桜の瞬き 卒業前の屋上、セーラー服で先生と……
はじめまして&こんにちは、おうぎまちこと申します(^ω^)
小説を書いて75日が経過しました。
いつもは恋愛ファンタジーを書いていますが、今回は何かに巻き込まれ、この短編を書きました。
普段書いているキャラと恋愛描写を、教師と生徒に置き換えた作品になります。新手の異世界転生? この話より、『癒し姫』の方がもっとイチャついてる……。
どうぞよろしくお願いいたします♪
放課後、いつものように桃香が屋上に向かう。建物の扉を開けて裏手に行くと、目当ての人物が寝転がっているのを見付けた。
彼は、白シャツの上に白衣を羽織っていて、その中で赤いネクタイだけが派手で目立っている。
桃香が、その人物に気づかれないようにゆっくり歩いていると、少しだけ強い風が吹いた。彼女の腰まである長い髪とセーラー服のスカートがたなびく。
彼の頭元まで近付き、彼女は腰を落とした。そして、寝ている人物に向かって声をかける。
「結人先生、またこんなところでさぼってるんですか?」
グラウンドからは野球部の声と、吹奏楽部の楽器の音が聴こえてくる。
屋上は、まだ制服だけだと肌寒い。
「ああ、町田桃香か……」
桃香が結人先生と呼んだ人物は、気だるげに、桃香の顔を見上げた。
少しだけ年上の彼は、化学の担当で、桃香の副担任の雨条結人先生だ。去年の四月に新任として、彼女の高校にやって来た。
若い男性、しかも端正な顔立ちをした彼は、学校の女子達皆の間で、瞬く間に人気になった。生徒皆に対して礼儀正しく、品行方正。一見すると、非の打ち所がないかに見える彼だったが――。
「結人先生、今日の最後のホームルーム、どうして来なかったんですか? あ、また煙草の匂いがします……」
「だって、怠いんだよな……正直ああいうのさ」
――本当の結人先生は、もっとがさつで適当な大人だった。
彼は身体を起こし、桃香に向き直った。
「先生、そればっかりじゃないですか。女子が寂しがってましたよ」
頬を膨らませながら桃香がそう言う。ただでさえ童顔、可愛らしいと言われがちの彼女がますます幼さを増す。
彼女を見ながら、結人は苦笑した。
「悪い、悪い。でも、俺、お前以外の生徒達には、そんなに興味ないからさ」
彼の中低音の声でそう言われ、桃香の心臓が一度だけ高鳴る。
「もう、すぐそうやって、からかうんですから!」
彼はいつも、彼女に冗談ばかり言う。
結人が、桃香を見て、声を出して笑った。
他の生徒が知らない、結人先生の本当の姿を知っているのは、自分だけ。
桃香は、ふと、どうしてこんなに結人先生と親しくなったのかを思い出した。
※※※
あれは、去年の夏頃だったか。
今のような放課後、模試の成績が振るわず、桃香は一人になりたくなった。たまたま屋上に向かった彼女は、煙草を吸っている結人と遭遇した。
真面目な印象が強かった結人先生の意外な素顔に、彼女は大層驚いた。
彼は煙草の火を地面で消しながら、驚いて涙が引いてしまった彼女に話しかけた。
「お前にしては、今日返ってきた模試の結果、悪かったな」
そう言われて、彼女の胸の内が重たくなる。
また瞳が潤んできた。
すると――。
桃香の頭に、結人先生が手を置いた。
「まあ、たまには良いんじゃないか? いつでも何でも出来るばっかりじゃ、人生つまんないぞ」
そう言って、彼に頭を撫でられた。
桃香の心臓が、一度だけ大きく跳ねる。
「なあ町田、お前が泣いてたの内緒にしといてやるからさ。俺のことも黙っててくれるか?」
特に彼を貶めたいなどと思っていなかった桃香は、その願いを黙って聞き入れた。
「先生はいつも、屋上にいらっしゃるんですか?」
「ああ、大体ここで時間つぶしてるが」
結人先生の答えに、桃香はさらに問いかけた。
「だったら、また遊びに来ても良いですか? 先生の秘密を内緒にする代わりに……」
「は? まあ、別に良いけど……」
それ以来、二人は秘密を共有する仲になった。
部活を引退し、受験勉強を残すのみだった桃香。
彼女は放課後になると、屋上にいる結人先生に会いに行くのが習慣になったのだった。
※※※
また風が吹いた。
桃香は自身の髪を抑えながら、結人に声をかけた。
「明日は、卒業式……。先生とも、もう、お別れですね」
想像以上に、低いトーンの声が出てしまった。
知らぬ内に目頭が熱くなってくる。
もう、彼に会えない。
言葉にすると、その現実が一気に差し迫ってきた気がした。
心臓がぎゅっと苦しくなる。
「へぇ、お前、俺とお別れする気だったの?」
「え? だって仕方ないじゃないですか。卒業したら、もう会え――」
それ以上、桃香が言葉を口にすることは出来なくなった。
彼女の身体は後ろへとくずおれる。桃香の長い髪が揺れた。結人の身体が、彼女の身体に覆い被さるようにして重なる。
