第四十三話
「デザイン画取ってくるから先に行ってて。」
「了解。」
リシュに言われるがまま先にジンの待つ工房へと向かった。どんなデザインが出来たのか楽しみだな。絵もあれだけ上手かったし、元々そういう仕事でもしていたのだろうか。まぁ訳ありっぽいし、詮索は野暮だからしないでおくが…。
工房につくと大きめのテーブルの上をジンが片付けていた。作業の途中だったのだろう。作りかけの装飾品や素材が転がっている。
「ヴィクトか。昨日の今日でデザインが出来上がるとは驚いたな。」
「そうだな。そんな時間がいつあったのやら。」
まるで夏休みの課題を配られた日に済ませて、休みに入る前に課題をほとんど終わらせてくる学生のようだ。一定数必ずいたな。俺もその一人だったが。
「出来るやつは時間の流れが違うんだろう。」
「そんなことないわ。時間の使い方が人より少し上手なだけよ。」
リシュが複数枚の紙を持って入ってきた。
「ご謙遜を。早速見せてもらおうかな。」
紙を見ると大小様々なデザインのアクセサリが描かれている。主にネックレスとイヤリングが多いな。後は指輪が何点か書かれている。他に比べて指輪だけ少ないような気がするが…何かあるのか。
「すごいな。すでに頭の中に出来上がってて一気に描き出した感じ?」
「うん。元々得意分野だしね。ま、一部はあんまり得意じゃないのもあるけど…。」
おそらく指輪のデザインのことを言っているのだろう。あまり触れずに他を褒めてみるか。
「ネックレスやイヤリングはシンプルなものから綺羅びやかなものまで多種多様だな。年齢層を絞ったとか?」
「それもあるけど、使える輝石とか氣聖石の大きさとかでも合う合わないがあるから。」
「なるほど。工程が難しそうでもジンならなんとでもできるだろう。」
「おいおい、流石に無理なものは無理だぞ。まぁ大体は何とかできそうだが、精巧なものはちょっと時間がかかりそうだ。」
「だそうだ。」
「そうね。実は最初に作って欲しいものがあって、これなんだけど…。」
シンプルなネックレスタイプのデザインを指差した。大きめの石を使うタイプだ。
「これをまず2つ作ってほしいの。急ぎで。」
「急ぎか…わかった。メインの石はどれを使うんだ?」
「これを。」
リシュは袋から燃え上がるように紅い真紅の石を取り出した。
「それはもしかして火の氣聖石か?」
「そうよ。カナから借りてきたの。そして2つ目はスズカちゃんの水の氣聖石を使うわ。石のまま持ち歩くより身につけていられる方が楽だし、効果もありそうじゃない?」
「そうだな。あとでスズカに言っておくよ。」
「いきなり大仕事だな!ここの細かいところとか素材を詳しく教えてくれるか。」
ジンとリシュは細かいデザインの打ち合わせに入ったようだ。俺がいても役に立ちそうにないし、スズカを探して水の氣聖石を借りてくるか…。
「また何かあったら声かけてくれ。ちょっと出かけてくる。」
2人からの返事はなかったが聞こえているだろうから大丈夫だろう。さてスズカを探しに行くか…。




