第三十九話
美味しそうな匂いが家中に拡がっている。魚料理のオンパレードだがどれも美味しそうだ。
「めっちゃ良い匂いがするー!!」
「クンカクンカ…美味しそう。」
「すっごい美味しそう!これって全部リズさんが作ったの?」
「半分くらいヴィクトさんの料理です。意外と料理上手な方でびっくりしました。捌き方もすごく上手でしたし、優良物件ですね。オススメいたしますよ。」
リズさんはニコッと微笑んだ。
「えっ!こんなに料理出来るんだ?意外…。」
リシュが疑いの眼差しでじーっとこちらを見ている。
「な、なんだよ。」
「べっつに。食料調達してきて自分で捌いて、料理も出来てちょっとだけすごいなーって思っただけよ。」
「素直に褒めてくれれば良いのに。」
「それだとなんか悔しいじゃない。」
「そうか。そいつは失礼した。」
「これで氣力も使えて戦えて、馬も乗れるし何でも出来そうだね。」
リリカが肩に寄りかかりながら割り込んできた。
「それにちょっとイケメンだし。」
「むー…。」
誰が発した声かは聞き取れなかったが、嫉妬のオーラと眼差しがいくつか痛い。
「どれも中途半端に出来るだけさ。器用貧乏ってやつだな。」
「得意分野以外は全く出来ない人からすると、それは嫌味にしか聞こえないなー。」
『つんつん』
ほっぺをリリカに指で突かれた。
「おしゃべりはこのくらいにして料理を食べよう。折角の料理が冷めてしまう。」
「はーい。」
ようやくリリカが離れてくれた。嫉妬のオーラと視線も落ち着いたようだ。
「じゃあ今日も乾杯するか!」
なんだかんだで毎日大人数の食卓な為、ジンの音頭で連日宴会状態になっている。
「かんぱーい!」
「塩焼きおいしー!」
「この揚げた魚もソースが絶品だよ。」
「ここの地元の香辛料美味しいよねー。」
「これシャリシャリした食感だけど、刺し身とはちょっと違った感じで美味しい。」
リシュが抵抗なく刺し身を口にした。この世界での生食は一般的なんだろうか。
「なかなかいけるだろ?」
「うん。美味しいね。」
「えー!それ生魚なの?お腹壊さない?大丈夫?」
リリカが驚いている。あれ?おかしいな。
「ああ、ちゃんと身も確認したし、念の為一回凍らせてあるから大丈夫なはずだ。」
「へー、そうなんだ。珍しい調理だね。」
「そ、そうか?爺さんに教わったんだ。な、スズカ?」(ということにしておこう。)
「うん。生魚は美味しい。」
「でも滅多に食べられなさそうだね。氣力使いじゃないと氷なんて貴重だろうし、ましてや魚自体を氷漬けだもん。」
「そうだな。自然の力…氣力に感謝だ。」
なんとか問題なく話を反らせたかな?にしてもリシュは普段から食べていたような感じに生魚に手を出していたな。カナもか。もしかしてリシュかカナが転生者で、どちらかが猫ってことはないか?話の節々で前世の、しかも同じような時代の断片が出てくるから無きにしもあらず…か。そのうち良さそうなタイミングで突っ込んで聞いてみるのもありかもな。むしろ聞いた方が今後一緒に旅をする上でも重要な気がする。




