第七十三話
オアシスと思われる水源は近いように見えたが、思っていたより距離があり意外と遠かった。これがいわゆる砂漠で距離感がつかめなくなる現象ってやつか。いくつも砂の丘があって上り下りで余計に疲れるしな。
水源に到着する頃には太陽も傾き始めていた。夕暮れが近くなり、すでに日陰部分はひんやりとし始めている。完全に日が落ちるまでに火は確保しておきたいな。砂漠の夜は冷えるというし。最悪ここの水が飲めなくても氣力使って自分で出せば良いしな。
「やっと着いたわね。」
「思った以上に遠かったな。」
「うん。今日はもう動けないかも…というより動きたくない。」
「だな。とりあえず夜はここで明かすとするか。」
「賛成。」
「まずは水の確認っと…。」
指先を水につけて軽くなめてみる。
「こ、これは…!?」
「どう?」
「真水だな。濁りもないし臭くもないから飲めそうだけど…。」
「だけどなに?」
「魚とか生き物がいなさそうな感じがする。死んでる池じゃないんだけど妙な感じ。」
「うーん、あなたがそういうならやめておく?氣力で水出して飲みましょ。」
「そうだな。」
手に意識を集中し、水を出そうとするが出ない。
「あれ?」
「あはは、しばらく使ってなかったから感覚忘れちゃった?」
「そんなことはないはずだが…。」
「しょうがないわね、私がだしてあげる。」
リシュも水を出そうと試みるがやはり出ない。
「おかしいわね。なんで出せないのかしら。」
「だろ?何か違和感があるんだよな。」
「うーん、よくわかんないけどここの水を飲むしかなさそうね。」
「念の為、飲み水は煮沸しとくか。」
「そうね。じゃあまずは火を起こさないと。」
手に氣力を込めるがやはりでない。
「うーん、ダメね。自然は豊富なのに。」
「この辺はオアシスだけど、砂漠のど真ん中だから枯れた大地といえば枯れてるからなぁ。」
「もしかしたらカナとスズカちゃんが持ってる氣聖石も近くにないからとか?」
「その影響も少なからずありそうだ。俺は広く浅くしか使えないし。」
「私も。」
「となるとちょっとマズイかもな。氣力なしで普通にサバイバルってことだろ。」
「身体は問題なく動くからコレでなら大丈夫だけどね。」
リシュは剣を手に取り、軽く振る仕草をした。
「まあ俺も槍はあるけど氣力なしはキツいな。生活レベルが一気に落ちる感じ。」
「一人暮らしでライフライン全部止められたみたいな?」
「まさにそれだわ。こうしちゃいられない、早く燃やすものと良さげな木探して火起こさないと。」
「薪になりそうなもの集めればいい?」
「ああ、幸いこの辺りに木々はそれなりに生えてるから、他に種っぽいのとかツタとかあれば尚良いな。」
「了解っ!手分けして集めましょ!」




