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それからエアラさんは、連日魔力を使い果たし、休憩し、また、魔力操作しての繰り返すこと10数日、魔力操作を身に付けることが出来た。


魔力の総量もわずかではあるが、増加したもようだ。


「ねえねえ、見てみて、ほら、私でも火を出すことが出来たわ。」

俺の前には、手のひらから火を出しては消して、また、火を出すことを繰り返しているエアラさんがいる。

なんともいい笑顔だ。

流石前世から考えると、十分なおじさんの精神年齢である俺も、微笑ましく思えてくる。


「まあまあエアラさん、わかったから落ち着いて、そんなに連発してたら、エアラさんの魔力量じゃ、すぐに枯渇しちゃうよ。」

「あ、あぁ、そうでした。魔力量を更に増やすにはどうしたらいいでしょうか?」

「そうですね、今まで通り枯渇させて、回復してを繰り返すのが1番だと思います。」

「でも、魔法なんて外でしか出来ないじゃないですか。」

「えっ、室内でも使える魔法はあるでしょ。」

「ど、どんな魔法ですか?」

「まあ、魔力球を出すとか、光を灯すとか、暗やみにするとか色々ですね。」

「そ、それ、どんなふうにするの?」

「そうですね、魔力球であれば、魔力操作の時のイメージを体の外にする感じですね。光を灯すのは、その魔力球に光が出るイメージで、暗やみは、そうですね~?」

「何?どうやるの?」

「イメージとしては、真っ暗にするイメージなんですが・・・。」

「何?歯切れ悪いわね。」

「エアラさんは、どうやったら暗くなると思いますか?」

「そうね、光を遮ればいいんじゃない?」

「それでは、今の時間家の中も真っ暗ですか?」

「いえ。」

「確かに全ての光を遮ることが出来れば、真っ暗にすることは可能です。でもそれは、暗やみではないです。閉じ込める魔法になってしまいます。」

「何?どこが違うの?」

「閉じ込めるだけであれば、土の魔法でいけますよね。でも、暗やみと言うことは、闇の魔法ですから、何もない状態で、真っ暗にさせないと意味がないのです。まあ、すぐには難しいでしょうから、魔力球から練習してください。」

まだエアラさんに、光の屈折とか説明してもわかってくれないだろうから、やめることにした。

「まあ、あなたがそういうのであれば、そうしとくわ。」

「ええ、ちなみに魔力球は、攻撃魔法にも、防御魔法にもなりますから、なれないうちは、どこにも当てないように気を付けてください。」

「え?ええ。わかったわ。」

「慣れてこれば、実体を持たない魔力だけの玉にすることが出来ますので、壁なんか通過させたあとで実体を持たせることなんかも出来ます。」

「そんなことしてどうするの?」

「ものは考えようです。例えばですね、硬くて壊すことが出来ない壁を通過してその先に攻撃したいときどうしますか?一応壁の高さは人10人分あるとしましょう。特に梯子なんかはありません。」

「え?普通ならどうやってか壁を越えてじゃないと攻撃出来ないと思いますが?」

「そうですね、特に詠唱魔法ならばそうしか出来ないでしょう。しかし、相手の方向がわかっていて、詠唱魔法でなければ、魔力球を通過させてそのあとに、属性付与、攻撃魔法変化は出来ます。そもそも魔力には実体がないのですが、イメージ、詠唱した時点で殆どの魔法に実体ができてしまっているんです。詠唱は、この魔法はこうであるという決定がありますから当然として、無詠唱でも、玉を意識すればそのままの形になるでしょ!でも、それはイメージが玉になっているだけで、魔力本質の実体がないということを理解して魔力球が作れれば、実体がない魔力球を作ることができるのです。」