空が見えた。
いつの間にか、桃香の唇は、彼の唇に塞がれている。
思いがけない出来事に、頭の中が真っ白になる。何が起きたのかが分からない。
彼からキスされているのだと、理解するのに時間がかかった。
はじめは、触れ合うだけだった。
だけど結人の舌で、桃香の唇がむりやり開かれる。
次第に、彼が彼女の中に入ってくる。
深くなるにつれ、呼吸がしづらくなっていく。
柔らかなもの同士が絡み合った。
煙草の苦味が、口の中に拡がる。
初めてで――。
桃香は何も考えられなくなる。
息を継ぐ、タイミングが、分からない。
――本当は短い時間だったのかもしれないが、桃香にはとても長い時間に感じた。
「雨条先生~~? どちらにいらっしゃいますか~~?」
突然、二人の耳に呼び声が届く。
屋上に向かう扉が開き、女子生徒数名の声が聴こえた。
(見られると、まずい)
口付けられたまま、我に返った桃香は、結人の元から離れようとした。だが、彼に身体を抑えられて、身動きがとれない。
一度だけ唇が離れた時に、彼女は結人に向かって訴える。
「先生……人が、来ちゃ――」
ぞわりとした感覚が、身体中に走った。
桃香の首筋を、白い肌を、結人の唇が這う。
彼が赤いネクタイを緩める姿が、視界に入った。
「集中しろよ」
抵抗したいのに、できない。
声が出そうになるのを、桃香は我慢する。誰かに聴かれるのはまずい。
「先生いないんですか~~?」
女子生徒が、二人の元に近付いてくる気配を感じる。
なのに先生は、辞めてくれない。
彼は長い指で、桃香の鎖骨をなぞった後、彼女のセーラー服のリボンをほどいた。
そうしてまた、口付けられる。
初めて味わう快楽と、バレたらどうなるのだろうという恐怖が同時に襲う。
心臓の音が鳴り止まない。
(もう、ダメ……見つかっちゃう……)
桃香は結人に抗えず、口中を玩ばれたままだ。
思わずぎゅっと、目を瞑った。
「屋上、先生いないみたいだよ~~。もういこう!」
女子生徒達が、そう口々にし、足音は遠ざかっていった。
そうして、扉が閉まる音がする。
そこでやっと、桃香は結人から解放された。
桃香の息は、上がっていた。
頬が紅潮しているのが、自分でも分かる。
全身がぐったりとして、力が入りづらくなっていた。
なのに、見上げた結人の表情は、いつもと変わらず余裕があって、桃香は釈然としなかった。
「……先生」
「お前が、もう卒業だって言ったんだろ」
「……卒業式は、明日……ですよ」
なんとか呼吸を整えながら、桃香は結人に抗議する。
「俺は品行方正で通ってて、お前も優等生。誰も俺達の関係に気付かないよ」
彼は、彼女の身体からゆっくりと離れた。
結人は地面座り直し、白衣の内側のポケットにしまっていた海外産の煙草とライターを手に取った。そこから一本手に取り、火をつける。
「あ、悪い。お前の前では吸わないようにしてたのに……」
「……大丈夫、です」
桃香も、時間をかけながら、自身の身体を起こした。
結人が煙草を吸う姿を、彼女はぼんやりしながら見る。つい、彼の唇に目が奪われてしまった。
その視線に気付いたのか、結人は桃香に声をかける。
「なあ、お前、俺のこと好きだろ?」
「え――?」
桃香は目を丸くしてしまう。
ばれていたのかと思うと恥ずかしくなり、俯いてしまった。
彼女がもじもじしていると、結人がさらに言葉を継いだ。
「俺もさ、気になる女に、そう言う目で見られてるの分かってて、我慢するのは大変だったんだ」
そう言われ、桃香は顔を上げる。
(今、結人先生、気になる女って――)
彼と目が合う。
「お前のこと、大事にするよ。卒業してからも、ずっと」
結人から告げられた言葉に、桃香は黙って頷いた。
彼は少し笑んだ後、いつものように煙草の火を地面で消す。
そして彼がまた、そっと彼女に口付けた。
先程までとは違い、ついばむようなキス。
だけどその口付けからは、煙草の香りと、これから先を予感させる大人の味がした。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます♪
当作品、対抗するは、小説家になろう&カクヨムランカーである皆様です。
もし助けてくれる優しい方、「まちこ、作品投稿、止まるんじゃねぇぞ……」と思われた方、よければ投票等よろしくお願いいたします♪
※煙草は地面で消さないでね。作者は煙草を吸ったことがないのでよく分からないけど、ポケット灰皿? があるらしいですよ。
※この作品2人のファンタジー版、キス多めの『癒し姫』のURLも下記にあります。来週頃、ついに押し倒……? どうぞよろしくお願いいたします♪
(桃香と結人……髪色が違う&幼馴染みじゃない&本来煙草吸わないキャラだろうけどこちらは吸ってる&お前呼び……あれ? 結構違うな、別人かな?)