く叩いて励ましてきた。
俺、顔に出ていたんだろうか?そんなに分かりやすかっただろうか?
「はい、アーベルトさん、で、今回は、何で護衛なんか?」
「それはですね、フォルさんに支払うお金の額が、すごいことになってまして、お金だけで支払うと、金額がすごすぎて、色々な物も買ってきたのですが、その、総額でも大変なので、もし襲われたら取り返しのつかないことになるので、今回は、護衛を依頼したのです。仕入れもしたいですし、仕入れる商品の価値を考えると、更に護衛が必要な気もしますが。」
「そうですね、布は、かなり貯まってますから。鍋とかの調理器具も多めに作っておきました。」
「そうですか、楽しみです。それと今回は、フォルさんにお願いがありまして。」
「お願い?」
「ええ、布を作成してるところを見せていただくわけには・・・。」
「あ、いいですよ!こっちです。」
「いいんですか?」
「ええ、かまいませんよ。別に秘密にする必要ありませんから。行きましょうか。」
「はい。」
俺は、アーベルトさんを連れて工場に向かって歩き始めた。
「いや~、断られると思ってました。あはは。」
「ここです。開けますね。」
((ガチャ))
「さあ!どうぞ。」
「・・・・・・・」
中を見たアーベルトさんは、固まってしまった。
『な、何で、こ、こんな所にデ、デッドエ、デッドエンドマウスが、し、しかも、いっ、1匹いれば、町を滅ぼし、集団になれば、国をも滅ぼすと言われているのが、しゅ、集団で。』
「フォ、フォルさん、こ、ここはいったい?」
「ここが、工場です。ここの責任者は、母さんになっていますが。」
「そ、そうですか、あ、あの魔物は?」
「ああ、ここで作業してもらっているんですよ、食事は、希望している野菜を食べさせてます。ネズミ達だけではないんですよ。あっちにも。」
『あっち?あっちにもって、な、なにが?』
「さあ、どうぞ。」
『い、いや、デ、デデデデデデスサイズスパイダー?出会ったら、死を意識せよと言われる、あ、あの、デスサイズスパイダーが、こ、こんなにも。』
「ギーギー」
「おっ、ヒタム、ん?新しい服が出来たのか?ん?今回も俺のなのか?」
「ギーギー」
ヒタムは、嬉しそうに頷いている。
「わかったよ、ありがたく使わせてもらうよ。」
「ギーギー」
((バターン))
俺の後ろで何かが倒れる音がした。振り返るとアーベルトさんが倒れていた。
「アーベルトさん、アーベルトさん、大丈夫ですか?」
俺が、アーベルトさんを抱え上げると、
((ジョロジョロジョロ))
「うわっ!」
俺は、慌ててアーベルトさんを落としてしまった。
なにが起きたかは、想像通りだ。
幸い腕などにはつかなかったものの、かなり広範囲の床がオシッコまみれになってしまった。
急いでトイレからスライムを取り出して来て、オシッコを吸い取り始めさせた。
すごい勢いでオシッコを吸い取ったスライムは、意識を失っているアーベルトさんの下半身にまとわりつき始めた。
このスライム、アーベルトさんが着ている服を吸収することもなく、オシッコだけを吸収していった。
「ん?このスライム、好き嫌いがあるのか?まあ、それはおいといて、アーベルトさんを介抱しないとな。」
俺は、アーベルトさんを抱えて、その上にスライムをのせて、家に向かったのだった。
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