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第五十三話

 部屋に戻るとスズカがベッドに寝っ転がっていた。


「ただいま。」


「ん。おかえり。…どこ行ってたの?」


「あぁ、すまん、言ってなかったな。そろそろ旅立とうと思ってて必要物資の買い出しに。」


「いつ?」


「2日後だな。今日の夜にみんなに話そうかと。」


「ん。」


「旅の支度しておけよ。」


「大丈夫。いつでも出られる。」


「そっか。荷物ほとんどないもんな。あ、そうだ。これ新しい弓。良さそうなのあったから買ってきた。」


「ん。ありがと。旅に出る前に馴染ませておきたいから明日試し打ちしてくる。」


「おう。程々にな。夕方から予想じゃ宴会になるだろうし。」


「わかった。お兄は?」


「明日か?世話になった人達に軽く挨拶でもしてこようかと思ってるが、あとは暇だぞ。」


「じゃあ少し付き合って。」


「わかった。昼からで良いか?」


「ん。牧場近くの丘の上で待ってる。」


「了解。」


 荷物をまとめて過ごしていると、部屋をノックする音がしてリズさんの声が聞こえた。


『コンコンコン』

「夕飯の支度ができましたからいらしてくださいね。」


「はい。すぐ行きます。」


 広間に向かうとパンとスープと魚メインの普通な夕食が今日は並んでいた。宴会ではないようだ。ジンもいるところを見ると先に呼んできたのだろう。ネックレスの進捗具合も聞いておかないと。そもそも出来上がらないと旅立てないじゃないか。さっき忘れてたのはコレか。まぁリシュが旅支度しに戻るくらいだからおおかた完成の目処が立ったからだと思うけどな。


食べ始めるとリズさんが話しかけてきた。


「リリカさんとのデートはいかがでしたか?」


「だからそんなんじゃないですって。買い物は安く良いものが買えてよかったです。」


「それは良かったですね。でも丸一日一緒なら色々と楽しまれたのでしょう?」


この人はどこかから見ていたのだろうか。すべてお見通しと言わんばかりの目をしている…。下手な回答はできないな。


「えぇ、まぁ…楽しかったです。」


「そうでしょう?いつもとヴィクトさんの雰囲気が柔らかいので、さぞかし素敵なデートだったのでしょうね。羨ましいですわ。」


リズさんはちらっとジンの方を見た。ジンは目を合わせずに黙々と食べている。


「そうですか。いつも雰囲気どんな感じです?」


「こう…どこかピッと張り詰めているような少し緊張した雰囲気がありますわね。そこまで気にする程でもないのですけれど。今日はそれも無くなっていて柔らかい雰囲気です。」


「無意識ですね。気をつけます。」


「良い気晴らしになって良かったですね。」


「はい。」


 たしかにリリカとの買い物は長いこと忘れていた感覚、若い頃にしかできない青春な感じだった。あの頃は思うがままに、勢いだけで何でもやってたな…人との出会いや恋愛も趣味も。今は人の様子や動向を第一に気にしながら行動している気がする。大人になったら人との距離感って難しくなるな。自然と一歩引いた立ち位置にいるというか壁を無意識に作るから友達も作りづらくなるし。知り合いは多くいても友達や親友と呼べる相手は全然増えないんだよな。おっさんの悲しい性か。今は若者なのだから年相応にしないと逆に変だな。と言われてもこれはなかなか直せそうにない…長期戦になりそ。



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