「意味はわかったけど、イメージと意識、理解が一度に出来るほど簡単じゃないわ。」

「そうですね、慣れるまでは、並列思考出来るかどうかにかかってくるでしょう。」

「貴方、さらっととんでもないこと言ってくれたわね。」

「そうですか?」

「へ、並列思考なんて簡単に出来るわけないでしょ!頭の中に2人分同時に考えるっていうことよ。どうやってするって言うのよ。」

「ああ、そこはですね・・・」

「もういいわ、そこも答えがあるのね。1度に聞いても覚えられない。また、今度教えてもらうわ。」

「そうですか、ではまた次回に。」

「それで、温室の中の種は、全て成長してるみたいじゃない。いくつか取って食べさせてよ。」

「いいですよ。それでは、どの野菜がいいですか?」


今温室に育っている野菜は、レタス (レッパ)、ほうれん草 (ホウッパ)、大豆 (ソイビーン)、おくら(アオタケ)、かぼちゃ(ゴーガン)、大根 (シロタケ)、甜菜 (テーラン)、ゴボウ (ジータケ)、キュウリ (キュキュウ)、そら豆 (ハイビーン)、にんにく (ビンク)、とうもろこし (バンバン)、つるむらさき (ハイソウ)、ピーマン (ピークル)、チンゲン菜 (チンソイ)、ズッキーニ (ズキニ)、シソ (シリ)、赤ジソ (アシリ)だ。

ちなみに、とうもろこしは、爆裂種ではないのだが、バンバンと言うらしい。正しくは、爆裂種であろうがなかろうが、全てバンバンという名前らしい。

もう1つだけあるのだが、これが山葵だったんで、雪が溶けてきたら沢に山葵畑を作って育てようと思っている。


「う~ん、そうだね。私ピークルは苦手なんだよね、チンソイも、それに、アオタケはネバネバしてるし、ハイソウもだね。ソイビーンはボソボソだし、シロタケは辛いから・・・それ以外で。」

「わかりました、今のは全部使います。」

「え~!それ以外って言ったじゃん。」

「ええ、聞きましたよ。だから使うんじゃないですか。嫌いなものを食べさせてこその料理人です。今の理由であれば、食べさせることは大丈夫です。それじゃあ、今のとタケノコと、」

