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第六十三話

 『コンコンコン』


 自室に戻ってくつろいでいるとドアをノックする音がした。ジンがきたのだろう。


「俺だ、入っていいか?」


「ああ。」


ドアを開けてジンが入ってきた。


「あれ?スズカちゃんはいないのか。」


「その辺で食後の運動でもしてるんじゃないかな。」


「アレだけ食べた後によく動けるな…スゲえわ。」


「確かに。で、例のものは?」


「ほら。」


 ジンは硬貨がそれなりに入った巾着袋をテーブルの上に置いた。紐を解いて中を確認してみると思った以上に入っていた。しかも全部銀貨だ。


「これ多くないか?」


「実は最初の値段設定を強気にしてたんだ。反応が悪ければ徐々に下げて食いつかせようと思ってたんだが、そのまま即売れちまった。」


「その結果がコレってことか。」


「まぁ、気持ち多めにしてあるけどな。かなり世話になったしこれから大変だろうから。」


「すまないな。助かる。」


「なーに、これからガンガン稼ぐから今度は全部金貨で渡せるぐらい稼いでやるさ。」


「そいつは頼もしいな。副収入で豪邸が建てられそうだ。」


「そんときは豪華絢爛な家具装飾を作らせてもらおうか。」


「とんでもない家になりそうだ。成金趣味にはしたくないからほどほどに頼む。」


「そうだ、コレも渡しておく。」

ジンはポケットから小さな箱を取り出した。


「これは?」

箱を開けて覗いてみると、イヤリングが複数入っている。


「もし、旅の途中で大口の取引先を見つけたら商談してきてくれ。」


「わかったよ。しっかりしてるな。」


「世界中に俺のブランドを広めないとな。」


「どっちかというとリシュブランドだけどな。ジンはその職人として名を馳せると。」


「そういうことだ。あとこれなんだが…。」

おもむろに小綺麗な箱を取り出した。


「何だ、まだあるのか?」

開けてみると指輪が入っていた。


「余計なお世話かもしれないが受け取ってくれ欲しい。」


「は?お前にはリズさんがいるだろう。そもそも俺は男…。」


「お前は馬鹿か。長い旅になるんだろう?もし気に入った女がいたらその時に使ってくれ。戻ってきた時に結婚指輪も作ってやるよ。」


「いつの話だかわからないのに。余計なお世話だな。」


「そうでもないだろう?お前らも結婚してもおかしくない年なんだし。」


「そうか…ま、ありがたく受け取っておくよ。」


「ちなみにリシュの薬指サイズに合わせて作ってあるから安心しろ。」


「ブッ!ありがた迷惑だな。」


「金に困って売る真似だけは辞めてくれな。それでも俺が精魂込めて作った指輪なんだから。」


「当たり前だ。」


「なら良かった。じゃあ気いつけて頑張れよ。」


そう言い残すとジンは部屋から出ていった。


「まったく、どこまでもイイやつだな…。」


 前世でここまで親身になってくれたやつがいただろうか。いや、いないな。もし、そんなやつと巡り会えていたとしたら俺の人生も考え方も少しは変わっていたのかもしれないな…。この世界での新しい出会い、縁、絆を大事にしようと改めて胸に誓った。


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