第七話
しばらく世話になった爺さんにお礼と別れをつげ、俺とスズカはこの世界をもっと知って思いっきり楽しむ為に旅立った。自由気ままに風の赴くままに行き先を決めて旅をするのはとても好きだ。こっちの世界に転移する前は、仕事の長期休みや辞めた後に数ヶ月旅に出て家に帰らなかったり、よく一人旅をしたっけな。知らない土地に行ってその土地の名物や見聞を広めるのは人生が豊かになった感じがしてとても楽しかった。時々、一人が寂しくなる時や一人だと入れないお店があったけど、今回の旅はスズカと一緒だからどこでも入れるし、寂しくなることもない。
と心躍らせながら道を歩いているとスズカが話しかけてきた。
「これからどこに向かうの?」
「とりあえず爺さんにもらったこの地図を頼りにしながら、この道を歩いていくと街道にぶつかるらしい。そこから一番近い街に向かうつもりだ。手書きで雑すぎてイマイチ縮尺が掴めないからわからないが、歩いて数日はかかると思う。」
「そっか、結構かかるんだね。次いく街に美味しいものあるかな?お肉食べたい。」
「そうだな。割と大きい街だから色んな種類の肉があるかもね。」
「鹿と猪ばっかり食べてたから他のも食べたい。特にビーフジャーキー。」
「ははは。あの時食べたジャーキーが気に入ったんだな。さすがに全く同じものはないと思うけど、干し肉はあるだろうから探してみようか。ま、なければ作ってやるよ。好みの味付けをして、干すなり燻製にするなりで意外と簡単に作れる。」
「ん。お兄に任せる。」
こんな感じに会話しながらのんびり歩いているだけだが、誰かと一緒というものはいいもんだなーとしみじみ感じる。見た目は若い青年だというのに、中身は独り身のおっさん感覚が全然抜けてない。怪しまれることは別にないだろうけど、少しは若者の演技もするように心がけておこうかな。
と考えながら歩いているとふと気配が感じられた。
「お兄、3頭こっちに近づいてきてる。」
魔物が寄ってきたようだ。
「ああ、もう少し引き寄せて2匹は弓で仕留めよう。先に俺が射ってすぐに槍に切り替えるから援護を頼む。」
「ん、了解した。」
するとすぐに狼のような魔物が駆け出してきた。すかさず狙いを澄まし1頭の心臓めがけて矢を射掛ける。ヒュッと風を切って矢が魔物に突き刺さり、ドシュッと霧散して消滅した。
「まず1頭」
そう言いながらすぐに弓から背中の槍に手をかけ戦闘態勢に入る。その間に残る2頭は左右にわかれ、ジグザグに走りながら接近してくる。が、それを予想していたのか見事にスズカの放った矢が刺さり、また1頭仕留める。残るは1頭。真正面から飛びかかってくる魔物に対して槍でヒュッと薙ぎ払い首を落とし仕留める。
「ふう、さすがスズカだな。」
「あれくらいどうってことない。簡単。」
「お、素材をドロップしたやつがいる。拾っておこう。」
「うん、毛皮と肉。魔物は動物と違って捌かなくて済むから楽だね。」
この世界の魔物は倒すとたまに素材やアイテムをドロップすることがある。少しゲームぽくて不思議な感じがして慣れない。ちなみに死体が残らず素材などを落とすのは魔物だけで、動物や人などは普通に死体が残る。魔物は生き物の扱いではないのか。魔物ってくらいだから魔が差した動物?どうやって発生するのかも興味があるなぁ。
「肉は今日の夜飯にしよう。どうしようか、焼く?煮る?」
「焼く!おにっく♪おにっく♪」
「あいよ。今のうちに塩胡椒を擦り込んでおくかな。」
と軽く下ごしらえをして再び歩き始めると日が傾いてきた。丁度いい感じの岩が転がっている場所が見えてきたので、あそこで野宿することにしよう。