「ちょっと待って!今タケノコって言わなかった?」

「ええ、言いましたよ。」

「タ、タケノコってあれでしょ。」

「ええ、ご存じの通りです。」

何を筍にって思ったそこの貴方、筍ではなくタケノコなのです。

筍は、竹の生え始め、タケノコは、チクチクリンという魔物の手か能力で飛ばしてくる攻撃手段なんだ。

ただこのタケノコ、実際にはえぐみがない筍で香り、味どちらをとっても最上級と言っても過言ではない。


「それでは、野菜を収穫して、家に入りましょうか。」

「え、あ、はい、入りましょうか。」

俺達は、野菜を収穫して家に入った。


ピーマンにタケノコ、あとネギこれが揃っていれば何を作るか予想がついている人はいると思うが、そう、チンジャオロース。

大豆は、以前から行商が売っていたものを使って、味噌、醤油は作っておいたので、作ることは大丈夫だし、片栗粉もジャガイモがあるのだから作っていた。

ただオイスターソースはないので、乾燥した貝を以前購入していたものを使って出汁を取って使いたいと思う。


まずは、ファングボアの肉をスライスして、それを細切りにする。タケノコとピーマンも細切りに。ネギはみじん切り。

ファングボアに下味をつけていく。

ボールに、卵、塩、酒、醤油、胡椒とファングボアの肉を入れ揉みこむ、そこに片栗粉と油を入れさらに揉みこむ。

フライパンに油を入れ、肉を炒める。

肉に火が通ったら、タケノコ、ピーマンの順に入れて炒める。

タケノコとピーマンがしんなりしてきたら、ネギを加えて、砂糖、酒、乾燥した貝から取った出汁、醤油、胡椒、保管庫に保存していた肉の出汁を入れる。

最後に水溶き片栗粉を入れ、とろみがつけば完成だ。


次に、おくらを湯がいて、ザルに上げる。つるむらさきも同じく湯がいて、ザルに上げる。

おくらとつるむらさき、それと納豆をあわせてみじん切りにする。ここに、シソを入れてさらにみじん切りにする。醤油と貝の出汁、砂糖、塩、胡椒で味を整えて完成。


大根は、皮をむき、水からしたゆでをする。

大根に火が通れば、出汁、薄口醤油、酒に漬け込み弱火で煮込む。


チンゲン菜は、ミンチ肉を団子にして、鶏ガラスープに刻んだチンゲン菜とみじん切りしたネギを加え、溶き卵を入れてスープの完成だ。

鶏ガラスープどこから出てきた?って思われるかも知れないが、料理人で、時間劣化しない保存が効くのであれば、各種スープ、出汁は当然として作っているものである。

ちなみに、食材を真空保存することも可能だ。


出来ればここに、ご飯が欲しいところではあるのだが、ないものは仕方がないので、パンを準備することにする。

中華麺位であれば、すぐに作ることも可能なのだが、エアラさんが慣れていないこともあり、今回は出さないでおこうと思う。


「エアラさん、料理出来ましたので、皆を呼んできてもらえますか?」

「わかったわ。」

エアラさんは、パタパタと某アンドロイドの少女の漫画のように、手を後ろに伸ばして走って呼びに行った。

その後ろ姿は、可愛らしい感じがしていた。

この家には、ルシアと母さんしかいないし、ここに来る行商はみんな男性ばかりなので、女性とふれあうことが全くといっていいほどないのだ。

そのため、フォル自身、エアラと話しているときに気が付いていない位ナチュラルに敬語になっているのだ。

話すたび、エアラに引かれていることに本人はまだ気がついてもいないのだが・・・。


「あんちゃん!ご飯だって!待ってたよ。」

「ルシアちゃん、慌てなくても食事は逃げないわよ。」

「ははは、沢山作ってあるから安心しろ。」

「うん、沢山食べるよ。」

「おう、沢山食え。」

「フフフ、いい兄妹ね。」

微笑んでいるエアラさんを見て、ドキッとしたことで、下を向いてしまった。

「む~!」

その光景をルシアが見て、頬を膨らませているのだが・・・。


「それじゃあ、食べましょう。」

エアラさんが、2人に声をかけたところに、

(ドタドタ)

「すまないね、待たせたかい?」

「いや、母さん今から食べるとことだよ。」

「「「「それじゃあ、いただきます。」」」」

ルシアがいつものごとく、大皿に盛り付けているチンジャオロース等を、自分の取り皿にこれでもか!ってくらいに取っている。

「こ、これが、あのピークル。に、苦くないの?」

「いつもピークルは、固かったでしょ。」

「そう、ジャキジャキしてさ、青臭くて、苦くて。」

「炙って食べてたらそうなるよね。まあ、食べてみてよ。」

「わ、わかったわ。」

エアラさんは、恐る恐るチンジャオロースを口に入れていった。

「ん!何これ?お、美味しいこのピークル。この口の中に広がる美味しさ。う~ん、たまらない。」

「ほら、エアラさん、他の料理も食べてよ。」

「うん。」

それからのエアラさんは、凄かった。

苦手にしていたはずの、おくらやつるむらさきも問題なく食べて。大根にチンゲン菜もルシアと一緒に残すことなく食べ尽くした。

まあ、特に調味料もなく、焼いたものや、生で刻んだもの、かろうじて鉄板で焼いたものや、その上で蒸し焼きにしただけのものなんて、苦手な人からしたらどうやっても好きに慣れないのも当然である。


「う~ん、美味しかった。何でこんなに美味しいの?」

「まあ、調理の仕方と調味料かな。」

「調理の仕方?」

「そうですね、まずは鍋ですね。」

「鍋!今王都で話題の?」

「まあ、話題になっているかは知りませんが、まあ鍋です。」

「他には?」

「調味料が基本的に、塩、砂糖、胡椒位でしょう。ここには、それ以外の調味料もありますからね。」

「ふ~ん。」

「何でここには、鍋とか調味料とかそんなに色々あるの?」

「俺が作っているからですよ。まあ鍋については、鍛冶屋で作るところが出てくるでしょうから、すぐに広まると思いますよ。」

「今は、高いもんね。」

「そんなにですか?」

「そうよ!鍋1つで、銀貨5枚もするんだから。」

「銀貨5枚ですか!それは凄く高いですね。」

「高くて手が出ないもの。」

「1つあげましょうか?」

「いいの?ありがとう。」

エアラさんは、嬉しそうに微笑んでいた。


因みにこの世界の通貨は、鉄貨、小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨になっている。

鉄貨10枚で、小銅貨1枚

小銅貨10枚で、銅貨1枚

銅貨10枚で、大銅貨1枚

大銅貨10枚で、小銀貨1枚

のように10枚毎に大きくなっていくのだから、銀貨5枚というのは、鍋1つでというのは、大変な金額ということになってくる。

今度まとめてアーベルトさんからお金を貰うことになっているのだが、いくらになっているのかと思い心踊らせながら夜更けていくのであった。


評価、感想頂けると嬉しいです。


もしかすると、返事が出来ないかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

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