第二十四話
昨夜は温泉の効果もあってか、いつも以上にぐっすり眠れた。肉体的にも精神的にもとても回復した気がする。顕著に効果が出る異世界温泉恐るべし。朝食は軽く済ませたのだが、リリカ達が何かやってるなと思ったらお弁当を準備していたようだ。サプライズにしたかったぽいし、とりあえず見なかったことにしておこう。ちょっと楽しみ。
リリカに言われたとおり、街から出てすぐのところで待っていたら馬が三頭引かれてきた。あれが牧場の知り合いだろう。
「リリカちゃんにはいつものこの子な!後の2頭はしっかり走るけどちょっと乗り手を選り好みするかもな。」
「はーい!おじさんいつもありがとっ。」
「なーに、いつも手伝いしてもらってるからいいってことよ。気ぃつけてな!」
「うんっ!じゃあ行ってきまーす。」
2人組のおじさん達は戻っていった。というかあの馬達立派だなぁ。馬体のハリ艶もよくてトモの踏み込みも深いし、脚も長めで長距離向きか?現役馬と変わらないレベルの馬体な気がするんだが…俺に乗れるんだろうか。
「2人ともおはよっ!」
「おはよ。」
「おはよう。しかし立派な馬が来たな。」
「でしょ?こっちの芦毛がロマックで、こっちの栗毛がマヤっていう子だよ。一応現役は引退してるからそこまで気性は荒くないよ。」
「お、おう。とりあえず筋肉の付き方とかがすごいから普通の馬じゃないことはわかる。」
(というかどこかで聞いたことあるような名前だな。)
「この子たち現役時代は凄いんだよー?乗ってびっくりするかもねっ!」
「というか乗りこなせるのか…?こんな馬。」
「まー、最悪勝手に走ってくれると思うよ。うん。スズカちゃんはどっちに乗りたい?」
「私は芦毛の子が良い。」
「じゃあロマックね。一人で乗れる?補助必要?」
「ううん。大丈夫。」
スズカはサッと鐙に足をかけ、ひらりと跨った。身体が小さいからか余計に馬のデカさが際立つな…。
「おー、乗り方を見た感じですでに問題なさそうだね。お兄さんの方はどうかなー?」
栗毛のマヤにそっと近づく。ちなみに馬の後ろに立つと蹴られることが多いから決して立ってはいけない。馬の視界は350度ほど見えているけど真後ろだけは見えないから怖くて蹴るんだっけか。なんだか少し警戒されているので、とりあえず顔を合わせて撫でてやる。馬はコミュニケーションがとても大事だからな。
「大丈夫…だと思う。何かこいつ警戒してないか?耳もばらばらと動かしてるし。」
「品定めしてるのかな。その子器用で賢いから余計にかも。」
「よしよし、よろしくな。マヤ。」
手綱を絞って馬の左側に立ち、鐙に足をかけて馬の背に上がる。昔の経験や爺さんのところで練習していた成果が出ているようだ。
「お兄さんも問題なさそうだね。まずは準備運動も兼ねて軽くその辺りを速歩で歩いてこよっか。」
「うん。」
「了解。」
「トトッ、トトッ」
イチ、ニーのリズムで腰を浮かせて馬とタイミングを合わせ身体に馴染ませる。これを失敗すると馬の機嫌も悪くなるし何よりもお尻が痛いんだよな。必要以上に疲れるし。馬の走るリズムと一体になってるときは本当に気持ちいい。人馬一体ってやつはバイクとはまた一味違う癖になる感覚だな。
というか引退して乗馬になったとはいえさすが元競走馬、速歩でも力強い動きだ。こんなのを本気で走らせたらまず落馬しそうな気がするが…程々で走らせることにしよう。




