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数日たって、当然ながらいまだに雪は、降り続いているが。
俺は、今温室の中にいる。
何をしているのかというと、行商のアーベルトさんから購入した種を発芽させるためにいるのだ。
この世界の魔法は、ある意味万能で、ある意味万能じゃない。
イメージができれば、どんな魔法だって使うことが出来るし、イメージができなければ、どんな魔法だって使うことが出来ないのだ。
そうだな、例えば、人を生き返すことが出来るのかといえば、そんなイメージは出来ないので、生き返らせることは不可能だ。
しかし、時間を早送りしたり巻き戻しすることは出来る。イメージとしてはビデオだ。
傷も当然再生可能だ。
前世の知識は非常に参考になる。
いわゆるRPGの魔法もそうだが、学校で習ってきた実験、神様からもらった現代科学などの知識。
俺の中にあるイメージが、俺の使う魔法の基本となっている。
おっと、話がそれてしまったが、アーベルトさんから買った種、問題があって、仕入れてきたアーベルトさん自身がどんな植物かを知らないってことだ。
瓜っぽい種も何種類かあるし、黒丸の種もある。小さな粒上の種もあれば、かなり大きな丸いものまである。まあ、今回の種の中にも米はなかったのだが。
とりあえず、全て植えてしまって発芽させようと思っている。
まあ、発芽して、育っていけばどんな野菜になるかもわかるだろう。
今後もアーベルトさんには、仕入れをお願いしているのだから村の中で栽培されていた、数少ない野菜だけではなくなり、料理を充実させることが出来るようになるだろう。
また、森や山などで見つかってない野菜なんかも探せば出てきそうだし、もう少し家の充実が進めば、自分で探しに行くのもありだと思っている。
兎に角、植えないことには始まらないので、早速植えていこうと思う。
但し、何が出来るかわからないので、いきなり地植えはやめておこうと思う。
木でプランターをいくつか作っておいたので、それぞれ別々に植えることにする。
プランターの底に、砂利を敷き、上に腐葉土と家畜の糞、それと土を混ぜておいたものを敷き詰めていく。
そのプランターに、種類別に種を撒いていく。
撒き終えたら、魔法で水をかけていく。
そしてここからが、このプランターの時間を早送りする。
発芽まで、それぞれどのくらいかかるかもわからないが、まあ1時間もあれば殆どの種が発芽出来るのではないかと思っている。
発芽するまでは、ここから動けないけど。
「あなた、すごいわね。」
不意に背後から話しかけられた。
「エアラさんでしたか、急に後ろから声をかけられたから、ビックリしたよ。」
「ちゃんと声はかけたわよ。全く気づいてはもらえなかったけど。」
「そうだったんですか、それはすいません。」
「まあ、それはさておき、貴方魔法を使うのに詠唱しないのね。」
「詠唱なんか、必要ないですからね。」
「え?知り合いの魔法使いが、学校で詠唱を学ばないと魔法は使えないって・・・。」
「ああ、それは、魔力操作が出来てないからですね。」
エアラさんのしゃべり方が、変わってるって思うかもしれないが、助けてもらって、初めて会話するのにあらためて話さないやつって何奴って感じでしょ。
もう、あれから数日たっているんだから、しゃべり方だって打ち解けてきたって感じだ。
「魔力操作?」
「ええ、魔力操作出来ないからこそ、詠唱して魔力を強引に引っ張り出さないといけないからですよ。」
「そんないいかたしてるってことは、魔力操作は誰でも出来るの?」
「もちろんですけど?」
「私でも?」
「はい?なんで私でもってなるんですか?」
「昔魔力測定をしてもらったことがあってね、その時に魔力が全くないって言われたのよ。」
「そうなんだ、まあ大丈夫ですよ。早速試してみます?」
「え?今から!」
「はい、何か準備が必要なわけでもないですしね。」
「そ、それじゃあ、お願いできるかしら。」
「ええ、それでは俺の手を握ってください。」
「ええ、こう?」
エアラさんは、恐る恐る俺の左手を両手で握ってきた。
「はい、それでは、まずイメージしてほしいのが、自分のお腹のおへそのうら辺りに、丸い玉があることをイメージして。」
「わ、わかったわ、丸い玉ね。」
「そう、丸い玉です。イメージ出来てます?」
「ええ、大丈夫よ。」
「それでは、エアラさんの中にある魔力と俺の魔力をあわせてそのイメージの所に実際に魔力の玉を作ります。」
「あっ!なんとなく温かいわ。」
「そうです。それが魔力ですね。次は、その玉を伸ばしたり、潰したりイメージしてください。」
「・・・・・」
エアラさんは、集中しているようで反応がないが、魔力の玉は、実際に動いている。が、魔力の量が元々少ないのに、このまま続けていれば、当然ながら魔力が枯渇してしまう。
そこで、俺の魔力を四散させた。
「あっ!」
「ここまでですよ。続きはまた明日しましょう。」
「え~!まだいいじゃない。」
「それでは、すぐ走り出してみてください。」
「ええ、・・・足に力が入らないわ。」
「当然、魔力操作も魔力を使うんですから、元々の総量が少ないエアラさんでは、今日続けるには、限界なんです。」
「そうだったのね、悪かったわ。それじゃあ、明日も頼めるかしら。」
「ええ、勿論です。それと、今から家へ運んであげますね。」
俺は、エアラさんをお姫様抱っこして歩きだした。
「きゃ、きゃ~!大丈夫、大丈夫だから。」
「何が大丈夫なんですか?無理に決まってるでしょ。大人しくしてください。」
「で、でも~。」
「でもじゃないです。家に戻ったら、ご飯の準備しますので、ソファーででも休んでいてください。」
「は、はい。」
エアラさんは、消えそうな声で返事をしてきた。
俺は、エアラさんを家に連れていき、そのあと料理を作って、みんなで晩御飯にした。
その際、再度お姫様抱っこされたエアラさんを見て、ルシアが機嫌が悪くなったことについては、俺としては、なぜ?と疑問になったのだった。
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