第四十一話
「いつの時代からいつどうやってこっちに来た?」
「いきなりたくさんの質問だね。」
「悪い、ちょっと興奮して。」
「えーっと、20○○年だったかな。日本のとある山の中にあった湖から。」
「そこってもしかしてこんなところか?」
簡単に絵を描いて説明した。
「そうそう、そんな感じだったかも。でも祠とか洞窟は覚えてないなぁ。」
「湖で泳いでたとか?」
「ううん。違うの。何ていうか…あれ。」
「うん?」
「人生何もかも嫌になっちゃって…その、ね。」
「ごめん。思い出したくないこと聞いてしまったな。」
「いいの。今こうやって楽しい時間と二度目の新しい人生過ごせてるから。」
「ということはやっぱり記憶も持ったまま転生したってこと?」
「そうみたいね。あなたも?」
「ああ。ちなみに俺はあの辺りでキャンプをしてて、狐に誘われて進んだ先の洞窟で落盤にあって、洞窟内の水に飛び込んだら転生した。」
「そっかぁ。落盤で埋まったなら追加で転生者が来ることはなさそうだね。」
「そういうことになるか。湖から水中で繋がったままならまだありそうだけど、まずあの辺りに人が来ること自体ないよなぁ。」
「そうだよ。よほどの物好きじゃないと行かないよね、あんな場所。」
リシュは笑い飛ばしながら言った。
「はは、違いない。お互い物好きだな。」
「ね、転生して出てきた先はもしかしてシンザお爺さんのところだったりする?」
「え?じゃあ数年前に旅立った絵の上手い娘って?」
「上手いかどうかはわかんないけど私だよ。シンザお爺さんとナポリお婆ちゃんは元気だった?」
「俺が来たときはシンザ爺さんしかいなかったんだ。お婆さんは少し前に病気で亡くなったって。」
「えっ…お婆ちゃん亡くなったんだ。身体の具合はあまりよくなさそうだったけど。」
「そうなんだ。爺さんの方はめちゃくちゃ元気だったよ。しばらくお世話になって色々教えてもらったんだ。」
「私の時もそんな感じ。最初は転生したことが自分自身受け入れられなくて、落ち込んだままの暗い子だったと思う。でもあそこで過ごしていくうちに気持ちも和らいで、ああ、ここから新しい人生が始められるんだって受け入れてから楽しくなったんだ。それを教えてくれたのがシンザ爺さんとナポリ婆ちゃんだったの。」
「そっか。気持ちの整理がついてから旅に出たって感じ?」
「うん。それからのことは長くなるからまた機会があれば話してあげるね。そろそろ眠気の限界。」
「あ、もうこんなに時間が経ってたのか。」
気づけば月もかなり傾き、夜の帳が上がり始めそうな頃合いになっていた。
「ね。そろそろお開きにしよ。続きはまた二人きりの時に…ね?」
「あ、あぁ…おやすみ。」
「おやすみなさい。」
空になったコップとデキャンタを持ってリシュは家の中に戻っていった。サッと片付けて部屋に戻っていったようだ。想像していた以上に話が進み、リシュのことを色々聞けてさらに酒の酔いもあってか理解が追いつかず頭がぽーっとしている。単にそれだけじゃないと思うけど。なんだろう。とりあえずこういう時は眠って記憶の整理をするのが一番。これが夢じゃないことを祈ろう。
部屋に戻るとスズカが眠っていた。彼女も夕食後は満腹ですぐに眠ってそのまま熟睡しているのだろう。俺がいないことにも気づいていないようだ。起こさないようにそーっと忍び足で自分の寝床に入る。そして眠りについた…。




