第七十話
しばらくして寝入ったあと、2,3時間は経っただろうか。ドアを叩く音がして目が覚めた。部屋は木戸を閉めたため真っ暗なままだ。
「ちょっとー!いつまで寝てるのー?」
リシュがご立腹なようだ。そろそろ起きないと今にも入ってきて布団返しをされそうな勢いだな。
「ねぇってば!もう…勝手に入って起こすんだから。」
時既に遅し。まだ寝てるふりをしとくか…。
「真っ暗なままじゃない。まったく…戸、開けるわよ。」
ギギギ…と音を立てて木戸が開く。もう昼が近いのだろう、とても明るい日が差し込んでくる。
「あら?スズカちゃんはいないのね。ダメなお兄様だこと。」
「これでもヴィクトはまだ起きないなんて…実は起きてるとかじゃないでしょうね?」
どうしたものか。起きるタイミングを逃した。というかいま布団を剥ぎ取られたら下の愚息がまずいことになってるのが丸見えに。
「…。」
「んじゃ強制的に起こすとしますか!」
『ばさっ!!』
リシュに勢いよく布団をまくられた。俺は仰向けになっていたのでアレも元気にアピールしている。
「よ、よう。」
「おはよう。…下で待ってるから早く支度して降りてきてね!」
「あ、あぁわかった。」
「ソレもちゃんと静めてからきてよね!」
「おう…なんなら手伝ってくれても」
『バサッ!!!』
布団を投げつけられた。冗談でも滅多なことを言うもんじゃないな。
「バカ…。」
こっちは振り向かずに背中越しに小声でつぶやいて部屋を出ていった。
「てっきりもっと怒るかと思ったが意外な反応だったな…。これじゃもっと元気になってしまう。」
しばし瞑想して落ち着かせたあと、急いで支度をして下に降りた。そういえばいつの間にスズカは出ていったんだろうか?起こしてくれればよかったのに。
「すまない、待たせた。」
「遅いわよ。早く朝食済ませましょ。」
「悪いな、待っててくれたのか。スズカとカナは?」
「カナは先に食べて出かけたわ。スズカちゃんは見てないけど多分同じじゃないかしら。」
あいつのことだから早く飯を済ませて朝トレーニングしてるんだろうな。感心するわ…。
「そっか。ありがとな。」
「別に…さ、食べましょ。」
「食べ終わったらとりあえず昨日の場所に行ってみるか。」
「そうね。何も変化はなさそうな気もするけれど。」
「村自体がなんだか変な感じがするんだよな。」
「そうねー…。」
「いっそのこと放置して次の村に行くのもありかもな。」
「それはちょっとどうなの?」
「いや、別にとりわけ大事な何かがあるわけでもないし、人が死んでるわけでもないし。」
「言われてみればそうだけど気にならないの?」
「下手に首突っ込んで巻き込まれるのは避けたいなぁ。」
「でも情報収集はどうする?」
「この状況を解決したとしても確実に得られるわけでもないだろ?なら自分たちの足で探索した方が確実に調べられるんじゃないか?」
「まぁ確かに…。でもこういうイベントってこなしていくものじゃないの?」
「オンラインゲームとかだと必須なミッション以外のクエストは受領してもやるやらないは自由だからなぁ。俺は報酬が美味しくないものはスルーしてた。」
「謎なまま放置するのも気になるけどそれも一つの選択肢かしら。」
「全部こなしていったら何年あっても足りなくなるぞ。」
「じゃあ今回は放置?」
「かな。何もなさそうな村だし…。」
「了解!じゃあ早く旅立ちましょ。宿代ももったいないし。」
「だな。チェックアウトしたらまず2人を探そう。で、めんどくさそうなイベントはおさらばだ。」
「はーい。」




