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第三十話

 しばらくして街の近くまで戻ってきた。男なら一度は誰もが憧れる幸せな一時、美少女とのタンデム…まぁ今はバイクじゃなくて馬だけど。背中の心地良い感触が終わってしまうのはとても悲しいな。


「馬を戻しに直接牧場までいこっか。」


「ああ、了解。」


 街方面から少し道を逸れて牧場へと向かう。あたりの光景は、放牧されている馬たちに変わってきた。まだ生まれて間もないだろう当歳っぽい小さな子馬と親馬も見受けられる。元気に走り回ってて可愛いな。しばらくすると大きな木造の建物が見えてきた。あれが厩舎だろう。


「おーう!リリカちゃん戻ってきたのかー!」


朝、馬を持ってきてくれたおじさんが遠くから叫んでいるようだ。


「おじちゃーん、この子たちすぐ小屋にいれるー?」


「いんや、その辺の空いてるとこに放牧しといてくれいー。」


「わかったー!ありがとー!」


「どうどう。お疲れ様。」


馬を落ち着かせ、厩舎のほど近い広めの場所に止まった。


「手綱とか鞍外しちゃっていいよ。無口はつけといてね。」


「ああ、了解。」


 手慣れた手付きでリリカは馬の装具を外していく。俺もそれなりの手付きで外す。覚えるまでどこの部分をどう外すかよく迷ったっけ。


「外したやつはどこにおいておけばいいんだ?」


「厩舎に片付けるから一緒にこっちきて。もう馬達は自由に放していいよー。」


『ブルルッ』


 厩舎に向かい、馬具を片付けた。するとリリカにバケツを手渡された。


「喉乾いてると思うからお水汲んで放牧地の桶に水いれてきて。」


「ああ、それなら直接入れてくるよ。」


「あ、そっか。スズカちゃん、水の氣力使えるんだっけ。じゃあお願いね。」


「ん。いってくる。」


 スズカは軽く返事をすると厩舎の外に出て先程の放牧地へと向かった。リシュとカナも一緒に行ったようだ。


「ね、こっちきて。」


「ん?どうした。」


 咄嗟にリリカから手を握られ厩舎の奥へと連れて行かれる。これはまさかの展開に…?いやいや流石にないだろう。そんな妄想をしているととある部屋に入った。


「何変な顔してるの?あー!もしかして妙な期待してたんじゃないでしょうねっ。」


「そ、そんなことあるわけないじゃないか。」


「ざんねーん、期待はずれですっ!この部屋はね、レースで優勝した時のレイが飾ってあるんだよ。」


「そうなのか。…にしても凄い数だな。」


「ここの牧場はね、代々続いていて昔から何度も強い馬出してるんだ。」


「へぇ。リリカもここの関係者なのか?」


「んー、一応関係者になるのかな?血縁とかはないけど、うちが騎手の家系でね。私もよくここの子に乗せてもらってたんだ。」


「過去系ってことは今は乗ってないのか?」


「うん。前に落馬でひどい怪我しちゃって。それからは本気で走らせることができなくなったから騎手は辞めたの。でも馬は好きだからいつもお世話しにきてて、軽く乗ってるんだ。」


「そっか…残念。リリカの勇姿を見ることは出来ないんだな。」


「でもほら、これが私が優勝したときのレイだよ。さっき乗ってた子がそうなんだ。あれもそう。」


「結構な勝利数をお持ちのようで。生涯成績は?」


「14戦12勝だよっ。すごいでしょ!」


「それってかなりの名馬じゃん。というか歴史的名馬…。」


「うんっ。あの子の子供も今はいっぱいいるし、種牡馬として引退した後はゆっくり長生きしてほしいんだ。」


「活躍馬ほど早く死ぬことが多かったりするもんな。余生は楽しんでほしいね。」


「ね。そろそろリシュ達と合流して街に戻ろっか。お腹空いたし何か食べよっ。」


「ああ、そうだな。」


 厩舎から出るとリシュ達もこっちに向かって歩いてきていた。


「ねー!お腹空いたしそろそろ街にいかないー?」


「うんー!こっちも同じ話ししてたところ!」


 この後満場一致で街に向かい、みんなでご飯を食べに行くことにした。今後のことについてどうするかリシュ達と相談しないとな。一緒に旅をするか別行動するか悩ましいところだけど、まずはもう少し友好度と信頼度を上げないと一緒に旅をしてもらうにはハードルが高いような気がする。ここはひとつ、前世のテクを駆使する必要がありそうだ。




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