第十六話
西区に入り、ジンの家を探しながらぶらついていると一人の女の子とすれ違った。直感的に惹かれ、思わず立ち止まって振り返ってしまった。その女の子の容姿は、歳はスズカより少し上くらいに見えて、髪がピンク色で長さはセミロングぐらい。背丈も俺と変わらないくらいだった。腰に剣を差していたので剣士だろうか。肩に子猫を乗せていたのが印象的だ。とても凛とした空気を纏っていて、見た瞬間に心を射抜かれたようなそんな衝撃が走った。中身がおっさんなこの俺があんな10代の子に一目惚れか…?いや、今は俺も同年代だからおかしくないっちゃおかしくないんだが。
「お兄、どうしたの?」
スズカに話しかけられてハッと気づいた時には彼女がいなくなっていた。しばらくボーッとしていたらしい。
「いや、何でも無い…。」
何だろうな。またどこかで会うようなそんな気がする。
気を取り直して散策しているとジンの店を見つけた。他の店とは一風変わった、古く趣のある立派な店構えで武器防具や装飾品を販売しているようだ。先祖代々伝わる素材の洞窟があるくらいだから、ジンはああ見えて由緒ある職人なのか…?そんなことを思いつつ店内に入った。
「いらっしゃいませ!」
若い女性の店員だ。ジンの奥さん…にしては若い気がするけど娘にしても大きい気がする。はて。
軽く会釈し、店内を見渡す。品物の種類は武器防具よりも装飾品が多いな。さすが水晶の洞窟を持っているだけあって綺羅びやかな物が多い。華やかに女性が着飾る為の普通の装飾品って感じがする。この前ジンが言ってたように旅人や冒険者向けに、気力がこめられた石をあしらって小さい装飾品が作れたら儲かりそうだな。
陳列されている装飾品を眺めていると、ジンの声がした。
「リズ、そろそろ店じまいをして宴の準備をしよう。あいつらもそろそろ来る頃だからな。」
「でもまだお客様がいらっしゃるの。」
「ん?ああすまない…って彼らが俺の命の恩人だ。」
リズと呼ばれた女性は駆け寄ってきて深々と頭を下げながら言った。
「まあ!この度は主人を助けていただき、ありがとうございます!なんとお礼を言っていいか。」
「いえ、たまたまでしたので。」
「今晩はゆっくりしていってください。腕によりをかけてごちそうを用意しました。お口に合うと良いのですが。」
「ありがとうございます。お世話になります。」
ジンはサッと看板を片付けて店じまいをし、俺たちはリズさんの案内で店の奥へとあがり地元料理をたらふく御馳走になった。
夜も更け、寝室でまったりと酒を飲んでいたところジンが話しかけてきた。
「そういえば明日の街の案内だが、俺の知り合いにさっき頼んどいたから適当な時間に来ると思う。」
「わかった。」
「俺は仕事で店を離れられないからな。あいつはこの街のことなら何でも知ってるし顔も広いから安心しろ。」
「ああ、期待しておく。」
「んじゃ俺はそろそろ寝るとするかな。明日は連れ回されると思うから酒も程々にしといたほうが良いかもよ?」
「そ、そうなのか。」
「じゃあな。おやすみ。」
そういってジンは部屋を出ていった。スズカに目をやるとうつらうつらと船を漕いでいる。かなり眠そうだし、寝るとするか。
「ほらスズカ、ベッドで寝よう。」
「ん…。」
生返事で動こうとしなかったので、お姫様抱っこでベッドへと運び寝かせてやった。さて、俺もベッドに入るか…。
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